2025 02,02 13:58 |
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2008 09,21 00:00 |
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ユーなの同盟一周年です、タイトルは途中に書いてあるいやらしいつくりとなってますw サブタイトルは「Life Without Walls(壁のない世界へ)」 どっかの超巨大会社の有名ブランド再構築のときに掲げた言葉です。 ユーなのサイコー! 突然だが、朝の光の重要性を、いや太陽光の重要性をご存知だろうか? 人間の概日リズムことサーカディアン・リズムは約25時間。地球やミッドチルダの標準時間は24時間だが、地球の恒星時は約23時間56分4秒であり、ミッドチルダでは23時間54分47秒である。まあ、人間の体内時計と現実にはずれがあり、体内で微調整をしないといけないのだが、限界がある。 その体内時計、サーカディアン・リズムと現実の時間を調整する役割の一つとして、太陽光などの刺激がある。約25時間のサーカディアン・リズムをもつ人間が、もし修正をしないのならば毎日毎日同じ時刻に仕事をすることは無理といえる。ずれてしまうからだ。しかし、実際に人々が毎日同じ時間に動くことができるのは、このサーカディアン・リズムを調整しているからなのだ。 実はミッドチルダでは、魔法科学の発達の阻害としてその手の研究は遅れていて、地球のほうがその手では上を行っている。本局を次元空間に作るあたりがその最もなところだろう。あんなところに過ごしていては、サーカディアン・リズムは狂わざるえない。 地球では光療法と呼ばれる、サーカディアン・リズム修正などのための医療法まで確立しているぐらいだ。 まあ、つまるところ何が言いたいのか、といえば。 「ううぅ……日差しか。まぶしすぎる」 自分の布団の中で日差しとの攻防戦を展開する一人の青年。もう21歳だというのにいまだに朝には弱い彼ことユーノ・スクライア。 無限書庫の暮らしは彼のサーカディアン・リズムをずたずたにしていた。 つまるところ、睡眠障害といった類のものだ。それが作業中に倒れて、それが寝ていたという現実問題になったのが約1年前。ちょうど、機動六課の解散云々を言っていた時期である。ユーノ自身、これは仕事しすぎたなぁ、と後悔していたが、あまりにも後悔しているように見えずまた仕事を結局続けている彼に、ユーノ疑惑「悪友」の「あの」クロノ・ハラオウン提督……こっちも、次元潜行艦隊所属でどっちかというと、サーカディアン・リズムは崩れがちではあるが……でさえあきれたというほどだ。 事実、そんな状態で仕事を続けていたらまたいつ倒れるかわからない、というのが実情。 最高評議会無い今、時空管理局を管理している中央理事会……カリムが理事として参加しているそれと三提督から見ても、情報管理組織としての無限書庫の能力の劇的低下は避けたかった。 何より、無限書庫勤務をしているメンバーの1割が何かしらの睡眠障害などを慢性的に抱えていた事実が、管理局のお役所らしい重い腰を珍しくあげさせる要因となった。労働組合に訴えられたら100%敗訴ものである。 結果的に三交代で無限書庫を運用することに中央理事会が決定し、同時に大幅な増員に踏み切ったのが半年前。もっとも、それより前にユーノ司書長には休暇『命令』が下っていたりと、実のところ無限書庫は無茶苦茶だったのが本当のところだ。 今では、週一の休日と、平日も朝9時から夕方5時という、8時間労働が基本に、まあ長くなっても9時には家に変えられる、という今までの無限書庫から比べれば夢のような快適な環境になっていた。稼働率はある程度落ちたのだが、中央理事会が無限書庫と並列してデジタルデータベースを設計し、無限書庫で管理している書物のデジタル化を推進したこともあり、ある資料はデジタルデータベースを参照すればよい環境が整いつつあるのも事実。 いちいち無限書庫に資料請求する必要が今までより減ったこともあり、クロノはユーノにちょっかいかけることが少なくなったと嫌味なのか、それとも本音なのか良くわからない言葉を残している。 とりあえず、あらゆる場所からデジタルデータベースを呼び出せるようになった無限書庫は、ユビキタス(いつでも・どこでも)を実現できるようになったため、ユーノの負担もだいぶ減ったのだ。 布団の中で攻防戦をできるのもそのおかげ。ああ、眠い眠い……とぬくぬくと布団の中でごろごろしていた。フェレットならともかく、大の大人なので、何か間違っている気がしないでもない。 ミッドチルダ地上のユーノの私邸。太陽に当たれるようなところで寝ろ、というクロノの無理やりな意見で、そのまま押されるままに買った家は、それなりに広い。一応、無限書庫司書長という権限に合うような家、とクロノとエイミィがごり押しした物件だったりする。 まったく、あいつはいつも強引だよなぁ、と布団の中でそれを思い出して悪友の顔を浮かべてああ、考えるんじゃなかったと記憶からとりあえず抹消。考えるだけでイライラするっていうパターンだ。 まあ、事実この家に住むようにしてから、睡眠障害も治ったけど……と、何かだまされたような気がしてならないユーノだった。事実、管理局で一人身なら、地上で管理局が持っている賃貸物件とかいくらでもある。 にも、関わらず、しかもこの家はユーノの実費だ。貯金の一部で買えてしまったのは、この家が安いのか、それとも単にユーノの給料が大きいのか、まあ9割ぐらい後者なのは否定しようがないが……とにかく、お勧めされた時点で気づくべきだったと思う、とユーノは布団で朝の日差しとの攻防戦を繰り広げた後にふと感じた。 このユーノの書斎の近くにあるキッチンの方では、誰かが朝ごはんの支度をしているのか、なにやら鼻歌が聞こえてきた。一応、今日はユーノも休日の日だ。だが、別にユーノが誰かを家に招いたわけでもなければ、それはハウスキーパーを雇ったわけでは……もとい、雇ってはいるが、その人ではない。 もともと、サーカディアン・リズムの崩れはさっきも言ったとおりに地球ではそれなりに医療体系として確立されている光治療をすれば直るケースが多い。なのに、わざわざ地上で住めと勧めたり、家を買えと勧めたり、怪しい悪友の行動の裏がこれ、というわけである。 「ユーノ君!朝ごはんできたよー!」 ユーノの親友の高町なのはの声が、そのキッチンから響いてくる。その声の後に彼女が娘にしたヴィヴィオの声も混ざり始める。つまり、起きろってことらしい。 あれだけ用意周到に準備された先に待っていたのは ……いわゆる、同居って言うやつである。 ユーなの同盟一周年記念 ――ユーなので同居1周年! ヴィヴィオを娘にして、六課を離れるときになのはにとって一番の問題が家だった。 管理局支給の公共住宅は、色々と不便な面も多い。将官クラスならともかく、なのはは三佐の昇進を拒否したこともあって、佐官ですらないのでほかに家を借りる、という手も使えない。 なら、たまっている貯金で家を買おうかな、というちょっぴり無茶苦茶なことも考えたのだが、保険会社・銀行が黙ってなかった。管理局職員は、事故でなくなる確率が高い。特に空の部隊で事故で仕事ができなくなったなどは多く、それだけに審査がだいぶ厳しい。 たとえ、JS事件で有名になったからといって、なのはも管理局職員。しかも、女性。男女平等に見えて信頼性というのはある。あいにく、なのはでは信用度においてはあまり高くない。もともと、言ってしまえば地球から「移民」である。結果として家を買うというのも無理があった。 そんなとき、ユーノが病気で倒れたという話を聞いて、かつて自分が仕事中に落ちてしまったことを思い出して病院に駆けだして聞いたのが「睡眠障害」。無茶な仕事ばかりしている意味では、ユーノ君も同じだよ、と実感したのがそのときで。 悪友でも、友人には変わらない、と言い訳をして病院に来ていたクロノが「あいつが一人で過ごしてなければ、誰か監視しておけるんだがなぁ……」といった言葉に私が、と考えるよりも先に声が出ていた。 結果的に、家の問題含めて一緒に解決してしまったのだから、ベストな判断ではあったのかもしれない。 事実、その話をユーノ君にしたときは、色々慌てていたけど、承諾してくれたから、と。 朝御飯の準備も万全。ヴィヴィオも目をこすりながら起きてきて、ユーノもまだ眠たい、と表情は訴えていたものの自室から出てきていた。 こういうユーノ君って、あの時以来ほとんど見て無かったかな、と思うのは一緒に過ごしていたごく少しの時間の思い出してみて感じる。 「おはよう、ユーノ君!」 「うん、おはよう、なのは……やっぱり、お休みの日はいつもより余計に眠いよ」 「よかったじゃない、なんだったっけ、サーカディアン・リズムだったっけ?それが直ってきてる証拠だよ」 「あはは、その節は色々となのはにご迷惑をかけまして」 倒れたときに、まるで死に掛けた人を見るかのように心配してきてくれたなのはにユーノも最初は驚くほか無かった。まあ、それも今となってはさらりといえるほど直っているのだが。 さて、とユーノはダイニングテーブルに座る。ヴィヴィオがユーノの対面に座って、ユーノとヴィヴィオの中になのはが座るのもいつものことだったりする。 「そういえば、今日で一年だね」 「うん、何が?なのは」 屈託どころかゆがみ一つすらない笑みでそう言うなのはにユーノは何かあったっけ、と記憶を掘り返してみる。今日は休日だけど、何かあったかなぁ、と考えてみるものの、それと言って思い浮かぶものはなかった。 「ごめん、よくわからないや」 「もうぅ。ヴィヴィオはわかるよねー?」 「えっとね、今日はね……ユーノパパの家に来た日ィ!」 ヴィヴィオがなのはの用意した朝ご飯を食べながら元気に一言。 それにああっ、と相槌を打つユーノ。 そういえば、この家なのはとヴィヴィオと一緒に住み始めたって、一年前の今日だったっけ、とこの頃忘れがちだなぁ、と自分の記憶能力をちょっぴり心配する。 ちなみに、なぜかヴィヴィオがユーノのことをユーノパパと呼ぶようになったのかは定かではない。 お前となのはが一緒に住んでいるからだろ、とあっけなく悪友のクロノは切り捨てるのだが、ユーノとしてはパパと呼ばれることを拒否しないもの、恥ずかしい感じだ。 「もう、ユーノ君って忘れんぼうだね?」 「いや、色々と忙しかったりすると、月日がたつのを忘れちゃって」 「そんなだから、時間感覚なくなるんだよ?ちゃんとしてね」 「……はい」 さすがに倒れたときに、なのはに泣かれてしまう、なんてことがあったためか、ユーノも何も言わずにうなずく。 泣くのはちょっと大げさだよ、とユーノは言ったのだが、私が空から落ちたときは思いっきり心配していたじゃない、といわれると反論できないわけである。 まあ、どっちも互いに心配性なのは否定しようが無いが。 「それで、今日はお出かけしよって、ヴィヴィオと三人でお買い物を。 ユーノ君は、今日は大丈夫?」 「うん、別に仕事は特に……中央理事会に提出する中央即応集団設立に関する書類は昨日のうちに送っておいたから。色々と個人的な感想つきでね」 「そうなんだ。じゃあ、今日は一緒だねっ♪」 さらっと微笑を向けられてユーノがドキっとする。 一年一緒に過ごして時々思うことがあるとすれば、なのはは無防備さか。ユーノ君だから大丈夫、といつも素のままでユーノの前でもいるのだ、今だって…… 「でもなのは、ちゃんとパジャマから着替えてね?」 「!?あ、当たり前だよ!」 「あははー、なのはママ照れてるー!」 「ううぅ、ヴィヴィオまで……ユ、ユーノ君とヴィヴィオも着替えてよ!」 普通、友人だからといって起きたままのパジャマで顔を合わせるものだろうか、というかそもそも一緒に過ごすことがあるんだろうか、とユーノは思案の海に浸るが毎回毎回考えても、なのはだから、という結論しかでない。 ユーノのことを心配したこととヴィヴィオと一緒に過ごせる家、というわけで三人で過ごし始めて1年とはいえ、なのはのその行動だけにはいまだにユーノも慣れないのだ。もっとも、三人でいることには慣れてしまっているが。 ――理想の家族なんていうものは、幻にしか過ぎず、現実を意識したときにだけ生まれるものだ、と言えば実際家族とか、そういうことを気にしなくても彼らは十分に家族としてやっているのかもしれない。 ――――――――――――――― 朝食は非常に美味しかったし楽しかった。一人で食べることの数倍は軽く上だろう。 実際になのはの朝食は美味しいよねぇ、となのはの料理の上手さをヴィヴィオに力説してしまったユーノ。きっと、そのときのヴィヴィオの思いはかつて、こんな良いお母さんを持って幸せなんだぞ、と力説した高町士郎さんの言葉に少しばかり呆れていた幼き頃の高町なのはさんに近いものがあっただろう。 ちなみに、そんなこと言われて照れていたなのはが、誰に近いのかは言うまでも無い。 三人でお出かけ、ということは別に珍しくは無い。ユーノとなのはが管理局に入って別々に仕事をしていたときはともかく、今はユーノも毎週日曜は休日だし、教導隊というのも事務と新しい戦術研究が基本で、捜査やら調査やら、任務が急に出ることは逆に珍しい安定している仕事だ。そう言う意味で、特別捜査官として仕事をしているはやてや、海の執務官として平日や休日問わず犯罪撲滅に勤しんでいるフェイトとは、根本的に場所が違う。教導をする人は、逆に言えば日々が安定しているのだ。 ゆえに、前線勤務ができないようなエースが現実的に教導隊に多いも事実だったりする。 昔は、ユーノは仕事の地獄ばかりが展開していたし、武装隊だったなのははなのはで、休日も不規則な日々。 ある意味、今の仕事は二人にとっては一番休日が合わせやすい状態なのかもしれない。なお、ヴィヴィオは言うに及ばず日曜はお休みである。ヴィヴィオの場合は土曜もお休みで、そのときはアイナさんが面倒を見ていたり、無限書庫に行ったりするのだが。 「お出かけお出かけ、なのはママとユーノパパとお出かけー♪」 とはいっても、お出かけが毎回できるわけではない。二人とも仕事にのろわれているのか、主にユーノは家でも仕事をすることがあって、そういうときは家でユーノのお仕事のお手伝いをするのがヴィヴィオとなのはの休日日課だったりする。 とにかく、お出かけ、しかもお買い物だ。なのははヴィヴィオの欲しいものがあっても、なかなか買ってくれないのだが、ユーノはその意味で思いっきり甘い。二人は結婚しているわけではないので、財布も別。これは欲しいものを買ってもらうチャンスだね!、とヴィヴィオは内心でも楽しみなのだ。 そんな娘の元気な笑みを見ると、なのはもつられて笑みを浮かべたくなる。 ミッド中心街は休日になれば、家族連れ、カップル、一人身のウインドウショッピングとさまざまな客が入り混じる。しっかり手を繋ごうね、となのははヴィヴィオと手をしっかり繋いでいた。ヴィヴィオのもう片手はユーノが握っていて、三人そろって歩く姿を、家族以外にたとえる人はまずいないだろう。 「えっと、最初はどこに行くのなのは?」 「うん、食品とかはちゃんとアイナさんが買っておいてくれてあるから、まずは洋服、かな?」 「ヴィヴィオのふくぅー!」 というわけで、三人はデパートの洋服専門店に入った。それまではよかった。それまでは。 ヴィヴィオの服を選ぶときに、ユーノとなのはの意見が対立してみたり、ヴィヴィオがなのはの押した服よりも、ユーノが押した服がいい、といって敗北感あふれたりと、まあそれは良い、となのはは思う。 問題は、その服を選び終わってから。 「じゃあ、次はなのはの服ね」 とユーノが言ったことだった。 自分でいうのもなんだけど、と自分はちゃんと服は買っている。これでも、ユーノ君と一緒に住むようになってから余計によく買うようになった気がするけど。と家に服はたくさんあるから、と言ったのだが。 「まあまあ、せっかく来たんだから、ねっ?」 と押し切られてしまう。後でユーノ君の服も買っちゃうから、と心に決めた瞬間でもあった。 ヴィヴィオは自分の服を買ったためか、ユーノの隣で一緒に選ぶ。娘を彼に採られたような気分だ。それでも悪い気がしないのか、ユーノ君だからかな、とも思う。 彼だけは、自分にとって特別らしい。そのことを何よりもなのはは分かっていた。 それを恋と呼ぶなら、あるいは恋かもしれないことも。 でも、恋だったらどうすればいいのか。親友への恋は一番難しい問題であって、なのはもそれには非常に引け目を感じていた。現実なんていつも厳しい。自分がどうすればいいのか、思いと実情はいつも違うのだ。 と、服を選び始めたユーノとヴィヴィオ。二人そろって選んでいる光景は、なのはにとっては自然に見える。そういえば、ユーノ君とヴィヴィオって似てるところもあるよね、と長々と見てしまう。 「うーん。どっちがいいかなぁ……ヴィヴィオはどっちが良いと思う?」 「ヴィヴィオも困っちゃうよぉ。ユーノパパも?」 「うん。どっちもなのはらしいと思うんだけどね」 本当に家族みたい、と思う。実際に家族同然のこともしている。一緒に住んでいることはその最もなことで。 でも、それは『見たい』で事実じゃない。事実はユーノ君とはお友達。それ以上じゃない。 そのことをヴィヴィオはどう思っているのだろう。なのはには、ヴィヴィオの思いは分からないけど。 でも、きっとユーノ君のことをパパって言ってるから、そう思っているんだろうなぁ、と想像はつく。 それは事実とは異なる事実。ユーノ君はヴィヴィオのパパじゃない。それに私の……夫じゃなくて、ただのお友達。 その現状に半ば1年間、入り浸りだったのも事実。自分はそのあいまいな空気が好きだった。考えずに済むから。でも、考えずに済むという理由で時と空気にだけ任せることの危険性をなのはは知っていた。 誰かに、何かに託した世界は、自分の考えをはみ出して間違った方向に行くのだから。 ―――後で後悔しても遅い。 後で、また後で。そんな風に思って人生はこんなはずじゃなかったと思う人も多いのだから。 かつて、この仕事が終わったら、と思って最愛の娘を亡くしてしまったあの人のように。 「店員さんにきいてみよっか。ヴィヴィオ?」 「うん、ユーノパパ!」 どうやら、二人の方は店員さんに聞くことにしたらしい。 まあ、その手のプロに頼もうというのはごく当然の運びかもしれないが。 その場所の担当の店員がユーノに声をかけられて止まる。 ちょっと待って、この状況って…… と、なのははどこかで良く聞く状況に何かを思い出したが、ユーノはそのままたずねた。 「あの、彼女の会う服ってどっちだと思います?」 「あ、はい。奥様のですか?」 へっ、というユーノの予想外だといわんばかりのなんだか間抜けな声。 ……子供に年と近い男女。なのはの母の桃子と恭也は、恭也と忍の間に生まれた子と一緒に買い物にいって桃子の夫だと恭也が間違われたというほど……まあ、例の方はともかく、よくある話だ。 ――ユーノ君と私が!? 「い、いえ彼女とはそういう関係じゃなくて……その友達なんです」 「あ、はい。そのヴィヴィオは私の子ですけど、そのユーノ君とはそういう関係じゃなくて」 「うん!ユーノパパとなのはママは違うの!」 「す、すみません!?……えっと、ど、どういうご関係で?」 ヴィヴィオが間に入って話すものだから、店員も困っていた。 えっと、二人がパパとママで夫婦じゃない? まさか、離婚?いや、でもそんな見えないほど仲よさそうだし、友達っていうには何か違うしと店員さんの脳内はさながら、混ぜ放題のヨーグルトのようにこんがらがっていた。 事実は結婚どころか、告白すらしてない二人、とはまずたどり着けない結論だろう。不憫である。 「いや、えっと……彼女と同居してまして」 「あ、そ、そうなんです……」 なるほど、同棲か、と何かちょっぴりニュアンスの違う意味で捉えてしまう店員だった。 間違っては無い。ただ、一般的な同棲とはかけ離れているのだが。 もっとも、なのはとユーノはというと、顔真っ赤に困っているのか照れているのか。なのはは完全に暴走気味だった。 ただ、それが事実なのには変わらない。 「そ、そうですか……えっと、彼女の服ですよね、黒よりは白の方が彼女らしいかと思いますよ?」 どうやらなのはに落ち着きを求めるのは何か違うように店員には見えたらしい。 そういわれると、ユーノもヴィヴィオもこの服はなのはというよりもフェイトかなぁ、と思えてくる。 「う、うん。そっちの黒のは、なんだかフェイトちゃんみたい、かな?」 「そっか。なら、白い方でいいかな、じゃあ、彼女用にこっちをください」 ユーノが持っていた白の方の服を店員に渡す。 なんていうか、本当に恥ずかしかった。 でも、ユーノは言われながら、慌てながらも考えていたことがあった。 それはとっても大切なこと。それを彼女に告げることが今日はできるか、だけが大切で。 正直、不安だった。 ユーノにとってのなのはは、一年間でなんら変わることがなかった。 昔から愛しかった相手。昔と違うことを言えば、昔のは一目ぼれであって、今のはもっと強く愛しかったというだけの違い。 なのはのことが好きだから、だから同居のことでユーノはなのはにYesを言ったわけではなかったが、だからといって一年前のあの日から一緒に過ごしてきた事実は目の前にあった。 現実なんていうものはない、あるのは幻だ。なんて言葉をユーノは信じている方だった。 現実は変わらない。でも、本当はすぐに移り変わる。それを維持したいと思える今を考えたときにだけ、現実が存在するのであって、いつもは存在しないのだ。 なのはを見て、ついつい照れちゃったり、一緒に笑ったり、楽しいとユーノは正直に思えたけど。 だからこそ、店員になのはのことを「奥さん」といわれたときの、そうなりたいと思う内容と、現実の差を埋めたいと思えた。 いや、もっと前から。 「あ、はい!先ほどは失礼しました!どうぞ!」 ユーノがそんなことを考えて、なのははまだ慌てているうちに、まるで光速のようなスピードで服を渡し返す店員。この場にいるのは気まずいと思ったようだ。 まあ、このパパとママだと間違ってないよね、と唯一冷静だったヴィヴィオが思ったのは内緒である。 ――――――――――――――― まあ、お兄さんとお姉さんと間違われるよりは説得力がないわけでもない。 なのはもユーノも、日常は事実家族同然であって、そもそも仕草も家族同然だ。 とは言っても。 「ヴィヴィオは、ヴィヴィオはお子様セット!あと、プリン!」 「僕はペぺロンチーノ・セットで」 「じゃあ、私は……彼と同じで」 「はい、分かりました。お二人がペペロンチーノ・セットで、お子さんがお子様セットにプリンですね」 どうみても、家族扱いだった。 まあ、ここに三人できてそれ以外の言葉で対応することが無理なことも分かるが。 もっとも、ヴィヴィオはなんら気にしていない。事実だけを見れば確かにユーノはヴィヴィオのパパであって、なのははヴィヴィオのママなのだ。パパを「自分のことをほかの誰よりも大切にくれる男性」と定義すれば、確かに、ヴィヴィオのことをなのはママのように思ってくれるユーノは、ヴィヴィオにとってパパと呼ぶに値していた。 「困っちゃうね、なのは」 「えっ、なにが?」 「家族扱いされちゃうの、だよ」 「あ、うん。私たち、そういう関係じゃないのにね……でも、やっぱりそう見えるのかな?」 「だいぶ年が離れている子供と一緒にいる二人を兄弟姉妹と見るのは難しいかもね」 事実一緒に過ごしているもんね、と続ける。 なんでここで昼食をとっているのか、といえば服を買ったときの店員がお詫びに、といってここの割引チケットをつけてくれたのだ。いえいえ、と断ろうと二人して息ぴったりに話してしまったので、店員から少し苦笑がこぼれたのは、まあいう必要ないだろう。 「そうだよね……一緒に住んでいるのも、おかしいのかな、やっぱり。 ユーノ君と一緒にいないと、いつもユーノ君無理しちゃうから、一緒にいないと、と事実ばかり考えちゃうけど」 「僕も、かな。ヴィヴィオがいるのか、なのはって無茶ばかりするからね」 ヴィヴィオの前に料理が運ばれて、なのはとユーノの目の前にも料理が一品ずつ運ばれる。 いただきまーす、とヴィヴィオは先に一口。二人そろってなのはもユーノもその笑みに心打たれる。 「美味しいね、ユーノ君」 「うん、確かに味付けもばっちりだね……そういえば、本当に今日で一周年なんだよね」 「一緒に過ごして楽しかったけど。うーん、ユーノ君のこと良く分かった気がする」 あまりユーノとしては自分のこと知られることは嬉しくなかったりする。 自分の癖とか、そういうのは特に。もっとも、なのはなら仕方ないか、と思うところが彼らしい。 「ユーノパパはお休みの日は朝が弱いの!」 「うん、それと時々しかテレビを見ないことかな。バラエティーとかぜんぜん見ないよね」 「……なんだか、なのはに尻に敷かれそうで怖いんですが」 これじゃあ、未婚男性というよりも、奥さんに弱みを握られた亭主だよ、とはぁ、とため息一つ。 そ、そんなことしないよ、となのはは必死で否定。まあ、なのはならそういうことはないだろうけど、ということもちゃんと理解しているユーノ。 「な、なのはだって平日は朝弱いよね!」 「うぅ、痛いところをついてくるね、ユーノ君」 「いつも、なのはママは目覚ましをレイジングハートに頼んでいるもんね!」 「ヴィ、ヴィヴィオまで!」 ヴィヴィオに痛いところを突かれて、恥ずかしそうに体を縮めるなのは。 確かにこんなこと話していたら、家族に思われても仕方ないのかな、とユーノだって思う。 ただ、家族らしいのに家族じゃないのは逆なのだ。 家族になろうとしたわけではない。告白して結婚してから子供を持つべきなのに、子供を持ってからどう告白して結婚すればいいんだよ、というか、なんというか。 形はできても、名があってない。 なら、名をつけるしかないかな、とユーノは食べながら一つ決心をした。 ちょうど一周年なのも、何かの縁かなと。そう思ったから。 「ねえ、なのは。この買い物終わって夜になってから、ちょっと寄り道していいかな?」 「寄り道?」 突然のユーノの提案に驚いた様子のなのは。 ヴィヴィオの方も楽しそうな表情で「よりみちー!」と言っていて。 なんだろうと、思うなかもう一度、ユーノは繰り返した。 「うん、寄り道」 ――――――――――――――― 「うわぁ……なのはママ、お星様いっぱいだよ!」 「本当だ……夜になってからって、こういう意味だったんだ……」 買い物はあまり多くは無かった。 服以外には家のインテリア関係のものを注文して後日運んでもらうように頼んだぐらい。 衣食住といいつつ、衣と住は似たようなものだから、ということで一緒に買いに来たらしい。なのはらしいとユーノは感じたが。 ちなみに、ヴィヴィオは欲しかったフェレットさんヌイグルミをなのはに買ってもらうという予想外のハプニングが起きた。ユーノパパに懇願してもなぜかうんとは頷かないで、むしろなのはが買うことに乗り気で、なのはの自費でそのまま買ってしまったのだ。 なんでだろう、とヴィヴィオは想定外の事態に非常に悩み、欲しかったフェレットさんヌイグルミが手に入って嬉しいのに考え込んでしまったほどだ。 ただ結局、そこでもまた家族だと思われたのはお約束というやつである。 まあ、そう思うよね、と納得している三人だからこそ、というべきか慌てずにいたのは家族だと無意識の意識があったのかもしれない。 なのはから見れば、確かにそれは無意識の意識だった。 ユーノ君とは家族、だと思う必要もなく、そうだと確信していたのだから。パートナーだったときから。 買い物を終えてから、ゆっくりと近くを回って最後にユーノが転送魔法で一気に移動してきたのは、ミッドでも高地といえる場所の公園で、クラナガンからはそれなりに離れている。 転送魔法使ってよかったの、となのはが尋ねてみると。 「さっき、クロノに二回使うからって言って許可もらったから問題ないよ」 ということで、どうやらこれはさっき思い立ったらしい。 ミッドチルダの首都ではまず見れないほどの星々。クラナガンは明るすぎる。いくら空気が良くても明るすぎる街で星は見えない。 「綺麗だよね……なのは」 「うん、とっても綺麗……こんなにお星様いっぱい見れたんだね」 星々の数は数多。地球とは違うけど、それでも星の価値が変わるわけで無い。 ただ、星がいっぱい、というだけだ。 「ねえ、なのは」 「なに、ユーノ君?」 「一緒に過ごしてきて思ったことが、あるんだ」 「……私も、かな」 「ヴィヴィオもあるよ!なのはママ、ユーノパパ!」 ゆっくりと近くのベンチに三人そろって座って空を眺めながらそうユーノが話しかけた。 ヴィヴィオは真ん中……ではなく、ユーノの膝の上に載る形で。ベンチが小さかったから。 「ヴィヴィオね、なのはママだけじゃなくてユーノパパもできて、とっても楽しかったー!」 「そっか、ありがとう、ヴィヴィオ」 「……なのはママも、そういってくれて嬉しいかな?」 えへへっ、とユーノとなのはがヴィヴィオをなでてくれて嬉しそうな笑みを浮かべるヴィヴィオ。 撫でてくれると、とっても眠くなっちゃって。 なのはとユーノが嬉しくて撫でながら空を眺めていると、いつの間にか。 ううぅ……と眠くなって意識が朦朧として。 「あれ、ヴィヴィオ寝ちゃった?」 「そうみたいだね、なのは」 「ヴィヴィオ、ユーノ君の膝の上で寝ちゃって気持ちよさそう」 笑顔のまま、うにゃにゃ……とユーノに半ば抱きつく状態でヴィヴィオはいつの間にかお休みなさい。 ――二人だけ、と呼んでも間違いない状況だった。 その空気の中で、二人ともゆったりと過ごして…… 「それで、なのはは?」 「えっ?」 「いや、だから一緒に一年間過ごして、だよ」 ああっ、とそういうことねと聞いて納得するなのは。一緒に過ごして、といえば一言しかない。 「何だか、久しぶりにユーノ君とずっと一緒で楽しかったよ。これからも、だけどね。 ヴィヴィオも嬉しそうだったし。さっきも言ったとおり、ユーノ君のことも理解できたから……後、私の気持ちも」 「僕も同じ、かな」 空はきっと、ユーノとなのはが最初に会ったときの同じように静寂をただ、提供しているだけ。 「ユーノ君と一緒にいて思ったのは、一緒にいたいって思い。にゃはは……恋、なのかな?驚いた? でもね、それを言うのって悪いかなってずっと思ってんだよね……今までは」 なのはの猪突な告白に少しの間、ユーノの表情も固まって、声もなくなった。 ……だめだったかな、となのはが思い始めたときに。ユーノの唇が動いた。 「……なんで言ったの?」 「一緒に過ごしていたから。こんなはずじゃなかった、なんて思いたくないから 後はヴィヴィオのこともあるし……言わないままで後で後悔したくない」 「……まったく。なのはっていつも猪突だよね?」 「ううぅ……それは」 いきなり告白してしまったことに、いや同居したときも、ユーノと何かしようとしたときはいつも猪突だった。 なのはだって、ちゃんと考えて行動しているのだが、やっぱり猪突になる。なのはにとってはいつでも全力全開。一度決めたら吉日の性格なのだ。 「僕みたいにいつも考えて考えたりしないでそのまままっすぐで」 「ううぅ……」 「人が悩んでいることもすぐに決めちゃってそのまま全力全開で」 「ご、ごめんなさい……」 「おまけに自分のこともあまり大切にしないで走っちゃって」 「それは……」 「……でもさ、だからこそなのは、なんだよね。まったく、僕が告白しようかって考え込んじゃってバカみたいじゃないか」 「だから本当にごめんなさい……って……えっ?」 だめだよね、と泣きそうだったのをできるだけ我慢していった言葉なのに、途中でユーノの声に温かみのある、しかも予想外の言葉が入っていた。 ――僕が告白しようかって考え込んじゃってバカみたいじゃないか。 「一年前、なのはがいきなり『ユーノ君と一緒に住む!』って言って来てときは正直、慌てすぎて、最初の日なんかまったく寝られなかったよ!睡眠障害だったけど、それ以上にあの日はまったくね! ……でも、とっても嬉しかったし。やっぱり、なのはのこと僕は好きなんだって思って」 「ユーノ君……」 「ちょうど一年だって朝なのはが言って、そのときのことも思い出しちゃって。 それにデパートで間違われて……一年間過ごしてきたのは、家族として、だと思ったから。前からずっと思っていたけど、言おうと思ったのに、さらっとなのはがそんなこと言うから」 「……ありがとう、ユーノ君」 頬を赤く染めたなのはが、ただ一言それだけを告げる。 思ってくれて、ありがとうと。 「それに『ユーノパパ』だからね。名は体をあらわすっていうなら、合わせないとね?」 「じゃあ、なのはもユーノパパに一つしていいかな?」 そう言うとユーノの正面に顔を近づけると口元にチュっと唇が触れ合う。 嬉しい、ただそれだけの気持ちでそんなことをしてみたくなる。不思議だけど、嬉しい。 「そ、その……嬉しかったから。私もユーノ君大好きだよ」 「僕もなのはのこと大好きだ」 そういうと二人とも顔を近くに合わせて…… それがごく自然だといわんばかりに…… 「でも、ヴィヴィオがいるからね?」 「うぅぅ……ユーノ君意地悪」 寸前のところで、ユーノが手を出して止めようとして、なのははユーノの手に抱きつく。 ……とめなかったら、娘が寝ているのに抱きつくつもりだったね、と呆れつつも、嬉しいユーノだった。 「なのはが寝る前に付き合うから、ね?」 「!?……ユーノ君の変態……でも、やっぱり好き……」 そのまま、ベンチでユーノの手に抱きついてユーノの方に寄りかかるなのは。 なのはの息がユーノにあたるほどの距離。そういえば、同居していたときもこういう状態は何回かあったけど、それはそれで色々と大変だったっけ、と思い出す。 理性との戦いというやつだ。毎回理性が勝利したことに敬意を払いたい。 「ううぅぅ……ヴィヴィオとぉ……なのはママとユーノパパでぇ…… いつまでも一緒にいたいですぅ……」 「……寝言、かな?」 「そうみたいね……」 ヴィヴィオの表情が健やかなままで息も落ち着く。 やっぱり、それは寝言のようで。ふふっ、とユーノもなのはも微笑む。 恋人という関係になっても、その表情は親だった。 ――恋人になる必要すらないまま、次のステップを踏むのも時間の問題のようだ。 「じゃあ、一緒にユーノ君いてくれる、よね?」 「えっ?」 「いつまでも、一緒に、だよ?」 「一年前、一緒に住もうって言ってきたときに言ったと思うけど…… 『一緒に住みたいとなのはが思う限りは一緒にいるよ』って。他人行儀なしで、障壁を取り払って、素のままでいてくれればいいってね。」 「……そんなこといえちゃうから、ユーノ君のこと、好きになっちゃうんだよ。 ほかの人には、そんなこと言わないでね?」 「大丈夫、なのは以外にいえるような台詞じゃないから」 言えたら、僕は相当その人のことが好きってことで。 なのは以外にそんな人はいないから。 「そっか。私も、ユーノ君以外にはこんなこと、できないよ。愛してるもん!」 一緒に住んでいて、一緒に彼と過ごしたいと思えたから。 実感させてくれたから。私と彼が一緒にいて楽しく話すことが、何よりも大切だって分かったから。 一緒に住んでいて、彼女となら一緒にいたいと思えたから。 彼女といることに幸せを感じたから。彼女と一緒にいることが日常に一ページのように当たり前になっていたから。 だから、なのはもユーノも。 その日から、思いあえた。一緒にいたいって。 空の星々が見守るなか、三人でのんびりとお空を眺めて。 そして、一緒になれた。 家族で、恋人で……きっと近い将来、夫婦になれる二人に。 それが一緒の生活を始めてから、ちょうど1年の日のことだった。 同時にその日から1年後には新しい家族ができるのだが、それは後々のお話。 あとがき 今回はユーなの同盟の企画として作ったものですー^^ ユーなの同盟ってというわけで、ベターに同居もの。ユーなの万歳でございます! それでは、ユーノとなのはの今後を願ってあとがきとさせてもらいます。 PR |
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コメント |
確かに、家族て言われちゃうな。そこで、ユーノがはい、て言えば男らしかったのに。やはりユーノとなのはは、最高です
【2008/09/2103:20】||キッシー#9b1363489b[ 編集する? ]
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感動!ゆーなの大好きな自分としては、こういうの大好き!その後のおはなしとか期待してます。
【2010/01/1615:02】||悠香#29f3f70470[ 編集する? ]
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本編のほうでもさっさとくっつけよ!
と、もどかしいぐらいです。 【2010/04/0223:55】||名無しさん#9b2bb624ea[ 編集する? ]
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