[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
さて、今回はそのままなシリーズSSの最初の一つを投下ーー 雰囲気のために、三人称でフェイト中心という書き方になってます。 というか、今回もなんか相当無茶した感じがありますが、その部分は最初のうちに謝ります… 文の量が少ないですけど、これは補う可能性もありますのでご勘弁を!(ぁ
書類に使われているA4用紙の厚さはだいたい0.1ミリ程度らしい。 なるほど、「書類の山」という比喩を正直に受け止めると、数百枚は書類がたまっているのを「書類の山」というのだろう。
となれば、今ここで書類の山を作り出している人は、作り出せるだけの書類を采配しない権利と同時に それだけの書類をためてしまうほど、仕事が滞っているということなわけで…
時空管理局 古代遺失物管理部 機動六課 法務官室。
普通なら、ここにいる彼女は、それこそ彼女の別名「電荷の閃光」のように仕事に関してはテキパキとすぐに終わらせるのだが、たまってる仕事は進まず、何か遠くを見てるかのように彼女は呆然としていた。
彼女の愛機であり、閃光の戦斧の二つ名を持つインテリジェントデバイス「バルディッシュ・アサルト」も、その彼女の状態に些か疑問を持たずにはいられなかった。 寡黙なデバイスなどと思われている彼だが、彼女がまだリニスといられたことからの関係だ。 だが、そんな彼でも今の彼女の状態は、初めてのことだった。
そう、そんな彼女の名前は「フェイト・T・ハラオウン」と言った。
01 気が付くといつも
――気が付くといつも、あの人のことを考えている……
ふと、書類に目を通しながら時々呆然とすらしていた彼女はそう感じて。 もう今日何度目だろうか、ここ数日まったく彼女は仕事に力が入らないでそんなことばかり考えていた。
今までそんなこと無かったのに。
それはフェイトが自分の気持ちに気づいてしまったからか。 それとも、それよりも早くその人を思ってしまったときからか。
そして、一度その人のことを考えてしまうと、もう仕事なんてやってられない気分になってしまうのだ。 自分でもどうすれば良いのかわからない。 一度思い出すともう考えは止まらず、ただ思っているだけなのに、そう実際、何かあったわけでも無いのに考えだけは堂々巡りの空回り。 なら、最初から考えなければいいじゃないか、と言われてもそんなことはできなかった。
「……バカみたいだ……」
書類はもう山と言えるほどの束となり、それが自分がどれだけ深い思想の海に浸かっていたかを物語っていて。 ……とても自分がバカに見えて、いつの間にか声に出していた。 理由は簡単。堂々巡りの空回りなんてしなくても理由は分かっていた。
彼女は……そう、たった一人の人のことをずっと考えて続けてしまったのだ。 恩人に近い彼……時空管理局無限書庫司書長ユーノ・スクライアを。
仕事は手に付かない。もう、さっぱりだ。 こんなこと前にも後にも多分無いだろうと思うほど自分は心は変だった。
こんなことは、10年前になのはと真剣勝負する前後の心にも似ているけど、それとはまた違った、変な心。 まるで、ユーノ以外を考えるのが嫌で、ユーノのことを考えていると楽しいような自分の心に。
それは、堂々巡りの空回りなどしなくても分かる結論。
「私……ユーノのこと、好きなのかな?」
言うだけ言ってみて、その言葉の意味でフェイト自身が照れてしまう。 あの人のことばかり考えて。自分らしくないといえばそうだ。自分はもっと仕事も私事もこなせる自覚がある。 でも、実際にはこの有様…… どうすればいいのか、バルディッシュはこんなときでも何も言わない。寡黙なデバイスだけど、こういうときぐらいは相談に乗ってくれてもいいのに、などと思っても実際にバルディッシュも恋問題を言われては困り果てるだろうし、きっと前代未聞だろう。 デバイスの恋を語るなんて。
自分でも、おかしいと思う、好きなのか何なのかすら曖昧なその心だけど、でもやっぱり……
「今日、ユーノは……そうだった。エリオと一緒に書庫整理してるんだったっけ。 ……保護者として、見に行かないといけないよね。うん。」
そう自分に言い聞かせて、移動用のコート一式を取って、机においていたバルディッシュも手元にとって。 彼女は無限書庫のある本局に転移魔法で向かった。 よくわからない、その思いから。いつの間にか自分の行動すら支配し始めた、その思いから。
――
フェイトが無限書庫にたどり着いた時、ちょうどユーノとエリオは休憩に入っていた。 ユーノもエリオも、一段落後の休憩のようでフェイトはちょうど良いときに来れたようだった。
なにより、今までのむやむやしていた気持ちは どこかに消えていてフェイト自身とても嬉しい気分になっていたから。 ちゃんとここに来る途中でケーキも買って準備は万全だったのはいうまでもない。
「エリオ、ユーノ仕事は捗ってる?」
「あれ、フェイトさん。どうしたんですか?」
「うん。エリオのことも気になったし……ユーノも無茶してないかなって思ってね」
「あはは……エリオが時々手伝ってくれるおかげで仕事は捗ってるよ。 話し相手もいると疲れもあまり気にしないでできるから。心配しないでも大丈夫なのに、フェイトも気にしすぎだよ?」
特にこの頃はほぼ毎日仕事で無茶して無いか問い詰めているフェイトは何もいえなかった。 そう、本当に自分は最近ユーノのことをずっと気にしていることは間違えないのだから。 さっきは好きなのかな、と思ったが今思うと……目の前の彼が見れなかった。なぜか恥ずかしくて。
「それは……ごめんなさい」
「別に謝らなくていいよ。むしろ……ううん、なんでもない。ところで、フェイトは何をしに? まさか、それだけのために来たわけじゃないよね?」
「あ、うん。エリオの手伝いと差し入れをね」
実際には自分の仕事も満足にできてないけど。それでも、今日ぐらいはそれでもいいと思う。 フェイトにしては思いっきり自分に甘い考えだった。 ただ、エリオを手伝いたいのも事実。彼が望んだとはいえ、こういう仕事をさせてるのは確かなのだから。
「ありがとうございます、フェイトさん。でも、僕もちゃんとできますので……」
「でも、手伝ってくれるならちゃんと手伝ってもらった方がいいと思うよ。 偶には甘えてもさ。ねっ、フェイト?」
「そうだよエリオ。私に頼ってくれてもいいと思うよ?」
思い出せば、自分にエリオは頼ってくることなど滅多に無い。というか無い。 そういうところでも、ユーノも滅多に自分やなのはたちを頼ることは無い。どっちも似たもの同士なのかもしれない。 でも、それはきっと自分も。 他人より自分を犠牲にする性格だからこそ。自分の保護するべきものには守りたい思いがあった。
「私はエリオの保護者なんだよ?だから、できれば頼ってほしいと思うんだ」
「あ、はい。そういうなら…お願いします、フェイトさん」
「うん♪」
手伝えて、手伝ってもらえる人がいることも、また幸せなことなのだから。 それが、無償の行為であって、心の絆なのだから。
「さて、休憩時間も終わり。残りの調べ物でもしようか? ああ、フェイトはちょっとここで待ってて」
切が良いところでユーノは、フェイトだけを司書長室に呼んでエリオに探してほしい資料一覧を渡した。 もらったエリオが元気よく資料を探しにある程度無限書庫の中へ向かったのを確認するユーノ。 まるで、エリオが行くのを待っているようにフェイトには見えて……それは間違えなく事実だった。
「ふう。ここ数日間まともに仕事ができないんだって?」
困ったような顔でユーノは言う。そして同時にとても心配そうな感じで。 ほとんどユーノが見せないその顔……心配で心配で…それでいて怒っている顔だった。
「そ、それは……」
いえるはずが無い。まさか「あなたのこと考えてました」なんて。 もう、どう繕おうかと慌てるが、どうしようもない。事実以外のことなんてない。
「言えないならそれでもいいよ。個人的なことかもしれないし。 僕はそれに口出しして良いとは思わない。でもね、この話を教えてくれたはやてやアルフは心配してるよ?」
「はやてとアルフが?」
両方とも初耳だった。 仕事が捗らなくなって1週間ぐらいだが、それでも一応仕事はこなしていたし、だからこそはやてにはバレてないという自信もあった。 それぐらいには、ちゃんと心配しないように振舞っていたのだから。
「はやてからは「仕事で遅くまで居残る事が多い」って。後、アルフからは「遅くまで魔力行使をしてる」ってね」
「……」
何も言えない。はやてやアルフにも迷惑をかけていたなんて。 しかも、完全に私情で。 と、そこまで言っていったんユーノは話を切っていつもの調子に戻ると別の話を始めた。
「実はさ、昨日ここにクロノが来たんだよ」
「兄さんが?」
「うん。入ってきていきなりアイツ「お前、ここ数日書類の処理が遅い!」って言って怒鳴ってきてね。 そういわれてみれば、確かにいつもより自分の書類の決裁スピード遅かったんだよ。うん、本当にほんのちょっとだけなんだけどね」
安易にその状況が想像できて、フェイトはなんとなく笑えた。とても兄らしい行為だったから。 あの兄は、なぜかユーノとは馬が合わなくて、ことあるたびに言い争っていて、それが普通に見えるぐらいで。 でも、兄とユーノは別に仲が悪いわけではなくて、あれが普通なのだ。 二人とも、文句を言い合える関係。それって親友という一つの例、だと彼女の兄の妻であるエイミィなんかは言っていたぐらいに。
「で、気づいたんだよ。そういえば、この頃みんなと話して無いなぁ…って。 メールとかでは確かにやりとりしてるけど、電話とかはしないから。 なんせあのクロノと話すのさえ、ちょっとした嬉しさを感じてたから、そうとう話せないことがまいってたみたいでさ」
無限書庫。その特異な環境は、仕事場としては管理局最悪といわれている。 そんなところで、毎日仕事ばかりしていたら、確かにどんな人でも参るだろう。 フェイトだって思う。心を開いて話せる人がいないで、毎日仕事していると、自分だってどうにかなりそうなのは目に見えてる。
「だから、エリオ君が手伝いに来てくれて、君が来てくれて、正直嬉しくてね」
本当にユーノの表情も、雰囲気も嬉しそうだった。まるで、母親を見て安心する赤ちゃんのように。ユーノも安らかな安心を得ているようで。
「だからさ、フェイトがそんな風に仕事で止まってると聞いてから会っても 嬉しい反面、やっぱり君には無理をしてほしくない。 なのはやはやてもだけど、君は特に無茶するからね、心内にいつもがまんしてる。 僕なんかが言うことじゃないかもしれないけど、何か話したいことがあるなら僕に話してくれていいからさ」
ユーノだって、仕事で忙しくて、ストレスで気づかないうちに仕事のスピードが落ちてたほどに大変なのにそんなこといってくれて。 とっても嬉しくて……だけど…… そう、だけど。そう言われたら、彼女も思うところができて。
「ありがとう。ユーノ。でも、それは私もユーノも同じだと思うよ?ユーノも色々とストレスたまってるんでしょう?」
「うーん。そう来るかぁ…まあ、気づかずに仕事の処理スピードが落ちてると…正直、僕も参ってると思う。 今は君とエリオ君が来てくれたから、大丈夫だけどね」
そういってくれるユーノの笑顔がやっぱり……好きだった。 ――気が付くといつも…やっぱり、お互いに他人の心配ばかりをし合ってる二人だから。
「……ありがとう。私もユーノに話せて、すっきりしたかも」
「それならよかったよ。でも、やっぱり君は無理するから心配なんだけどね。仕事が滞ってたのもどこか無理してたんじゃない?」
「それは私も同じ。ユーノだってどこか無理してるんでしょう?」
やっぱり同じ。二人とも、同じ穴の狢。他人ばかり心配して、自分を軽く見て。 だからかな、自分がユーノのことばかり気になってたのは。心配で、守りたいと思って。誰よりも。 フェイトには、そう思えるほど自分とユーノが同じように見えて…それで、同時に「一番」と思えたから。
ただ、その後のユーノの言葉に、フェイトは恥ずかしくて穴に入りたくなってしまったが。
「うーん。そういわれると僕も何もいえないというか…なら、こうしようか?毎日、電話で話すってことに。 それなら、僕は君が無理して無いか分かるし、君も心配しないで済むでしょう?」
「ええ!?……あ、えっと……うん、そうだね……」
「………?」
ここで気づかない程度には、ユーノは鈍感だったらしい。 それが嬉しいのか悲しいのか不思議な気分なフェイトではあったが。
「さてと、書庫の仕事を僕たちもしないとね……フェイトもね」
「そうだね。エリオばかりにさせるのも悪いし…」
なお、その仕事は比較的早く終わり、ついでにユーノにいたっては仕事が終わって二人が帰る時に 『はい。フェイトが今日処理するはずだった書類の決裁済み書類。僕が適当に処理しておいたよ』というのは彼の事務に特化した能力にただ驚くばかりだったらしい。 ただ、フェイトを一番驚かしたことは、それではなく、その後のユーノの言葉だった。
「それじゃあ、エリオに約束していた通りに、夕食でも食べに行こうか?僕のおごりでフェイトも一緒に」
事務処理をすべて終わらせ、司書にも定時終了を言い渡して、誰もいない書庫を後にしたユーノがいったのがこの言葉。 当然、エリオもフェイトもその言葉の意味を理解して……特にフェイトは慌てた。やっぱり心の底の思いが。
「え、いいですよ!僕は!」
「え、え…ええっ!? わ、私も!?」
「って、あれぇ…?だ、だめ? 六課のほうの仕事もないはずだけど……? フェイトは…ね♪」
そういわれると、確かにこの後は何も無かった。珍しく夜の訓練も無い日だったから。 そして何より、ユーノは自分やエリオを気遣ってるとフェイトにも分かったから。
「ぼ、僕は……その……やっぱりユーノさんにご馳走してもらうのは悪いというか…」
「エリオ。せっかくだから、ユーノにおごってもらおうか?」
「フェ、フェイトさんも!?」
なぜか、このときフェイトとユーノの笑顔が同種のものにエリオは見えた。 まるで……まるで、子供のなだめる母親と父親のように。 そんな空気が、エリオにはしたから。だから……
「……はい!それなら、甘えさせてもらいます!」
自分は思いっきり甘えてみることにした。それ自体がエリオにとって人生初の思いで… そして、何よりユーノもフェイトも嬉しそうだったから。 ―――気が付くといつもあなたのことを思うから……ただ、今だけはあなたといたい…… 思いを告げなかったけど、それだけは思うフェイトだった……とりあえず、今は。 反省 はい。今回はあとがきじゃなくて反省です(汗 気が付くといつもを二重の意味で使ったけど、分量が絶望的に少ないと思うんだ。 メモ帳で15kb程度だから。多分、後で改訂版だすかも。20kbぐらいにして。 これで満足していないわけじゃなくて、私の心情として20kbで一つという考えがあるのでどーしても少なく見えるんですよ。 とりあえず、今回前半部、フェイトの考えはファウストの台詞を含めました。メフィストフェレスです。 彼の名台詞「何かがあったかのような 堂々巡りの空回り 永遠の無の方がよっぽどましというものだ 」の一部を使ってみました。気が付くのかな、こういうのって。 ユーノをほとんど地の文で表現せずに動かすのって大変なんですね。ほとんどフェイト視点の地の文でした、今回。 ほとんど挑戦作みたいな今回のシリーズ。感想や内容に踏み込んだ意見があればコメントを。 無ければ無いでいいですけどね(ぁ