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第12管理世界(旧ベルカ本国・現ミッドチルダ直轄管理地) 『聖王教会』中央教堂
生い茂る木々から鳥の声が聞こえる。 そんな森林に立っているいくつかの建物。その装飾は歴史を感じさせつつも同時に先進的な構造をしていた。
ここは第12管理世界、ミッドチルダに戦後移り住んだベルカの民が言うところの『ベルカ本国』。 今はミッドチルダの直接管理区に指定され、人の出入りも未だに厳しく制限されている。
そんな中にある聖王教会……ベルカの国教だった、それの中央教堂。 その中、スタンドガラスから入る光が部屋を明るくして絶えない聖堂の最前列。 古風な教会にあって、明らかに浮いているであろう、フライ・ウインドウ……空飛ぶ電子画面、とも言うべき、それをいくつも開いて何かを見ている女性が一人。
どうやら、その人は誰かと通信をしているらしく、小さいながらも声を出していた。 それはウインドウで話しているほうも同じで声が漏れていた。
『ええ……片方はなんとか無事確保できたのですが もう片方は爆発で発掘現場ごと消失しまっています。現場の話だと何も残っていない、と。 もっとも、爆発現場の詳細な調査と検索はこれから行う予定ですが』
ウインドウから零れている声の主は、声変わりも果たして若干の重さを持っているものの、幼さも残っていないわけではない、そんな感じを受ける声。 その名前をクロノ・ハラオウンという。
「クロノ提督。爆発、となると現場の方たちはご無事でしょうか……?」
『ええ。現地の発掘員も局の調査隊と一緒に退避しており 魔導師たちにも被害というほどのものはありません』
クロノのその言葉を聞いて、ほっとしたようなため息をつく女性。 聖王の加護が守ってくれたのか、真実は別にしても被害がない、ということはいいことだろう。
ただ、聖王教会に属するものとしては……聖王教会・教会騎士団騎士「カリム・グラシア」としては 被害無しということは、聖王のご加護でもあったと思えるべき良い話だ。
「そうですか、よかった」
『現場発掘員の迅速な避難は貴女からの忠告を事前にいただいていたからこそです、騎士カリム』
「危険なロストロギアの調査・保守は管理局と同じく聖王教会の使命でもありますから。 管理局で理事職に尽かしていただいていることもありますし、お助けできることがあればいつでも」
事前にこの事件に関しては、カリムが扱う案件から危険を発していて、そのために魔法素質があまりないであろう発掘員を事前に下げるようにクロノは命令しておいたのだ。それが被害者ゼロ、の理由だった。
確かにカリムとしては、自分の、教会の知識と情報を生かせて嬉しいところもあったが、同時に爆発してしまったことそのものに危惧するところがあった。
「聖王教会の中央データベースは、月末に再編予定で現在、最小限で動いているので詳細は不明なのですが、レリックに関しては、無理な開封、魔力干渉などをしなければ、まず暴走・暴発の可能性はありません。 また、すべてのレリックは特別製の箱に入れられており、ちょっとやそっと、では爆発も致しません。 もともと、レリックがベルカ所有のものだったので基本データはあるのですが、どうもそれより上の情報は王室のみの秘匿データらしく、詳細は分かりませんでした。王家はもう存在しない以上、情報閲覧可能な人間はいませんし」
『いえ、それだけあれば十分こちらとしても対応が取れます』
ありがとうございます、と重ねて言うクロノ。 そこまで、改まらなくも良いのに、と思うがそこら辺は彼女の知るクロノ・ハラオウンらしいところだ。 ただ、いくら情報を集めようとも、カリムから不安を無くせなかった。 この手の事件には毎度なれない。聖王教会がもともと、ベルカが旧暦に製造していた現代で言うロストロギアにあたる危険物を集めるために教会騎士団を創設したとはいえ、今回は特に。不安だった。 だから、カリムは重ねて気をつけることを言った。
「それでは、現場の皆様には、重ねて十分お気をつけて行動をするようにお伝えください」
『はい。それでは』
クロノの言葉と同時に消えるウインドウ。 しかし、カリムから不安が消えることはなかった。 最もたる理由はきっと、分かっている。そう、彼女にとっては妹のような…… 彼女の姿を思い浮かべようと周りの小鳥たちの声しか聞こえない世界で目を瞑り瞑想に入ろうとして。
――後ろのドアが開いた。
誰、と警戒心を持ちつつもあくまでも振り向かないで瞑想を続けるカリム。
「騎士カリム、聖王教会の中央データベースの再編の話で、セレナさまが…… っと、ここでご瞑想なさっておりましたか?」
「シャッハね、別に大したことじゃないわ。さっきまでクロノ提督と通信をしていたので、ね」
カリムの後ろ、聖堂の後方のドアを空けてカリムの横まで聖王に仕えることを建前としている教会の関係者らしく静かに歩いてきたのは、聖王教会修道女……をしているシャッハ・ヌエラだ。 シャッハだったことを確認したカリムから警戒心が解ける。もう長い仲のシャッハだからこそだ。そこら辺は。
「ああ、なるほど。クロノ提督ですか。 もし、心配ならば、私が現場まで行ってお手伝いにうかがいますよ? 非才の身ながら、全力でお助けにお向かいます」
ショートの髪型とその雰囲気が活動的な印象を与えるシスターのシャッハは、雰囲気を裏切らない行動派のようで、今すぐ駆けつけようか、とカリムに問う。実際に行って欲しい、といわれればシャッハはすぐにでも行くつもりだった。
「ありがとう。でもきっと大丈夫よ。はやてたちは強いもの。 それに今日は守護騎士たちに本局のエースさんも勢ぞろいらしいから」
若干の心配はあった、がそれを自分に言い聞かせてそういうカリム。 実際にそのエースさんがSランクと聞いている。対するシャッハはAAAランク。戦力にはなるだろうけど、でもSランクが二人もいるなら十分に安心だ。
カリムとしては、心配ではあっても、過度の心配をすることを立場も許さない。 彼女は教会にあって、それなりに上にいる人間なのだ。上の人間が心配事を抱えていて組織運営に障害をきたすことを考えれば、心配しすぎ、というのも問題だ。
それも含めて気持ちを入れ替えようかな、とちょっと背伸びをするカリム。 人によっては見苦しいその動作も、さすが協会騎士にしてその美貌が噂の騎士。程よく優雅に決めてしまう。 それを見ていて、少し微笑ましくも口元を隠すシャッハ、と。
「そうですか、それではセレナさまとの打ち合わせのほうがありますが……」
「そうね、行きましょう。管理局技研本部の方も忙しいらしいから、私も話は早くまとめないと嫌われてしまうわ。 趣味に生きる、なんていうぐらいの彼女だと特に」
カリムのいうセレナ……セレナ・カルステンスは、管理局の技術研究本部の本部長をしている。 専門はデバイス工学、らしいのだがそれを応用した各種コンピュータ関係技術にも優れている。 魔法と科学の融合を提唱する彼女の考えは、多少のマッドなところを除けば、カリムも共感するところもあるのだ。
今回は、聖王教会が抱える多くの書庫のデータベースの生成を技研本部に依頼してあり しかも、その依頼の責任者がカリム。そんなわけでデータベース作成に関しての意見の詰め、のために聖王教会本部(第一管理世界・ミッドチルダ本星ベルカ自治区内)にて話し合いの予定だ。
「それじゃあ、戻りましょうか。シャッハ」
「はい、騎士カリム」
とりあえず、教会だからといって暇なわけじゃない。 自分の弟がサボり癖だというが、あれはあれで仕事をしているのと同じように。教会騎士の自分だって忙しい。 つまりはそういうことらしい。 その弟にちゃっかり一つの仕事をすでに頼んでいるあたりが、彼女を才媛という所以だろうが。
魔法少女リリカルなのはStrikerS~もうひとつの物語~ 第3話 「A's or Striker~もう一人のエース・オブ・エース~」
時空管理局・本局 総合アナログデータベース~無限書庫~
書庫から出てそろそろアースラに行かないといけない時間になっても仕事って言うのはなぜか来るものだ。
とある悪友は言った「いつだって世界はこんなはずじゃなかった」と。
まったく、本当にこんなはずじゃなかったよ、とユーノは愚痴りたいところを抑えて仕事をする。 といっても、今回のそれはいつもの仕事とは違う。
話によるとなのは・フェイト・はやての三人組であたっていたロストロギア関連事件についてらしい。 実際に……
『ユーノ君、聞こえてますかーシャマルさんですよー?』
「聞こえてますから。データもちゃんと受信していますから、シャマルさん……恥ずかしくないです?」
現場のリアルタイム映像……地上のシャマルから管理基地局、人工衛星、アースラ、管理局本局とつないで流れているのでラグはあるのだが、そこから情報が先ほどから流れてきて、無限の情報の海とすら呼ばれる書庫に貯まっていく。 シャマルたちがいるところは、ロストロギアごと魔力爆発を起こしたらしく、送られてきた映像にもその後は生々しく残っていて、ユーノもそのクレーターのような跡に驚きが隠せない。 これだけの魔力爆発だなんて、どんな技術で、どうしてこんなところに、とユーノの探究心がそれを調べたい、と叫んでおり、仕事ということもあってユーノはシャマルたちと話しながらも仕事を進める。
『ああ、ちょっとぐらいは……って違います! だいたいですね、ユーノ君が返事してくれれば、私だってシャマルさんですよー、なんて言いません!』
しかし、とはいっても自ら『シャマルさんですよー』は無いんじゃないだろうか、と横で手伝っていた アルフですら思ってしまうほど、歳(守護騎士プログラムである彼らに歳、という概念はどうなのかは後としても)に似合わないと思えるほど、甘い声でシャマルが言っていたのだから仕方ない。
甘すぎですよ、シャマルさん。声が声が。
『あれはシャマルがわりーだろ?』
『ああ、ヴィータちゃん!?回線に勝手に入って!いいじゃないいいじゃない!いつも書庫で仕事しているユーノ君にも、たまには若いお姉さんの声を聞かせてあげても!』
――若いって……
無限書庫にいたユーノや、通信に乱入してきたヴィータですら、一瞬言葉に迷うシャマルの発言だった。 ヴィータとユーノを繋ぐウインドウが開かれたが、ヴィータの表情は呆れたような驚いたような、どっちにしてもシャマルの今の発言には同意しかねるような表情だ。 ユーノも否定することは無いにしても、全面肯定する気も無かったりするので、そこら辺は意外とちゃっかりものである。本当に意外なことに。
「シャマルさん、その一応若いっていうのは……」
『シャマル……』
『ちょ、ユーノくんもヴィータちゃんも何でそんなに可哀想な人を見るような目つきで見るんですか!? ううぅ~……どうせ、私はおばさんですよ……はあぁ……』
ユーノもヴィータも、さすがに落ち込んで地面に指を当てて絵を描き始めたシャマル。
さすがに言いすぎた、と思ったのかささやかな慰めの言葉をかけようとする二人だったが、雰囲気がそれを許してなかった。シャマルフィールドとでも言うべきか、思いっきり重い空気がそこにあった。
幸か不幸か、ユーノはそこから助け出された。アルフの声もそうだが、それにプラスして。
「あのーユーノ司書長。情報受信完了しました。すでに解析・調査担当のG班が書庫調査を開始するように私から言っておきましたけど、それでいいですよね?」
「ああ、ソニカさん。僕もある程度調査しておいたので、その資料も調査班に送って置いてください」
無限書庫ソニカ・ミスリレック副司書長、その人だった。 ユーノが休暇をとるために今は司書長代理もしているのか、引っ切り無しにあちこちの司書から報告が彼女に集中している。しかしそれも手早く彼女は処理しつつ、ユーノと話しているのだからユーノクラスに匹敵するかもしれない逸材、と言われるもの納得だ。
『にしても、シャマルの奴は……まったくしょーがねーな』
「まあまあ、ヴィータも落ち着いて。シャマルさんだって、きっとそうしたいときがあるんだよ。きっと。 ……それにしても、そこは本当に何も無いみたいだね。 主な鉱山物質も発見されず、木々も旧大戦で消失。 あるのが遺跡とロストロギアだけの世界っていうのも悲しいかな……」
『ああ、確かにここはなんもねーよ。それに……』
それに、と続けてその後の言葉が出ないヴィータ。 目の前の魔力が薄く残った戦闘の後のような空気、煙から何から……ヴィータにとってはあまり好きじゃない記憶がよみがえってしまう。言葉が出ないのではない、出せない。
出すと、あのときのことをイヤでも思い出しそうだったから。
「……ヴィータ。そんな顔するの、はやてが悲しむよ?」
『……うぅ……お前に言われると余計に自分が寂しく感じちまうじゃねーか!』
「……そこで怒られても困るんだけどね。 でも、君が心配することじゃない。今、なのはは空飛んでいる。それでいいだと思うよ。 君が心配するべき人は、なのはもそうかもしれないけど、はやても。家族なんでしょう?」
そういわれて、ヴィータも黙る。 なのはが守れなくて自分は悲しんだ。でも、もしそれがはやてだったら…… 自分ははやてを守れなかった自分すら許せないかもしれない。なのはならまだ、自分のせいだと感じるだけでも。なのははもちろん大切だが、ヴィータにとって、はやて、という存在は……特別な存在。
それがヴィータにとって、なのはとはやての決定的な違いだから。
そして、なのはを守れなかったことを自分が悲しんでもっとも迷惑をかけたのも また、はやてだろうから。
『……悪かったな。でも、それでちょっとは気分が晴れたぜ。 まったく、さすがなのはの使い魔はゆーことが違うぜ?』
「……皮肉なら許してあげる。本気だったら、虚数空間に強制転移するよ?」
マジな声だった。 しかも、言ってることが別格だった。正直、それをやられて勝てる敵はいねーよ、と思うわけで。
そして、その声にヴィータは素直に謝る以外の道が無かったりして。 実は、管理局の白い悪魔よりも図書館の支配者、の方が怖いんじゃねーか?とつくづく思うヴィータだった。
「っと、そろそろ僕もそっちに行かないと。同窓会の方もあるし」
『なら、あの資料の解析は誰がさがすんだよ?あれ、膨大だぞ?』
ヴィータが真剣に謝って、なんとか機嫌は取り戻したユーノ。 別に怒っていたわけじゃ実際には無いのだが(実際に怒るとヴィータのいう通りに本当に図書館の支配者、さながらの恐ろしさから司書の間ではユーノを怒らせてはならないは図書館原則に入れられているほど)それでも、ヴィータに使い魔呼ばわりされたことはそれなりに精神的に参っていたようで。 立ち直りが早いのも、クロノで耐性でもついたのかもしれない。
「ああ、ヴィータ。大丈夫だよ。無限書庫の司書さんたちは僕がいないだけで参るような人たちじゃないし。 そもそも、今の時期はそんな忙しく無くてね。まとまった休暇も久しぶりに取れそうなぐらいだからね。 それにソニカさんは僕以上かもしれないぐらいの才能があるし」
『ああ、そーいやそんな奴がいるって話は聞いたな。 でも、だからってユーノが無能者ってわけじゃねーんだし。噂もユーノより一歩劣るって聞いたぞ?』
「実際に私はとてもじゃないですけど、ユーノ司書長、みたいな何徹もできるような気はしませんね?」
ヴィータとユーノの会話に自分が出たことを耳にしたのか何なのか。 ソニカが再び首を突っ込んでくる。失礼だなぁ、と思いつつ、前は徹夜をよくしていたことを思い出して。
――何もいえない、か。
実際に何もいえなかった。残念なことに。
『まあ、解析できれば誰でもいいけどさ。誰がしていようが、書庫の奴らはタフだからな。 んじゃ、同窓会でまたな、ユーノ』
「……ヴィータさんって、無限書庫の司書たちを何か、選りすぐりの戦いのエースとか思ってません?」
「ソニカさん、それ、間違ってると思う?」
「……思えないところが怖いですね」
はあぁ……と二人してため息をつく。 無限書庫というところで働いた人だけが分かる、独特のため息だった。否定できない、という意味を込めた。
―――――――――――――――
早くするぞー!とさっきから嬉しそうな表情を浮かべて宣言するアルフ。 アースラにはご馳走とフェイトが待っている、だけあってかアルフもテンションがあがっているようだ。 そんなアルフに引っ張られて本局の転送ゲート前まで来たのはいいが。
「ふにゃ?おお、ユーノ君だー!」
金髪のツインテールに身を纏った蒼色の瞳。 遠くからみれば神秘的に見える女性が、ユーノを確認すると全速力で走ってくる。 アルフですら呆然のその構図。しかも、遠くから見ると分からなかったが。
「ち、ちいさぁ!?」
もっとも、ちびっ子形態のアルフがいえることか、といえばそうでもない気がするが。 実際にお世辞にも大きくない。140cm台中間といったところだろうか? 中学生の小さい子、ぐらいが納得いく身長だが。 そんな少女というべき?女性は、全速力で廊下を走ってくるとユーノに一直線に抱きつく。
「ですから、僕のことは司書長とか、そう呼んでもらえませんか!? シエラ・T・キャムフォードさん。もう、28歳なんでしょう?! だいたい、声が僕の親友のなのはそっくりなので、それで呼ばれると何事かと思うんです!」
そう、その女性。シエラ・T・キャムフォード。今年28歳。 ユーノですら、最初に見たときは何事か、とすら思ってしまうほどの小さくて年をまったく感じさせない美貌だ。 中学生にすら見えるのに、年は立派に成年。いや、それもだいぶ過ぎている。
そして、小さいことを除けば、確かにその美しさは計算され尽くされたとすら思えるほどのものだった。 もっとも、ユーノからすればそんなことを抜いて、問題なのは彼女の声だった。
彼の親友、とも言える高町なのはにそっくり、なのだ。その声が。 最初に彼女が無限書庫に来たときは、なのはと間違えて一つ問題が起きたほど。
「うぅー!いいじゃないのー!」
「30歳近くなのに甘えないでください!それと、抱きつきもやめてくださいよ」
「ちぇ~ユーノちゃん可愛いのにもったいないなー」
「可愛いって、僕は男です!」
彼女、シエラと会うとユーノのペースは大きく崩れる。 人のことを子供のように扱うところが特にユーノにとっては中々親しみをもてない最大要因でもある。 困った風にユーノはシエラを眺めて、次いでアルフを見る。正直、助けて欲しかった。 しかし、アルフはアルフで困惑気味だ。
「面白くないなーユーノちゃんはー。 まあいっか。そっちの可愛い狼の子は誰ー?可愛いなー? ああ、でもこの魔力波長は僕が前に教導してあげたハラオウン執務官の魔力だね?」
「えっと、フェイト・T・ハラオウンの使い魔のアルフだ~よろしくな~! って、フェイトを知ってるのか~?それに教導?」
フェイトを知っている素振りと予想外の単語…… 「教導」にアルフが最初の困惑にプラスして何が何だかさっぱり、と言った表情を浮かべる。 まあ、そうだよね、とユーノは彼女の職場も知っているがゆえにいわない。 普通、本局にいる女性は大体事務担当。なのは、フェイト、はやてのような人材は例外に近い。 それだけに最初、アルフもそう思っていたのだが。
「そそ。僕を何か事務担当とかと勘違いしてないかなー? 僕は時空管理局・第一戦闘技術教導隊第二大隊のシエラ・T・キャムフォード三等空佐なんだぞー? ああ、呼ぶときは呼び捨てでも何でもかまわないけど、シエラって呼んでねー」
「別名は【翠の艶麗】ですよね、金色の髪のお嬢さん?」
ふと、さきほど、シエラが走ってきたほうの廊下からまたしても猪突に声を出して姿を現せる、今度は男性。 ロングの髪を持ち、なおかつ独特の清清しさすら持つのは…… ユーノの知識の中で、ここにいることがおかしくない人はほとんどいない。 確か、と思い出す前にシエラがなーんだ、と声を聞いて振り向いてみたものの、飽きた感じで対応する。
「なーんだ、アコースちゃんか。それに【翠の艶麗】は フェイトちゃんを模擬戦でボクが落としたときに勝手にそれを見ていたサボり魔査察官がつけたあだ名だよ? まあ、白い悪魔よりよっぽどマシかもだけど」
「いえいえ、まさか単純な射撃魔法と補助魔法だけで、Sランク魔導師を落とす人がいるとは思ってなかったですから、僕も驚かせてもらいましたよ?変身・幻術魔法すら多用する戦術の数と、独特の笑み。 僕がつけなくても、艶麗、という名前はあなたにふさわしいと思いますけどね?」
艶麗とは酷いなーと言い返すものの、否定はしないところが怖い。 アコースもあまり彼女を怒らせると怖いことを知っているようで、あまり強くは言わないが。 ユーノもそれは同じで、目の前で抱きついているシエラをゆっくりと一回離す。
抱きつかれていて、正直なところ恥ずかしい。 ちっさいことを除けば美少女、というに値するのが、シエラという女性だった。
「ふーんだ。そういえば、ユーノちゃんとアコースちゃんって対面初めてだっけ? なんで、相手のことを知っているみたいな表情してるのー?」
「いえ、ついこの前、無限書庫に行ったときに 僕が美しい女性を見つけて、ついお茶でも誘ってしまいまして」
ユーノの呆れるような表情を見てしまいなんとなく予想がつくアルフ。 つまりは、あれだ……
「その【女性】が僕じゃなかったら誰だってこの際いいんですけどね……」
「あ、そ、その……ボクも何もいえないよ、アコースちゃんにそんな趣味が」
「い、いやだなぁ~そりゃ間違いましたけど。そんな趣味はこれっぽちも」
しかしながら、ユーノとアルフを含めたホントかよ、という三対の視線がアコースに刺さる。 僕はノーマルなんだけどなぁーと訴えたいが、間違えたのは事実で。
「あの件は本当に不幸の事故ですよ、司書長。まあ、そういうことで特にはやてたちには御内密に」
そういえば、アコースさんって、はやてとの関わりもあったんだっけ、とそのときの話を思い出す。 そのときはユーノが自分を女性だと勘違いしたアコースをストラグルバインドとリングバインドとを組み合わせてガチゴチに捕まえていたが。 もっとも、あれはさすがに大人気なかったかな、と思うところでもある。
「まあ、そういうことにしても良いですけど……で、お二人はどうしたんですか、こんなところで?」
ユーノが一番気にかかっていたことをとりあえず聞いてみる。 なんで、ここに二人が……転送ゲート前にいるか、が問題なのだ。
「いえ、行く場所はスクライア司書長と変わりませんよ。アースラです。 今回の事件のロストロギアの回収護衛を聖王教会の姉から僕が頼まれまして」
「で、時空管理局の特別クラスロストロギア監視班からボクが頼まれて二人で このアコースちゃんの変な癖を監視しながら、だけどユーノちゃんが来るまで待っていたって訳だよー」
そっちの方が、一度の転送で済むからね、という辺り自分たちが行くことを知っていたらしい。 とりあえず、愉快な人たちだ、と思うばかりなユーノだった。
「まあ、機械兵器も現れたっていうし、戦技教導隊の方から護衛を出した方が良い、っていうのが 航空戦技教導隊第二大隊隊長のブロス君の考え。 実際のところ、Sクラスが三人もいるアースラにボクが行く必要薄いけど、形だけでも整えておきたいってこと」
「……教導官なのになのはと違ってシエラさん、暇なんですか?」
なのはに教導隊の仕事を聞くと「なかなか休暇がとれないんだよ」と聞いていただけにユーノはここで のんびり雑務、にしか実質見えない仕事をしているシエラを凝視する。 相手のほうはまったくそれには動じていないようで、そこら辺がシエラが翠の艶麗、と呼ばれる理由でもある。
「なのはちゃんは若手ナンバーワンのエースオブエース。元気もあるし人気もある。 ボクみたいな陰険な戦術の教導を受けるのは性格も陰険な人だよ。主に」
「じゃ、シエラ教導官の教導受けたフェイトって……」
発言してみて、あまり考えたくない想像を一人してしまうアルフ。 あんなことや、そんなことや、まさかプレシアが昔やっていたようなことまで!?
「ちょっと、アルフちゃんアルフちゃん。ボクを悪魔か何かを勘違いしないでよ。 その真っ青な表情で考えていることとは違うから。主に補助系の教導だから、受ける人が少ないってだけだよ。ボクの戦術は補助系魔法と射撃系魔法の組み合わせだからね」
「ああ、そーゆーことかぁ。てっきりフェイトに鞭で」
「アルフちゃん、鞭ってねぇ……ボクを白い悪魔と一緒にしないでよ」
「いやー、高町教導官の教導は、短期間で、という意味では無類の破壊力って噂ですからね」
「無類の破壊力って、アコース査察官……まあ、否定できませんけど」
四人そろってゆっくりとゲートの転送口まで歩いている中で アコースが口元を微笑みさせながら語ったのは、破壊力、と点も含めてユーノも納得だった。
なのはは、教導官としての素質はある。もっとも「短期」という点を入れる必要があるのは ユーノだって、いやユーノだからこそ分かっていた。 なのはに他人の長期的なメンタルケアは無理だろう、と思えるのだ。一緒にいたユーノだからこそ。
――なのはって、どうも一直線すぎて、周りが時々見えなくなることもあるし。
一緒に、パートナーとしていたこともあるから分かる、別のところから見たなのは。 ユーノは、そう考えてから、もうそれなりに月日もたって、パートナーと一概にはいえない彼女を未だに理解している自分に、自分に彼女との仲を不可解さを感じてしまった。
「教導、という意味は短期的には技術を叩き込み、長期的…… こっちの教導はあんまり多くないんだけど、長期的には戦闘をいかなる状態でも出来るメンタル面も含めてのエキスパートにすることにある。長期的な教導を受ける子は特殊部隊とか、そういった少数精鋭の部隊にいくことが多いからね。ボクみたいな人間にこそ長期教導っていうのは……」
「つまりは、長期教導の合間の暇を、輸送護衛任務に当てられたわけさ。ですね、シエラさん?」
「……否定できないところがいたいなー、アコースちゃん。 そういうわけさ。ユーノちゃんと会えたのはもーう!、とっても予想外に嬉しいことかなー?」
興に入る、そんな表現がぴったりな風にシエラがユーノの片手をぎゅっ、と再び抱きしめる。 微笑ましい光景、といえばそうかもしれないが。ユーノとしては。
――だ、だから胸があたって……!?
女性への体性などない……無限書庫に6年間も入り浸っているせいで、青春を迎えないまま大人になった男の子、と副司書長のソニカが称するだけはあって、思いっきり恥ずかしそうなユーノだった。
「ユーノに抱きついてるのって楽しいのかー?」
「アルフちゃん、楽しいよーこれは。温かいし気持ちいいし。ユーノちゃんの表情の変化なんかが特に」
そうなのかー、と微妙に興味を持つアルフの表情はおもろそーだなーという訴えがいっぱいだ。 むしろ、ユーノとしてはまったくもって拒否したいところだ。 というか、だから何で抱きついているですか!、と再びとりあえず怒る。無駄かもしれないが。
「だからーー!まったく、言うだけ無駄みたいじゃないですか、シエラさん」
「『うん!ユーノ君がいくら怒っても私は抱きついちゃうなの!』って、こんな感じでなのはちゃんが…… 分かった、分かったからその円形魔法陣はやめよーよ。ユーノちゃん、ね?」
タダでさえ声が似ているのに声真似をした時には声はそっくりそのまま。 さすがのユーノも堪忍袋の緒が切れたのか、四つの魔法陣……チェーン・リング・フープ・ストラグルを展開し始め、それを見てシエラもからかうのをやめて、ぴったりと謝りの体制に入る。
なんというか、その光景にアルフは呆然にも似た感覚に包まれる。 これが、教導隊の人なのかぁ?と。
残念ながら、彼女は教導隊の人間であり、さらに言えば二つ名を持つなのはとは違う意味でエースオブエースの名を冠する、管理局最強の空戦魔導師の人間だった。 なんというか、感情的な意味で本当に残念ながら。
「スクライア司書長も、シエラさんも落ち着いてください。ほら、管制官からアースラの戦闘行動が終了した模様との報告も来ましたし。転送にはちょうどいいでしょう?」
「うーん。そーみたいだねー。 でも、ユーノちゃんも、ジョークが通じないなー。ボクとしては、変身魔法と幻術の使い手であるのだから、練習だと思って多めに見てくれるぐらい良いじゃーん?」
「最初に会ったときにいきなりなのはの声真似で『スターライトブレーカー!』と叫ばなければ許してましたよ」
あははーーごめんなさい、と最初は乾いた笑いで、後半のごめんなさいは本当に心から悪かったです、というのが伝わってくるほどに言うシエラの声がむなしく響く。
アルフのほうはアルフで、想像容易という感じでその惨劇、とすらいえる状況を思い浮かべる。 ――なのは最大の魔法、スターライトブレーカー。それを聞いた人は無条件に逃げる、という。
「そのときの結果が、処理中の本棚15個でしたっけ?」
「ええ、アコース査察官。僕もいきなりでシールド出して一つ棚を壊しましたけど、ほかの司書たちが完全にパニック状態でしたよ。なのはを知るだけあって」
「あれは後で賠償したよーボクだってさすがに」
「賠償で済めば、警察さんは入りません。管理局の陸士部隊もですけど」
ぐうの音も出ない論議にシエラも声が出ない。 何もいえないのは、つまりはシエラ自身もやってしまった感が残っているのだ。 とはいえ28歳の女性が、お茶目にそんなことをやらないで欲しい、とユーノは切実に思うが。
「まあまあ、スクライア司書長とシエラさんの個人的な問題はさておいて…… あっちで転送装置を操作する担当の人が困っているのでね?」
一同がアコースの示す方を見ると、そっちには『早く入ってくださいー!』と困った表情でいる女性局員。 やっぱり事務担当は女性比率が高いのだ……とてつもなくまだかまだか、と待っていた。
……結局ユーノたちは、すみませんすみません、と頭を下げてから 転送ゲートに入ってアースラへと向かったのであった。 ユーノとしては、イライラもしたが、同時に久しぶりに心から笑ったりして。
怒りも無かったわけではないが、こうやってみるととってもすっきりしたような気がして…… ふと一つの考えに当たる。
――まさか、僕がストレスで疲れていると思ってからかっているんじゃ……
長期教導の名手とも言われるメンタルケアの達人でもあるシエラ・T・キャムフォード。 ふと、横にいたシエラの味の見せるような笑みに直感が当たっているのではないか、と感じて。 そして……そして……
「だから、なんで、僕の腕に抱きつくんですか……(怒)」
「いや、やっぱりユーノちゃんって可愛いし?」
……買いかぶりすぎなのかもしれない。本当に。 ただ、唯一分かることはこの人のおかげで気分はずいぶん楽になったってことぐらいだろう。 自分にとっては不本意なことに。彼女のせいで。
第四話に続く。
後書き というわけで、上に書いたとおりに6回目の書き込みにして、3話の3回目の後書きです(マジw いやねーブラウザ酷いよ酷いw ルナスケープ、やっぱり更新しないとダメかなーw ああ、このサイトはルナスケープ4とインターネットエクスプローラー7で表示確認済みですw っと、それじゃあ、やっぱり第三話。上の通りに何度も書き直ししたために整合性がイマイチです。 まあ、コミックのエピソード02は『自分の物語上、あまり必要性を感じない』ということで大幅カット。 ヴィータとシャマルがユーノの入る無限書庫に連絡をしている形で代行させています。 というのも、エピソード02は、ヴィータのための回といっても過言ではないのですが、私の二次創作ではなのはを心配するヴィータという図式よりも、やっぱり家族としてのはやてとなのは。二人を心配するヴィータのほうがいいかなっと思いまして。 きっと、ヴィータがなのはを心配して看病すればするほど、無理しているだけあってはやての方はヴィータを心配すると思うんですよ。家族として、心配する。フェイトもそれは同様にリンディ&クロノの静止があると思っていたりして。そういう意味では家族がいないに等しいユーノが一番なのはを心配してるのかも。 ヴィータにとって、酷い話ですが『なのはとはやて』を天秤にかけてみたい、とは思っていたことです。 どっちがヴィータにとって大切なのか。ゆっくりと描いていきたいかなー? ヴィータ関連はエピソード02の主要なので、無視するわけにもいかないわりにはさらっと流れている三話ですが、代わりに4話でそこそこ出す予定。ユーノとはやてが強奪(ぉぃ)することも含めてw っと、今回。彼女を紹介しないわけには行かないでしょう。 新しいオリキャラのシエラ・T・キャムフォード(28)さんを(ぁ 金髪のツインテールに身を纏った蒼色の瞳。 そして、身長が140cmのロリっ子&ボクっ子で、声がなのは似。 さて、気づいた方はいると思いますが元キャラがいますwもちろんw D.C.~ダ・カーポ~およびD.C.Ⅱ~ダ・カーポⅡ~より 芳乃さくらちゃんです。 シエラちゃんのキャラも元となっているのはw だから、まあ声がなのは似と(さくらのCVは田村ゆかりさん) ユーノにある意味もっとも近くて理解している人です。今のところw ユーノと結婚して一番幸せにできるのも彼女かも知れませんw 今のところ(繰り返しネタかよ で、彼女ほど積極性をもてるキャラも三人娘にはいないでしょう。 今のところ(繰り返しネタは三度で飽きる 最初はキャムフォードじゃなくて、クロフォードだったわけですが…… たまたまアニメのゾイドを見てしまって、共和国大統領ルイーズ・テレサ・キャムフォードのおばさまの凄さに感動してそのままなんというかw ああ、でもTはテレサのTじゃないのでw 過激なコミュニケーションをとってくるシエラさんですが、それで戦技教導隊のエースオブエース。 なのはと並び、いや年齢から出た差は、むしろなのはよりも上かもしれないほどの知略戦術家。 フェイトさんを訓練教導で落としていますし、なのはさんもどーでしょうねw なお、シエラとなのはは同じ戦技教導隊でもなのはが第一大隊所属。 シエラが第二大隊所属、と所属が微妙に違ったり。やってることは同じなんですけどね。 なお、本当は人数的には中隊にするべきなところを、エリート中のエリートとも言える連中が集まった精鋭部隊として、大隊という一個高いランクにすることで隊長の位も高くなっております。 シエラが三等空佐(当時のなのはが二等空尉)なので、隊長さんは二等空佐か一等空佐でしょう。多分。 ……とまあ、あんまり本編と関係ない設定なのでここで紹介。雑設定とも言います(ぁ シエラはスズキの車『ジムニー・シエラ』から。 いや、こうなったらオリキャラもすべて車の名前にしようとする本能が…… さらっと、聖王教会の話ではプロローグでチョビっとでたセレナ女史が話に出てるし、無限書庫ではソニカ副司書長も出ていると、オリキャラ尽くしですね。これが原因か?w アコース査察官の影が薄いのは仕様と言うか、どうにもならなかったんですw ベルカ系の設定も色々とオリジナル設定があるのでどこまで信用できるか怪しいところですがねw なお、シエラは声優ネタも使っている関係もあったり。なのはと声は本質的には同じですが、こちらはさくらっぽいゆかりんを思い浮かべてくれればw まあ、シエラちゃんには……まあ、次回も出てくる予定なのでw 後、名前だけ出てきたブロス君は、シエラのいる第二大隊の隊長です。まあ、そういうことw とにかく、第三話はエピソード02の裏側話。エピソード02は時間の関係もあって割愛ですね(ぉぃ その分、次回でそれは補う予定ですが。 それと感想&Web拍手ありがとーです。 それのおかげで6回の壁を越えて更新です(涙 それではーー^^また次回ー^^ 誤字脱字があるかもー。6回もやってると主に気力的な意味でw