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無限書庫司書長の花嫁探し続編です。 ギャグ・ラブラブ・バトルと混ぜすぎて変な感じですけど。長編は初めてなので許してーw (といいつつSSになってるから直さないといけないかな?w それではどうぞ。
……いや、仕事中でも考えているところを見ると大して離れていないのかもしれないが。
実は最初、リアラはユーノとフェイトの状況を彼女の特権で動かせるミッドチルダ地上道路・交通管制センター そこの監視カメラで優々見ようなどと考えていたのだが、地上本部公開意見陳述会に関する対策会議と その後、情報本部が第2級警戒態勢案件のために仕事に張り付くことになったのだ。
なんでも、管理局地上本部管轄下の一個小隊が突然消えた、との報告が来ていたのだから さすがの彼女だって浮かれているような場合ではなかった。
小隊ともなればその数は30人は下らない。通常、それだけの数の部隊が消えるなどということは無い。 しかも、彼らは地上本部管轄下の、つまりは首都防衛隊の一派。 戦闘に出るようなことは訓練以外ない部隊なのだ。 話によると、レジアス中将よりもさらに過激派の軍備拡張を叫ぶ派閥の部隊で、中将も手を拱いているらしい。
「30人も人数が消えれば何かあるはずね……動かせる部隊はどれくらいある?」
「地上の情報部そのものとしては、三個分隊ほど。後は中央即応集団から動かすことになりますが あれは、ミッドチルダ政府の許可が必要なのと、第二級の危険度から察するに申請しても却下されると思われます」
30代半ばの副官が書類に顔を隠しながらそう述べつつ、リアラもまあそうよね…と思っていた。 そーゆーところが、お役所ってもんよ。うん。そうでないとねぇ…… と思うあたりは、お役所仕事があまり嫌いというわけではないようだ。単に仕事がサボれる特権にあこがれているだけかもしれないが。
「まあ、お役所っていうのはそんな感じね。ユーノとかは異常なのよ。資料要請すればすぐ出すとか。 資料の要請理由やら、許可申請やら、そういうことをしてもおかしく無いのにユーノはすぐがんばるから。 まあ、だから管理局で最も忙しい事務仕事などと比喩らえるのでしょうけど。」
「あそこは事務仕事をしてる現場部隊みたいなものですよ。現場の痛みと事務の痛みの両方を理解してしまって板ばさみみたいな…自分ですら司書長と比べたらある意味幸福に見えてしまうぐらいに」
静かだった。ただ、静かだった。 副官にリアラの性格上細かい事務はすべて向かうので、リアラもそこそこ気にしているのだが…… 今の言葉は、正直痛い。なにより、ここの仕事はそれなりにハードなのだから。
「でも「消えた」っていうのは気にかかるわね。やられたか、故意に居場所を隠しているか」
「それは不明です。中央即応集団司令のカナリス中将も色々と探りを入れているようですが詳細は不明のままで。 ただ……彼らの部隊はお世辞にも「管理局の手本」とはいえない部隊だったようで…… 管理局最高評議会の懲罰部隊に「消された」可能性があるのではないか、と中将に問い詰められましたよ?」
「ああ、それはないわ。私の直轄部隊のほうは。そして、あの最高評議会直属の部隊がそんな末端を消すようなことはないし。 というか、最高評議会直属の奴らは私とかレジアスとか三提督の監視を主な仕事にしてる節あるし」
リアラが管理局裏の権力者と比喩されるのは、情報本部の本部長であり、懲罰部隊と言われる特殊部隊の一部をその指揮権に収めているためだ。まあ、実際に彼女を恐れるのはそれなりに裏で違法行為をしてる人たちということになり一般部隊からすれば、懲罰部隊よりも特殊エリート部隊と見られている。
「ほ、本部長……少し問題ある発言では……」
「まあそうかもね。でも、どっちにしてもレジアスにも応援要請して、その部隊がやられたにせよ何にせよ 情報を集めることが先決だわ」
「はい。既に情報本部の情報管理部には情報をネットワークから拾うように通達を出してあります」
副官は、もう分かっていたかのような顔だった。 何年、といってもまだ3年程度だが…それだけ彼女の副官してない、という顔だった。 それは十分にリアラの副官として勤まるほどの、彼だって有能な人間というわけだ。
「そう、なら…三個分隊でどうにか……なるわけないか。 情報本部から第一諜報中隊のカタギリ三等空佐に要請して。 それと、ミッドチルダ地上道路・通行管制センターに情報管理部のエリア二等陸佐を送って ああ事前にセンターへの協力要請は忘れずに」
「エリア・クリムフィールド二等陸佐ですか? そ、その……彼女一人で地上道路・通行管制センターに向かわせるのは…その……」
言いづらそうな顔をして向こうの方を向く副官に、?と思ったリアラはそっちの方を向いて……納得した。 なぜか、一瞬で彼女は彼が言いたいことがわかった。というか、エリア本人を見ればすぐにわかった。
「ああ、なるほど……レイカ・クリムフィールド一等陸尉を補佐官としてつけて… というか、妹をつけてやりなさい…」
「あ、はい。そうします。本部長」
エリア・クリムフィールド二等陸佐。情報のエキスパートにして……稀に見るロリコン体系だった。 20歳というが、その姿は12歳といっても納得するほどである彼女。 更に言えば妹で18歳のレイカ・クリムフィールド一等陸尉の方が姉に見えるほどなのは、もう言うまでもないほど。 ……まあ、優秀な人材ということだけは間違いないのだが。何とも、優秀ならそのほかの部分にはこだわってない情報本部だった。 どこまでも、そうどこまでも。
「後、非常時のため、適当に特殊作戦群から一部隊分を準待機状態にさせておいて…… まあ、これぐらいでいいでしょう。何するか分からないけど、分からないからこそ部隊をこれ以上割くのは大変。 公開意見陳述会で部隊を色々と動かしてる以上、これ以上の部隊移動はね」
地上本部の公開意見陳述会もそこそこ近づいている関係で、彼女だって忙しい。 そんななかでも、ユーノの花嫁候補を探す信念は賞賛に値するのかもしれない。あまり、良い賞賛とはいえないが。
――――――――
――それはある意味で自分の思いそのものだったのかもしれない
自分で選んだ私服は自分らしいかはともかく、それなりにあっているとユーノは思っている。 長距離用高速リニアレールで並ぶ人たちを見て、自分が惨めに見えるから不思議だ。 毎日毎日無限書庫に入り浸り。流行どころか、そもそもミッドチルダ地上で何が起きてるかすら実はあまりよくわかってない。 無限書庫は時空管理局でも本局(時空世界)にあるからこそ、地上本部と違い外に出ることすらない。
そんななか、横に立っている端麗した容姿とそれに相反する服装をしているのにもかかわらず、そこにまた別に美しさを持つ彼女…… フェイト・T・ハラオウンの横に立つのは良いのだろうかと思ってしまう。
人の思いに方向性があるなら、それは愛しさよりも恥ずかしさなものだったけど、それでも目の前の彼女は綺麗だった。
「……どうかした、ユーノ?」
ずっと彼女を見ていたからか、こっちの目線に気づいたのか、フェイトも不思議そうにユーノの方を見つめる。
ユーノに個人として「理想の女性像」なんていうものはない。 それがそもそも、母親、という存在がいなかったユーノの生い立ちからあるし、育ててくれたのはスクライアの一族全体であって個人という存在の女性なんてなのはと会うまでは、まともに話したのは姉と言い張るリアラ・スクライアぐらいだったから。
そのリアラ、女性としては確かに魅力のある女性だった。 ある種、人をひきつける何かを持っているからこそ 彼女は今、管理局情報本部長なんていう役職についているのだ。 でも、それは女性というよりも人としてのそれで、女性という意味を明確にしたとき リアラはユーノに響く存在ではなかった。
なら、フェイトは? そう考えて見ても、その考えはまとまらず、むしろ螺旋状に曲がりくねって結論を出せなかった。
ただ、いえるのは。 フェイトといることは嫌いではない、ということだけだった。
それだけは確かだから。 横では高速リニアレールの車両が線路に入ってきて人々が入り始めていて。
「ううん。なんでもないよ。入ろうか?フェイト」
フェイトの前に自分の手を出して、フェイトも意味を悟って手を出して…取り合って入った。 きっと、リアラが見ていれば雰囲気は最高! というぐらいに。
リニアレールの車内はゆったり感を持たせた雰囲気と誰でもそれとなく入れる気軽さを兼ね備えた座席の空間が広がっていた。
「えっと……8号車のB-21と22かぁ……フェイト、ちょっと間違えた」
「ううん。私も悪かったからいいよ」
全8両の車両だったから最後尾車両だよね……こんなだったら、雰囲気に任せて中ほどの車両から入るのではなかった…… 最初からなんだか失敗してるなぁ、とつくづく思うフェイトだった。 ただ、そのフェイトの前を手を繋いだまま歩いていくユーノもきっと思っていそう、と思えるぐらいには思えた。 目の前の彼は、彼の性格に似合わず急ぎ足で移動していたから、きっと。
6,7,8……とやっと八両目について、席を私たちは探して……
「こんにちわ。えっと……」
私とユーノの席には男の子がごろんとして寝ていた。 気持ちよさそうにごろごろしてるそれは、まだ小さい頃のエリオやキャロを思い出させてくれるけど。 一応、指定席だったよね?と思ってしまう。
「あら、ごめんなさい! 相席がいるとは思わなかったので…… フェル、起きて、そこはお姉さんの席だって! 本当にごめんなさいね」
「あ、あの、そんな謝られても困りますというか……」
相席、といえばこの車両は先ほど通ってきた車両と違って席が全部一方方向に向いてなく、前後で顔を互いに向き合うようになっていたっけ、と思い出す。 実はこの車両は、旅行用と呼ばれる車両で、家族を想定して4~6人で顔を合わせられるように設計されているのだが仕事ばかりで普通の車両にも乗らない、というか制限で乗れないフェイトはまったく知らないことだった。
とにかく、そうしているうちに席から男の子は退いて自分の席なんだろう、対面する方の席に座っていて。
「フェイト?早く座らないとこの列車も発車しちゃうよ?というか、なんで僕が前にいたはずなのにいつの間にフェイトが先に席を……」
「あ、そうだね。ごめんなさい。私が前で止まっていたらユーノ座れないんだった、本当にご…」
ごめんなさい、と言葉と紡ごうとしたが、それはユーノの手の人差し指に止められた。
「別にごめんなさいなんて言わなくてもいいよ。謝りあう仲でもないでしょう?」
「そ、そうだねご……」
なんだか、ユーノの前ではデフォルトがごめんなさいに設定されているような気がすらした。 ただ、恥ずかしいよりも先にユーノが耐え切らなくなったのかちょっとだけ口から苦笑は漏らしていたけど。
「フェイトって本当に……だね?」
「だ、だって……」
天性の性格がそれなんだから仕方ない。 自分の記憶とはいわないが、自分の一部でもある、そんなアリシアも……
――あっちはもっと危なかしい性格だったかも……
自分のルーツである母親と年下の姉を何というか……ある意味冷静に見ている彼女だった。 そんなことしてるうちに列車は発進の最終案内メッセージを流していた。
《本日はミッドチルダ首都長距離高速リニアレールをご利用いただきありがとうございます。 この列車は高速長距離移動用『リリア215号』 10:20クラナガン発 ファナウンテラス行きです 途中、フレキシブル、クリア、リナ・テラウスに停車いたします》
『『(あれ? なんだか、レイジングハートの声みたいな…?)』』
ほぼ同時刻 機動六課 ホログラム訓練室
「あれ?どうしたの、レイジングハート? いきなりモードリリースして?」
《いえ……誰かが私の内職に気づいたようで…》
「ほへ???」
首都長距離リニアレール《リリア》内
「本当にごめんなさいね。この子はどうもすぐ寝ちゃって…えっと……?」
「お兄ちゃんとお姉ちゃん!名前はなんていうの!? 僕、フェルっていうんだ!こっちのお母さんはリエっていうの!」
とりあえずちょっとだけ二人に案内アナウンスに疑問を持ちながらも出発した列車内。 相席となった家族の子が楽しそうにユーノとフェイトに話しかけていた。勿論、さっきの声の疑問はあるものの二人ともそこら辺の切り替えは早い。 すぐに切り替えると、もともと優しすぎる、の代名詞と呼ばれるぐらいに 自分を低く見る二人は…ユーノはわからないけどフェイトは小さい頃のエリオやキャロと重ねて見ていたから 余計に優しい笑顔を見せていた。確かに可愛かったから。
「こら! すみません……」
「いやいいですよ。それはそうと一人で子供さん二人は大変ですね」
自分にはあまり子供を見た経験の無いユーノだったが、目の前の子供二人…眠そうな男の子に活発な女の子を見ると 母親であろう目の前の女性の苦労が普通に想像できた。 更に今、母親は小さな赤ちゃん…3人目までいるのだから。
「あ、はい。ここで言うのもなんですけど……夫が忙しくて どうしても私が3人の面倒を見ないといけないんです。 夫は仕事も毎日朝早くから夜遅くまで。 今日も今、夫のいる地方の都市に行って元気つけようと思ったんです」
そういうと、フェイトの方を向いて母親は「抱いてみる?」と誘った。 母性本能が元々強いほうなのか嬉しそうな顔をして「いいんですか?」とフェイトが聞くと 母親も「あなたなら大丈夫よ。良い笑顔していたもの」と母親の偉大さを感じる大胆なことを言ってのける。 母親というのは時として根拠も無いのにすごい説得力を持つ、というがちゃんとフェイトの手で抱かれた赤ちゃんは自分の母親から離れたというのに笑顔のままだった。
ただ、そんな和やかな光景を見ていつつもユーノは、彼の本分……考古学者であり「歴史家」でもある彼は その女性が行っていた言葉を深く考えてしまう。 なんというかな職業病。問題が出るとつい考えてしまうのが彼の困ったところだろう。
―――
ミッドチルダ自身、ベルカとの戦争の復興、王政から民主連邦制への以降、そして管理局設立という歴史を歩んだ近代国家だ。しかし、司書長でありあらゆる世界の歴史を知っているユーノは今のミッドチルダが向かっている道を理解している。
一見関係ないことに見えるが、現代のミッドチルダでは仕事の格差が広がっている。 というか、仕事を全般的に誰でもやらないといけない事態になっている。 管理局に人材を奪われがちな社会システムとなっているミッドチルダでは、他の方面への人材が慢性的な不足を起こしているのだ。多くの管理世界があるというのに、管理局はなのはやはやてのような事例もあるものの基本的にミッド出身が大半。 結果としてミッドチルダはその国力に合わない大きな負担を余儀なくされている。
つまりは、ここにいる母親さんの夫さんが忙しいのは、管理局優先による人材不足が結果として個人への負担を大にしてしまっているのだ。
すぐに職業のせいか考えてしまうユーノだったが、それもすぐに頭から掃った。 今、横にいて赤ちゃんを見て嬉しそうな彼女にそんなこと考えていたなどと知られたらすごく叱られそうだ。
「ユーノ、ユーノ! ほら、ほっぺた柔らかくて温かい……」
「うん?あ、本当だ……」
フェイトと赤ちゃんに近づいてみると赤ちゃんがユーノの手をつかんできて、そこから体温が感じられた。 近くにあるものは何でも掴みたい年頃(?)らしく、もう片方はフェイトの顔の方を掴もうと必死で 嬉しいのだろうけど困っているようだった。
そんなフェイトがなぜかいつも、9歳の頃からずっと見た目より年上に見えた彼女が、歳相応に感じたのはきっと勘違いではない。 不思議な感じではあったけど、こういう一面もあるんだなぁ……となぜか納得してしまう。
そうしてるうちに赤ちゃんをフェイトは母親に戻して。 今度は彼女らしからぬ風に自分の手元にまで近寄ってきて、ええ!? といきなり過ぎる行動にちょっとユーノは熱暴走気味に。 ど、どういうこと!?と気持ちはもう突然すぎて、レイジングハートもディバインバスター・フルパワーだ。
「さあ!ティアナ、射撃っていうのは、その一発にすべてを……」
《Divine Buster Full Power》
「って、レイジングハート!?!?横にいたスバルが吹っ飛んだよ!?!?」
「こ、怖い……なのはさんだけじゃなくて、デバイスまで普通じゃないわよ!?この部隊!?!?」
《すみません、マスター誤認しました》
「ご、誤認って……」
ユーノがそんなことを思っていたそのころ、訓練室ではレイジングハートのマスター誤認による誤射があり これでスバルが軽くディバインバスター恐怖症になったり、ティアナがデバイス恐怖症になったというが定かではない。
再び首都長距離リニアレール《リリア》内
……積極的なフェイトの目はこう言っていた。
……「さっき改札口でやってくれたお返しだよ」
と。
ああ、彼女はずいぶん成長したよ、良い意味でも悪い意味でも今のフェイトには人間らしさがあるからね! と叫びたい一身を抑えてまずは落ち着くユーノ。落ち着け落ち着け……
さっきだって手は繋い……
そこまで考えてユーノは思い出した。今、自分の手はどうなっているか? えっと、僕の手は……と、横を見るとそこにはフェイトの腕が密着していて、手もちゃんと握られていた。
うんうん、腕ご…腕ごと!?!?
「そういえばお二人は旅行ですか? 仲の良い夫婦でいて羨ましいですわ」
ああ、これだよ。これ。 そういえば、さっきの改札口といい、なんでそう勘違いするのかなとユーノは思いたくなくてもそう考えざるえなかった。 一応カップルに見えるのは納得できる。そういう風にしろと姉にも言われていたし、一応そうしてるつもりだった。 でも、夫婦といわれると話は別だった。正直、困る。 「自分たちはそれぐらいには見えるのかな?」とすら考えているユーノだったが、実際のところは 「どうみてもアツアツです、本当にありがとうございます」という空間なのに気づいていないユーノもユーノか。
「えっと……」
「そ、そ……そうだよね?ユーノ?」
――いや、そうだよね? は無しじゃないかな?
ユーノが横目で見たフェイトは、いつもの執務官としての冷静沈着な雰囲気をこれでもか! といわんほどに崩れていた。 ポーカーフェイス、なんていうフェイスが出来る人がいるなら一度指南してほしいものだよ などと心内で思いつつ
「まあ……そ、そうですね」
と答えるので精一杯だったのは、ユーノも精神的に追い詰められていたというべきか。 ただ、答えてもらったその母親は半分驚きといったところで、ゆっくりと何かを思い出して。
「そうなんですか。お二人を見てると私も夫と二人で出かけたころを思い出しますよ。 あの頃は子供もいなくて二人で気ままだったわ……ああ!子供が嫌いってわけじゃないんですけどね。 でも、子供がいると夫婦二人って言うのも本当に……」
子供がいないうちにできることはしないと子供が出来ると大変よ、など次々と彼女は語りだした。 それこそ、主婦らしく次々と。しかもそれにフェイトがついていっていた。女性は会話が弾むというが、こういうことらしい。
――まさか、フェイトが保護責任者として子供二人持ってる、なんていったらこの人びっくりするだろうなぁ…
それだけはユーノは確信を持っていえる。 実際に彼女が保護責任者としてエリオとキャロの面倒を見る、といったときから驚きの連続だったわけでそれは経験談にほぼ近いものだったが。
「それでも、やっぱり夫や子供というのは嬉しいものですよ? 家族っていうのは…… それを守りたいって思えるから、私や夫もがんばれるというものですよ」
そういって嬉しそうに子供を抱く母親を見て、家族かぁ……と思わずにはいられない二人。 ユーノにとっての家族はスクライア一族であるし、フェイトにとってもハラオウン家の人たちはもう家族だ。もちろんエリオとキャロも。
「エリオとキャロに悪いことしちゃったかな…?」
「ふふっ。そうやって思えるフェイトってやっぱり…親バカなんだね?」
「うっ……」
頬を赤く染めてうなずくフェイト。
やっぱり、まだまだ子供で大人な、そんな微妙な二人だった。
――――
ミッドチルダ交通局 地上道路・交通管制センター 中央管轄部
一方、ユーノの姉、リアラ・スクライアの命令は各所に回されていた。 情報部指揮下の部隊で命令を受けた部隊が直ちに事態の操作を開始し、ここミッドチルダ交通局の管制センターでも…
ああ、管制センターでも!……
「ねえねえ、レイカちゃんレイカちゃん♪」
「あのね、お仕事なんだからあまり話しかけないでよ、エリアちゃん」
混沌、ただそれ以外にあらわし方の無い空気が漂っている。 30代を中核とした中堅メンバーが主流なこの地上道路・交通管制センターに子供と保護者のような姉妹が現れたのが30分ほど前。 所長は最初、事前にリアラから説明されていた二人だとはまさか思わず、結局言い争いの後に階級章を出して本人確認と謝罪が14分間ほど。
所長曰く「まるで中学生か小学生高学年を二等陸佐と見れといわれてできるか!」とのこと。
二等陸佐といえば、八神はやて二等陸佐もそうだが、エリート組の範疇だから余計に勘違いするしかない。 誰がどう見ても子供にしか見えない銀髪ポニーテールの少女を二等陸佐に見ろと言われれば、まあ同情するしかないセンター局員だった。
「いやいや、リアラちゃんに繋いでー」
「一応少将で情報本部長なのにちゃん付けっていうのはどうかと思うわよ、エリアちゃん」
これでも姉と妹の関係のエリア・クリムフィールド二等陸佐とレイカ・クリムフィールド一等陸尉だが、姉妹の割には両方とも名前にちゃん付けで呼んでいる。 ただ、仕事なのに姉妹でちゃんづけしてることを考えれば、公私の区別も全然できてない、というしかない。
だとしても、ただ呆然と二人を見つめているしかない所長だったが。
「うん、ボクからちょっと話したいことあるんだー」
「分かったわよ。はい、これでいい?」
ウインドウを開いて秘匿回線で通話、多重プロテクトで暗号化…… と細かいプロセスをほぼ1秒で終わらせるレイカ。 プロなのは言うまでも無かった。 実際にここの職員でもそれに相応することをするとなると どれだけ急いでも1分から3分はかかる作業をほぼ一瞬なのだから、プロだ。
「リアラちゃーん、見つけたよーリアラちゃんが言ってた部隊~」
『早いわね。で、縛られてつかまってるの?』
普通、行動中の部隊が消えたら敵にやられたというのが基本だ。 ただ、何か心当たりのあるリアラはあえて聞いていた。 そう、あの部隊が過激派と聞いていたからこそ。
「うんとねーどうカナ、どうカナ?」
『……97管理外世界の資料をあさるなっていってたのにまったく……』
エリア・クリムフィールド二等陸佐。 生粋の97管理外世界のマニアであり、その中でも日本の…いわゆるその手のゲームの愛好者だった。 なんとも確かに『ユカイな人材』が集まっているだけはある情報本部。 どこまでも個性的な人材なのは確かだろう。
「ひどいなーボクは『秋桜の空に』のキャラの口癖いっただけなのにー」
「そっちかい!っていうか、仕事中にゲームの話しない!エリアちゃん!」
『まあ、いいんだけどさぁ…… とりあえず、叱るのは後にしてその部隊が今どうなってるかだけは言ってくれない?』
わかったカナ?わかったカナ? とまだ続けるエリアに「姉さんは……」と心から大きなため息をついておくレイカ。 姉の子守役ばっかりの人生でも思い返してるのかもしれない。 ただ、そのゲームやそのネタを使っているゲームも知っているだけレイカも同類なのかもしれないが。
「リアラ本部長に言われた部隊は、つかまってないよ、というか全員フル武装なのですよーー 現在、首都高速リニアレール高速長距離移動用『リリア215号』に乗ってるみたいなのですよー」
『……は?』
この際、エリアの『なのですよー』という口癖を無視しているリアラだったが そんなことは本当にどうでもよかった。 フル武装やら列車に乗ってるやらだけでも呆然とする内容ですら忘却のかなたにあったぐらいに。 『リリア215号』……えっと、なんだったかな? と記憶に引っかかるその車名を思い出そうと頭の中を開きなおす。
――えっと、この頃列車の方に行ったことなんて、ユーノの乗る列車の予約を……ユーノの乗ってる?
『ああああああああ!?!?!?!? 乗客にユーノ・スクライアっていない!?!?』
「お姉様ちょっと待っててくださいなのですよー……えっと、いるのですよー」
「このどう見ても局員の違法行動にしか見えない非常事態にまだモノマネやりますか、エリアちゃんは……」
一般人ゆえにエリアの補佐やら、この阿鼻叫喚に近い混沌を沈めないといけないという貧乏くじを引いてる彼女としては、本当に悲しくなっていた。まともな人はいないの、と。 ただ、エリアの話は確かにふざけたような言い様ではあるものの事実であるのも確か。 彼女はふざけていても嘘だけは言わないのだ。 まったくそういうところだけは一流なのは…と思ってしまうぐらいに。
「フル武装なのですけど、ランク制限して全員Cランクなのですよぉ……フル装備の携帯保持は 管理局中央の許可が必要なのですが、今調べましたが全員とってないのですよ。 どういうことでしょう?」
『確かに変ね。ユーノとフェイトちゃんのいる車両にその連中は何人いる?』
「あ、はい。第八車両はリアラちゃんが予約したために増設した場所なので予約者も少なくて……いませんね」
エリアは手元のパネルをちょちょいと調べると結果を端的に出し説明する。 確かに不自然だ。消えた部隊の人間が列車に集中してるのは。リアラの脳内ではあらゆるパターンを想定して高スピードで回った。 『分かったわ。ユーノとフェイトちゃんにちょっとメールを送るわ。用意して。 同時に特殊作戦群からブルー・アリス隊に出動要請。どうみても怪しいし。それらすべての命令伝達をエリアできる?』
「はいなのですーって、うにゃにゃ? 口癖になったかも~ とりあえず、メールの内容は今の状態情報を入れて送信し、ブルー・アリス隊に出動命令ですね。了解ですー今命令だしますー」
さて、とリアラは一つの書類を手に取る。
――まったく、自分がせっかくお膳立てをしたのにそれでこんな事件合うとは…
ユーノっていうのはある意味、だれよりも貧乏くじを引かされてるのかもしれない。 などと感じるほど、きっとユーノは不幸な子だった。幸福であり不幸な子。そんなフレーズがあうような、そんな。
そしてそれは、ユーノとフェイトの初々しい旅の終わり。 同時にデートにはちょっとばかり合わない戦いの始まりも……意味していた。