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実は、今回のSSは自分で三回&知り合い二人に、と推敲を意外と重ねているんDA☆ZE(ぇ そろそろ、2月のモテない人たちにとって苦悩の日が来ます(ぁ もっとも私もそっちの部類に入りますが……(涙w まあ、それは置いておいて。長編も書きつつ短編も書くと言っているので、短編を。 「チョコレート・パニック」と題したSSですが、フェイト&キャロ編の名前が示すようになのは&ヴィヴィオ編もあればはやて&ヴィータ(あるいは守護騎士一同ほか)編もある。 とりあえず、長編がそれだけで少し止まりそうな予感なので、人数は3人に限定。 もし、3人目まで書いてバレンタインデーを過ぎていなければ幻の4人目もあるかも。 で、なんで最初にフェイトさんか、というと…… 某所への投稿用として書いていたものです(ここで公開するな ところが、自分の妄想変異に伴って別のものを、ということで超えてしまっていてなんですが、だいぶ遅れます(その方が読んでいただいているかは分かりませんがここで告げております) 2月は色々と忙しいんです!(見苦しい弁明w)というか、忙しくない時期があるのか、という問題にもなりますけどね。 というわけで、チョコレート・パニックシリーズとするべきでしょうが、カテゴリは普通にユノフェイです。 シリーズといっても、それぞれのお話に関係性はまったくない、無差別な話。 それでは、チョコレート・パニック!? フェイト&キャロ編どうぞー^^ 追伸 拍手に応じて微妙に修正。 ただし、現在の修正は暫定。又変更する可能性もあります。
機動六課も解散まで後一ヶ月ちょっと、といえるぐらいには時も経った2月中旬。 フェイト・T・ハラオウンは、やけに騒がしい六課の廊下を歩いていた。
ちょうど時間はお昼過ぎで、今日はフェイトの親友であるなのはが有給を使った、とかで 前線メンバーも午後は休暇になっている。 ちなみにフェイトが最初にそれを聞いたときには、まずなのはの体調が思わしくないのか、となのはのところに行ってそういうわけじゃない、と聞き―― なのはの方は少し苦笑していて、自分が心配性なのかな、と思うところではあったが……
その後、今度は午後は空いているからと言ってはやての方へ、代わりに私が練習をしようか、と聞きに行ってやんわりと拒否をされ、今はキャロになぜか呼ばれてキャロの部屋に向かっている最中だった。
――にしても、はやての多分に意味を含んでいそうな笑みが気になる。 いったい、この時期に何があったかな、と地球に長く住んでいるものの、基本的にはミッドチルダの人間であるフェイトはさっぱりだった。加えて、時間感覚も曖昧だ。この手の仕事の悲しいところだろう。
廊下を歩いているときも、そこそこ六課の職員がいつもに比べて騒がしかった。 仕事はちゃんとやっている辺りが、六課のエキスパートな実力ゆえなのだが、仕事に集中して欲しいところだ。
そういえば、はやてを含めて今日は会う人がほとんど騒がしいというか、落ち着きがなかった。 なぜだろうと不思議な気がしながらもそれが分からないところは、天然の気を感じさせるフェイトだった。
そんな風にさっぱり分からないですごしていたフェイトを後にはやてはこう称している。 『なんというか、誰か好きな人がいれば気づけるんやろうけど、特にそんな人、フェイトちゃんにはおれへんからか、まったくその手の話すらできへんフェイトちゃんやからまあ、仕方ないと思っとったわ』
そう、今日は2月14日。 地球の日本では騒ぐ人も多いのに、はるか離れたミッドチルダ。 まったく、そのことに気づいていないフェイトさんだった。
キャロの部屋の前、なぜかキャロは部屋の中にいれば良いのに、そこで周りを気にしている様子であたりをちらほらと警戒していたが、フェイトを見つけたためか、にっこりと微笑みを振りまく。 純粋なキャロらしくて、そういう仕草がフェイトも大好きであって。 そんな中、フェイトを見つけたキャロは慌ててフェイトの方に走ってくる。
「あ、フェイトさん!そ、その……待ってました!」
「うん。キャロ、いきなり走ってどうしたの?私に用って?それにその服装は……」
キャロの今の服装を端的に言えば、エプロン姿だった。 キャロの髪と今来ている私服にあわせてフェイトが買ってあげた桃色のエプロンだ。 エプロンを着ている、ということは、さすがにフェイトにも何をしていたのか、は安易に想像が出来る。
「えっと、それはその……」
「とりあえず、キャロのお部屋の中できこっか? ここだと、色々とキャロも目立っちゃうし」
「は、はい!フェイトさん!」
健気に返事をしてペコペコと頭を下げるキャロ。 そんな行動でも可愛く見えるのは自分が親バカだからかな、と自覚を含んだ笑みをポロッと出す。 まあ、可愛いのは間違いない。ただし、それを見ているフェイトも含めて絵になっているのだ。
そのままキャロに案内されるままに部屋の中に入るフェイト。 個人用の部屋は六課では恵まれているほうで、特にキャロのいる部屋は保安上の問題からも仕官クラスのものが宛がわれている。六課庁舎がそこそこに大きく、部屋数が意外と余っていることもある。
そんな一室はキッチンも備え付けられている。それだけならフェイトとなのはの部屋や、スバルとティアナの部屋もそうなのだが、ちゃんとキャロに扱いやすいようにフェイトが調整台を置いてあったりと配慮がされている。
と、そのキッチンは今、綺麗好きに見えるキャロとは裏腹に相当雑多に……戦場となっていた。 材料は色々と何の法則もなく置いてあり、道具もボールやなにやらがバラバラに置いてある。 ただ、唯一いえば、まだ材料と道具が雑多にあるだけで何も料理はしていない様子だ。
「えっと、これは……?」
「あの、どうしても……その『チョコレート』っていうのが分からなくて……」
「へっ?」
目の前にいて左右の手先をくにょくにょと交差させて困った風にしているキャロがいった言葉は一瞬、意味がさっぱり分からなかった。
――チョコレート?なんでいきなり?そういえば……
ミッドチルダに地球で言うチョコレートなんていう食べ物は原則無い。 原則、というのもその手の製品は多少なりとも似たようなものがどの世界にもあるからだ。だが、具体的にチョコレートというものはない。理由は簡単、カカオの実がミッドでは取れないから。 ただし、チョコレートという名前のお菓子はある。もっとも、地球のチョコレートとは微妙に違うし、キャロの場合幼年期の問題もあって、お菓子自身あまり食べていないこともある。 それに、キャロがチョコレートをわざわざ聞いてきたのも不思議で……答える云々よりそれが疑問でクエスチョンマークを浮かべてしまうフェイト。 それをピピッと感じたのか、それともただ言おうと思っていたのか、キャロは続けた。
「今日、なのはさんが午前の訓練が終わった後で、今日はバレンタインデー?という行事で、午後はチョコレートとかいう食べ物を作って知り合いに渡すと聞いて、その後八神部隊長が後ろから『好きな人にチョコレートを女の子から男の子に渡す日でもあるんやで?』といわれて、その……」
「ああ、そういえば今日2月14日だったっけ。だから、なのはもはやても変にテンションが高かったんだ」
ああ、とバッチリ納得といった感じでおもむろに頷くフェイト。 っと、忘れてたからどうしようか、とも思うが、自分は二人に比べると料理も必要最低限ほとんどしなかったので基本的なことは出来るが、それ以外はお世辞にも上手い、とはいえない。下手でもないのだが……
なのははもともとお菓子屋さんの子供だけあって、その手の料理には定評がある。 はやてははやてで、伊達に長い間料理を作り続けただけはあって、お菓子料理も腕が立つらしい。 その二人は、きっと今頃事前に下準備しておいた材料を使って作っているのだろう。
そんな二人と比べると自分は明らかにそっちの方では劣っているだろう。間違いなく。
「それで、私も作ろうと思ったんですが、そのチョコレートっていうのも、よく分からなくて…… フェイトさんなら知ってると思って、ごめんなさい。忙しかったですよね?」
「ううん。そんなことないよ。別に今日は暇だったかな? で、あげる人って……エリオ?」
「えっ!?そ、その……はい」
恥ずかしそうに、さっきよりも手先を絡めてぼそぼそするキャロ。 本当に恥ずかしいのだろう、さっきのことと言い、それがパートナーとしてかどっちかは分からないが。
とりあえず、今ある材料を見る。カカオを使った本格的なものは今からじゃ間に合わないし フェイトもあまり本格的なものは苦手だ。
「うーん。今からじゃ本格的なのは無理だから……」
そういえば自分の部屋に母さんから送られてきた板チョコがたくさん残っていたことを思い出す。 甘いもの好きのリンディ母さんから送られてきたときにはどうしようか困ったものだが、この際だから使わせてもらうことにしよう。
「それなら、ちょっと待ってて。私もキャロと一緒に作るから」
「ほへ?あ、はい!」
素直に返事をして自分の部屋に戻るフェイトを見送るキャロだった。真面目で純粋、というフェイトの評価……というか印象はそのまま確かにキャロそのものだった。ただし、ここだけは注記するべきだろう。
「でも、なんで私がエリオ君に上げるってわかったんだろう?」
親に子は似る。 キャロもフェイトに負けず劣らずの天然気が入った少女だということを。
―――――――――――――――
キャロの部屋のキッチン。 戻ってきたフェイトは、板チョコと同時に持ってきた黄色のエプロンに身を纏う。 最後に使ったのはいつだったか、思い出すのにも苦労するぐらいこの頃は使っていないエプロンだ。
「なんだか、フェイトさんと一緒にお料理って初めてで楽しみです!」
「そういえばそうだね。今より小さいときは色々とキャロはおっちょこちょいで危なかったから」
「フェ、フェイトさん!?」
そんなこと、な、ないです!と必死に首を左右に振って訴えるキャロ。 でも、実際に小さいころは今よりもぼっとしている無害な子だっただけに、自分でも自覚しているのか必死なのにもかかわらずその拒否の姿勢には一歩弱腰だった。 それもまた、フェイトにとっては微笑ましいのだが。
「さてと、それじゃあ始めようか。今回のは時間もないし、簡単なのになるけど、いいかな?」
「はい!むしろ、フェイトさんにご迷惑をかけちゃって……」
「いいよいいよ。私もせっかくだから一緒に作るから」
自分が作ったところで渡す人なんてほとんどなのはとはやてたちぐらいだけど、と自分の胸のうちに突っ込んでおく。それ以外にあげる人なんていないし、いれば今頃必死に作っているところだ。 それがなんとなく悲しいところでもあるのだけど。
そう、自分にはそれと言って好きな人がいない。なのはもはやてもその意味では同じなのだが なのはは、人が優しすぎるのできっと六課の男性職員全員に上げるだろうし、それははやても同じ。部隊長として、といってそれこそ六課職員全員に上げそうだ。
それに比べて自分は、二人と比べるとはるかに劣る料理の腕でもあって あまり進んで、誰かに上げる、という行為は億劫になってしまう。
つまりは……フェイトは恥ずかしいのだ。自分の作ったものが、と思って。
それでも、キャロと一緒に作ろうと思ったのは、なのはたちが忙しいこともあるし、キャロに教えてあげるのが自分ぐらいしかいないし、なのはとはやての分ぐらいならいいかな、と思ったことからだ。
「それじゃあ、簡単な生チョコね。時間もないし、冷やす作業は魔法を使ってどうにかすればいいから」
「は、はい!それで最初は何をすればいいですか?」
「そうだね、それじゃあこのチョコレートを細かく刻んでくれるかな?」
台所といってもそれなりの広さを持ったシステムキッチン。台に乗ってキャロはしっかりとまな板の上に板チョコを置く。包丁をちゃんと持って、と危なくないかキョロキョロと確認。
――よし、大丈夫……!
ゆっくりと力を入れて……と、キャロが力を入れると後ろから二つの手がキャロの手を掴む。
「ふぇ、フェイトさん?」
「もうちょっとちゃんと持たないと、こういうのは危険だよ。ほら、こうやって……」
思いっきり危なっかしい手つきで包丁を持っているのでさすがのフェイトもフォローをする。 そういえば、自分がやったときも最初はそんな感じに包丁の持ち方も分からないでリニスに色々といわれたっけ、と過去の思い出を少しだけど心の中に浮かんでくる。
逆にキャロはフェイトの手先がキャロの手の甲の触れていて、なんだかとっても恥ずかしそうで。
――ココロの外がなでられるような変な気分。 ――それが何か分からないが、いやな気分どころか、とっても嬉しい。 ――フェイトさんの手って暖かくて優しいなぁ、と思えるほどで。ココロがなでられて嬉しがっているみたい……
キャロがそんな風に感じていることも知らずに フェイトがキャロに見本を見せるように手を持ったまま試しに切る。 納得しているようにうなずいているキャロを見ると やっぱり女の子かな、と思えることがフェイトには実に嬉しい。
フェイトの言うとおりに持ち方をして、フェイトが言うように手と包丁を置いてゆっくり包丁を板チョコの上に置く。 すると、思いのほか簡単に板チョコは切れた。 本来はそこそこ力も必要な作業だったりするのだが、こと訓練で基礎体力がついているせいか、そこまで苦労しないで板チョコを刻むキャロ。横ではそれを見て一安心したフェイトが別の板チョコを取り出す。
こっちはフェイトが個人的に買っていたビターな板チョコ。なお、キャロのは言うまでも無くミルクチョコだ。 リンディ母さんがあれだと……というのは兄のクロノと同じく、フェイトも甘いのは好きではない。 なのはたちにあげる物として作っているけど、二人も十分にこの手の味も大丈夫なので問題ない。
トントンッと、一定のリズムでドンドンフェイトは自分の分の板チョコ、といっても3つだが、を刻んで行く。
キャロもそれを見てがんばらないと、と自分の板チョコを切っていく。
「これで、最後だね。キャロ」
「はい!」
最後の板チョコも切り刻んで、ふうぅ、とキャロも一息。意外とあの板チョコを細かく刻むのも別の意味で大変なのだ。切れても、細かくするとなると神経も使う。フェイトも見る限りには平気そうだったが、細かいことをしただけあって、少し大変だったかな、と。 まあ、フェイトもキャロも綺麗に板チョコを切り刻んでいるところを見る限りに几帳面らしい。
「それじゃあ次の段階だね。この容器に切ったチョコを入れて。簡単に溶かすためにレンジで温めるから」
「わかりました。えっと、これをっと……」
フェイトとキャロがそれぞれ別の耐熱ボールにチョコを入れる。 それを確認してからフェイトは手元の生クリームをキャロに渡す。何だろう?、と渡された生クリームをおずおずと眺めるキャロだったが、もちろんチョコレートすらないミッドチルダなのだから何に使うのかな、と興味津々ながらもおそるおそる、という感じもある様子だ。
「それをそのボールの中に入れてくれる?」
「入れればいいんですよね、えっと……これでいいですか?」
手元にあったスプーンでカップに入っていた生クリームを耐熱ボールの中に入れる。 後は電子レンジで一分加熱をすれば、そこにはある程度溶けているチョコレートだ。切り刻んだのもこのため。
これで後は、とキャロが思っている矢先にフェイトが台所からなにやらよく分からないものを取り出した。 ぐるぐると渦巻状になっている調理道具みたいで、それをフェイトはキャロの手元に持ってくる。
「それじゃあ、今度はそれをこの泡立て器を使って完全に溶かしてね」
「かき混ぜるんですか?その、それで?」
「うん。ちゃんと解けないと次の段階で色々と困っちゃうから。コアントローっていう隠し味も入れるんだよ?」
手元からフェイトが取り出した小さ目の容器。それが隠し味。 フェイトもまさかそれがここにあるとは思ってなかったが、どうやらなのはが色々とヴィヴィオのためにお菓子を作るときにもって来ていたらしい。さっき自分の部屋から出るときに借りておいたのだ。
「それじゃあ、がんばって溶かしきろうか、キャロ?」
「はい!がんばって溶かしきります!」
何事も前向きなのは大切だ。キャロも意気込みがヒシヒシと伝わってくる。 よしっ!と、がんばって数分間ずっとかき混ぜる。もともと大体溶けているが、混ぜないと味の均一っていうのもある。キャロが一緒にがんばってかき混ぜる様子を眺めてフェイトも何だか嬉しくなってくる。 こうやって、二人で何かすること、六課に来てからほとんど出来なかったことを思い出すとなおのこと。 もうちょっとキャロとエリオの保護責任者といして、何より親、として自分もやれることをしてあげたいなぁ、と思えるぐらいに今のキャロは楽しそうで。もっと楽しいことを、と思いたくなるのだ。
さてと、溶かしきると、次の段階。 フェイトはオーブンシートを用意して、キャロはその下の容器となるバットを探す。バットというのは四角形の箱みたいな容器のことだ。えっと、確か……と色々なところを探すが見当たらない。 どこだろう、フェイトさんが用意してくれているのに、と心配は増える一方で 何とか……台所の奥でそれに似た四角形の箱を見付けて持ってきて洗って台の上に置く。
「ありがとうキャロ。ちゃんと持ってきてくれて」
「フェイトさんがちゃんと形とか教えてくれたからですよ!そうじゃないと、私多分、分からなくて……」
「ううん。私が最初に作ったときももっと探すの時間かかったから。キャロは私より凄いよ、きっと」
「フェイトさんが、ですか?」
「私だって、最初から作れたわけじゃないからね。なのはに助けてもらって作ったのが最初かな?」
あの時は中々バットが見つからなくて困った記憶があって 結局そのときはなのはに手伝ってもらって出したからキャロの方が凄いよ、とフェイト。
そういわれると照れるのはキャロのほうで、言葉に出来ない嬉しさが体を駆け巡った。
――フェイトさんにそういわれると、やっぱり恥ずかしい気分……なのかな?
フェイトの笑みを見つめてしまって、余計にそんな風に考えてしまったりしているキャロ。 そんなキャロによく分かっていない様子のフェイトはあくまでも笑顔だった。
バットにオーブンシートを引いて、そこにチョコを流し入れる。あとは普通なら半日から一日ほど冷蔵庫で冷やすんだよ、とフェイトに説明されて、ほへぇ……と関心の様子だ。 勉強好きなところもキャロらしいかな、とキャロの一つの行動にも何かしら面白い発見があるフェイトは楽しかった。キャロと一緒に作ってることが楽しいのだ。さっきから戸惑ったようなキャロやがんばっているキャロを見て、それはもっと強く感じて。
魔法でそのチョコを一瞬で半日分時間経過させる。 時間を動かした、というよりも単に固めた、といった感じで。
それを見てキャロが凄く驚いている様子だった。 一瞬で固まるチョコは魔法のおかげ、とは分かっていても面白いもの。
包丁で綺麗に切って、その上にココアパウダーをかけて さらには切った生チョコにパウダーをもう一度かけて完全に均一にするまでそれを続ける。 フェイトもキャロも真剣にその動作をして、作り始めてからさほど時間がたったわけでもないが 十分にそれは完成、といえるぐらいに出来上がっていた。
「これで完成。ほら、一口試食してみて。どんな味か、確認するのも大切だよ?」
「えっと、それじゃあいただきます……美味しいです!フェイトさん!」
キャロの笑みがそれを物語っている。それ以外で美味しそうな表現がないというほどに嬉しそうな表情。 屈託の無い笑みは、本当に美味しいことを訴えかけてくる。それぐらいの笑みだった。
「私も自分のを……ちょうどいいかな?」
フェイトも自分の作った生チョコを食べる。 甘みはほとんど無い。ビターチョコにしたのでそれはそうなのだが、それだけに味わい深い味だ。 とっても、味が深い。 そんな感じで味わっているとキャロも食べていた一口サイズを食べ切って 『どうしましょう?』と言いたげの様子だ。
明らかにエリオ君に渡さないと、と慌てている様子もやっぱり微笑ましい感じだ。 なら、ここはと自分も作ったのを、と箱を二つ取り出す。
「それじゃあ、時間もあれだから、今からエリオにそれ渡してこようか? はい、そのための箱も持ってきてあげたから。それをこれに入れて」
自分は、上げる人いないから、と。 そう、フェイトにはあげる人がいない。そしてキャロにはいる。だから。
「その、フェイトさんありがとうございました!また、その機会があったらお願いしますね!」
「大丈夫、無くても私から誘うよ。キャロと作っていて面白かったし」
家族って言うのは、あるいはこんなことをするのかな、と思ったりして。 実際にフェイトは嬉しかったから。キャロもそれは同じで、満面の笑みのまま、箱にそれらを詰めると急いでエリオのもとに向かった。大切な彼の元に。
「……でも、やっぱり気になるかな?」
追うのは悪いかな、と思いつつも、エリオも家族だから、と気になって後ろを追うフェイトだった。 お菓子を残っていたもう一つの箱に適当に詰めて。
――――――――――――――
エリオはその日、午後からの休暇を自主練習に費やしていた。 守りたい人を守る、それがエリオの目標であり、願いだから。
ちょうど、それもある程度区切りがついて、部屋に戻ろうと六課庁舎のエントランスホール前まで歩いてきたときだった。ホールの中から桃色の髪をした……キャロが走ってくるのを見つけたのは。
「どうしたんだろ、キャロ?」
急ぎの用でもあるのかな、となぜキャロが走ってくるかを考えているうちにキャロがエリオの前まで到着する。 私服のキャロをみて一瞬、ドキッとしてしまうのはエリオも無意識のうちだ。
「そ、その……」
しどろもどろになりつつも、恥ずかしそうにキャロはえいッ!と箱をエリオの前に出す。 出されたほうのエリオはもうさっぱりだ。いきなりキャロが走ってきて箱?といった感じで完全に慌てている。
「えっと、その……これは?」
「あの、えっとだから……今日はバレンタインデーっていうらしくて、それでチョコレートっていうのを大切な人にあげるっていう話を聞いて、フェイトさんと一緒に……エリオ君の為だけに作ったの」
一瞬、自分の為に、というフレーズにエリオの頭の中が真っ白になる。 ――キャロが僕のためだけに?
「……えっと……僕の為に?」
なんで、聞き返しているんだ!?と内心は墓穴を掘ったと後悔する、だけどやっぱり返事は変わらず。
「……うん」
胸の中に湧き上がってくる気持ちに戸惑いを隠せない、けどキャロは恥ずかしそうながらも自分にその箱を前にずっと、ずっと出し続けていて。
キャロのはるか後ろの方、エントランスホール内で隠れている様子のフェイトがこっちを見てくる。 ――隠れていても、それじゃあバレバレですよ、フェイトさん……エプロン姿って…… その服装のままのフェイトと、目の前で期待と不安の目をしているキャロ。 不釣合いにエリオには見えたが気にしちゃったらだめなんだろうなと理解する。いや、うん。
何より、なぜか、エリオには受け取るんだよ、というフェイトの声を念話でもないのに聞こえた気がした。
いや、聞こえようが聞こえなかろうが関係ない。だって。
心配で手が震えていたキャロの手にエリオの自主練習もあって、汗が残っている手が当たる。 フェイトとはまた違った感触に驚いて、キャロが今までうつむいていた顔を再びあげると
――エリオ、君。
キャロの目の前でエリオはその箱を受け取ろうとして、キャロの手と触れていた。 えええっ!?と、途端に真っ赤に頬をして慌てるキャロに動じないでエリオは微笑む。
「ありがとう、キャロ。その……ちゃんと食べさせてもらうね」
「う、うん。その、ここで食べてくれると嬉しいかな……?」
「そうなんだ、それじゃあ……えっと開けて……」
ゆっくりと箱を開けて中身を見る。確かに手作りという感じの美味しそうなお菓子、だった。 エリオが横についていた小さいフォークを使って一つ刺してみて、そのまま口に運ぶ。 キャロの心臓がバクッバクッと鼓動を大きく立てる。エリオ君に聞こえていないかな、と心配するほどに。
「……とっても、美味しいよ。キャロ。うん、美味しい」
「そ、そうかな……?そう言ってくれると、嬉しいな」
お世辞じゃないことは、エリオのにんわかと笑うを見て確信に変わった。 二人とも、本当に嬉しそうに、周りから見れば微笑ましい風にキャロの生チョコを口に運ぶエリオ。 一つのパートナーとしては、本当に理想的な感じだ。 エリオもキャロも、本当に。
ここに一つの聖ヴァレンタインの加護、があったのかないのか。 とにかく、二人とも本当に幸せそうだった。
キャロからエリオに渡す前に何度も御礼をされたフェイトは、結局自分が作った生チョコを一応箱に入れていた。そのまま、キャロの後を追いかけて二人と嬉しそうな雰囲気を見れば、成功したことも分かって一安心。 ここまでエプロンで来てしまったので、意外とフェイトも恥ずかしい。 誰かに見入られでもしたらどうしようか、と内心では色々と心の中が慌しかったりもする。
そもそも、フェイトはバレンタインのチョコすら恥ずかしくて親友三人組以外には家族ぐらいにしか(しかもそれですらクロノにはあげられていない)あげたことが無いぐらいだ。
とにかく、まだ蓋もしていない載せただけの生チョコを早くはやてとなのはに、と思った矢先だった。
「ほいっと、うん。この甘さの無さが絶妙でとっても美味しいね、フェイト」
「へっ……? ユ、ユーノ!?なんでここに!?というか、今、私の食べたでしょう!?」
本来は本局の無限書庫勤務、のはずのユーノ・スクライアが自分の後ろでいきなり現れて自分の箱に入れていた生チョコを一つとって食べたのだった。いきなりのことで若干困惑しつつも、なぜかユーノに美味しいといわれてドキッとしてしまった自分がいることに気づく。なぜか、は分からないけど。
「いやね、アコース査察官に誘われてね。今日はチョコレートの日だそうですよ、って。 それで六課に来てなのはとはやてが作ったチョコを食べたんだけど、甘いのが苦手になってたみたいでね」
基本的になのはは、ヴィヴィオにあわせたチョコを、はやてもヴィータあたりにあわせたチョコを多く作っていたのだろう、甘いものばかりで、ユーノの口には合わなかったらしい。それでも、いくつか食べたらしいが。
「でも、食べないとなのはやはやてが怒らなかった?」
「そこら辺は、変に食い意地の張ってるアコース査察官と、ええとヘリパイロットの……ヴァイスさんががんばってたよ。大人気ないような気がしないでもないけどね」
アコース査察官とヴァイス陸曹がチョコを食べている様子が容易に想像つくフェイト。 あの二人なら、まず間違いなく食べるだろうし、確かに在庫が残る、ということはなさそうだ。
「それで、フェイトが見つからなかったからこっちにきたら、キャロちゃんだっけ?とその後ろを片手にお菓子入りの箱を持っている不審人物がね……まあ、そういうことだったんだね。あの子、エリオ君のために作ってたんだ」
「うん。私と二人で作って、ってまた一つ!」
「あはは、この味はいいね。本当に美味しいよ、フェイト」
「そういわれると何も言えないじゃない…… でも、本当にそれ美味しい?」
気になるところだ。基本的にビターなので、苦味があって当然なのだ。 だけど、そんなことをまったく気にしない様子でユーノはにこにこと頷く。
「そりゃ、美味しくないものは追加で食べないよ。ただでさえフェイトが怒るのに」
「……なんだか、からかわれている気がする」
「うーん。どうなんだろ?、このお菓子には紅茶が欲しいって感じが」
「なら、私の部屋に新しい紅茶があるけど、飲む?」
いつものユーノよりも話に突っ込んできたり、紅茶と要求が多いことだ。 でも、それも悪くないかな、と思うのは単に相手がいないことだけだろうか、フェイトにはまだ分からなかったけど。ただ、ユーノと紅茶飲んで話すのも悪くないかな、と思うとそう口が先行して言っていた。 それを聞いてちょっと驚いた様子を見せたユーノだったが、すぐに落ちついて。
「それじゃあ、紅茶でももらおうかな?」
「うん。なら、一緒に話そうよ、ユーノ。せっかくだから」
こっちにも、ヴァレンタインの加護?かもしれない。 フェイト自身、こういうのも良いなぁ、と思えたから。
「でも、君のエプロン姿って……新鮮だね?」
「!?!?そ、その……ほかの皆には内緒だからね!?」
……まだまだ、道は長そうだ。うん。 後書き 最後にユノフェイな展開なために、カテゴリーはユノフェイ。 でも、実際にはエリキャロに属させるべき気がしないでもない。さあ、どうするべきか(ぁ バレンタイン・シリーズ第一弾。同時並行で書いてる第三話は今週中にあげられると楽観視しております いや、最初はコミックエピソード2になぞって書いていたのを、いやこれだとオリジナリティが少なすぎる! ということで、視点と場所などを色々と変えて書き直ししているのでどーしても、ねぇ。 バレンタイン・シリーズは最初に書いたとおりに現存短編との話のつながりが無いので、フェイトさんとユーノの関係は完全にお友達。というか、フェイトさんとはやてさん&なのはさん、だとどうしても見劣りしてフェイトさんはあまりバレンタインは好きじゃないんじゃないかな、と思ったのが第一弾。 あえていえば、&恥ずかしがりやさん。うーん、もう精進したいところです。フェイトさんの母親面と一人の少女としての面を一度に書くとなると無理があるようで。まあ、母親としての母性と少女としての思いは対立に近い関係ともいえますし。フェイトにとってのチョコレート・パニックはキャロがエリオ君に、と言い出したことなのか、それともユーノに食べられてしまったことなのか。 ……いや、リンディさんから大量に送られてきた甘いチョコレートたちかもしれませんが(ぁ 最初は、フェイトとキャロが作っていたチョコのところがだいぶ省略されていましたが、せっかくなので本当に簡単な生チョコの作り方に沿って書いてみることに。 結果は、私が生チョコ作りたくなった(ぉぃ 作るチョコも最初は考えて、フェイトさんが最初にあまりできない、という設定にしたので、簡単な、なわけです。 実際にここまで簡単だとどうなんだろう、とも思いましたが。 前、エリキャロっぽいのを書いたときはエリオ主観だったので、こっちはキャロに比重を置いてみたり。 まあ、どっちも物あげイベントとよくあるパターンなわけですがw それと、今回は自分で推敲&推敲をほかの人にしてもらったりと、文章のミスは無いはず。 まあ、まだまだバレンタイン違うよ、というのは、上のとおりにバレンタインまでにSSを3つ公開する、のを目標としているからです。どうなるか、実際には分かりませんけど。 それでは、コメント返答ー^^