[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
―0― 穏やかな時が流れる。 ちょっと期待して、大きく躊躇って、勇気を込めて進めて。 そうして得たその日常を。私は大切にしたい。 何よりも大切なあなたと一緒に過ごす時間と世界と人々を。 今、私は幸せだから…… ――――――――――――――― ―1― 布団の中は暖かい……ぐふふぅ……と嬉しそうな笑みで茶髪の女性は布団の中で寝ていた。 横にいる夫の手に抱きついて本当に心から嬉しいらしく、抱きつき具合もきっと夫の方が先に起きたら脱出に苦労するであろうぐらいに強く抱きついて。 「ぐふふぅ……ああん、ダメだよ………」 色こい甘い声の寝言まで出している始末。 この夫婦、俗に言うバカップルであった。いや、もう夫婦なので万年新婚夫婦、と言うほうが正しいのかな? そんな風に思ってしまう人がそこに一人いた。 「………」 若干10歳前後程度だろうか?金色の髪をした少女はただただその夫婦を眺めていた。 一応、寝る部屋は同じで、ベッドが違うのだが……毎日毎日、この二人は飽きないで、と思うところだった。 そして少女が手元に持っているのは青い宝石のようなもの。 その実、父親が彼女の誕生日の時にプレゼントしたもので、見た目は単なる宝石にも見えるが高性能の、この世界でいうところの「デバイス」と呼ばれる魔法をコントロールする重要な精密機器だったりする。 しかも、インテリジェントデバイス、と呼ばれる類の、人工知能を持ったものだ。 もちろん価格は異常に高い。一般的な収入の半年分と言ったところか。 まだ、10歳行くかいかないかな程度の子に与える物では本来ないのだが 彼女の父親……今、目の前で彼女の母親……実はそれなりに力がある女性に抱きつかれているのにも関わらず健やかに寝ている彼は相当稼ぎが高い。平均的な人の数倍以上はおそらくあるだろう。 母親も働いていて、こっちも一般の人に比べればだいぶ稼いでいる。もっとも、二人とも稼ぐために仕事をしているというよりも、自分がしたいから、という理由でやっているのでお金は貯まる一方。 また、彼女の母親もまた、インテリジェントデバイスを持ったのが10歳行かない時期だったこともあってか 彼女の父親は誕生日に特注でしかない、そのインテリジェントデバイスをプレゼントしてくれたのだ。 ……もっとも、その少女もまさかお母さんを起こす時間を見るために毎日このデバイス……エルザスが使われるとは思っても見なかったが。 『3.2.1……マイスター、時間です』 「うん。エルザス、ありがとね……毎日毎日」 『いえ、マイスターのご両親は私のオリジナルが知っているときからこんな時があったそうですから』 彼女の、いやデバイスに男女性別があるのかは知らないが……マイスターである金色の髪の少女としてはこのデバイスは女性だと確信めいたものを感じていた。 このデバイスのオリジナル、とは少女の母親、今そこで寝ている……が持っているものだ。 今日はちょうど定期点検をしており、ここにはいない。 もしいたら、きっと大声で少女の母親を起こそうとしていただろう。実は、デバイスの方がしっかり者なんじゃないかと思うほどだ。 もっとも、それはその少女もであって…… この頃は毎日毎日、母さんが父さんと一緒に寝ていて、少女と一緒に寝ることが少ないのだ。 それが思いっきり少女には不満だった。 『(もっとも、マイスターもあの方と変わらず彼には甘えん坊な気がしますけど)』 「……エルザス、なんだか私の事で変な事思ってない?」 『いえ、何も』 それならいいけど、と少女は早速母親を起こしに掛かる。 方法は非常に簡単だ。まずはエルザスをスタンバイモードから…… 「エルザス、制限モードでセットアップ」 『Sacred Mode limit set up』 服は変わらず、その宝石だけが杖に形状を変える。 聖なる、を意味するセイクリッドモードだが、その光景は一部では「天使の笑みをもった弾劾者」と呼ばれる。 彼女の母が「管理局の白い悪魔」やら「魔王」やら呼ばれていることに比べれば可愛いものだが…… そんな少女の母親の座右の銘を、少女は実行するつもりらしい。 一息入れてゆっくり深呼吸し、空気を吸い込むと……一言。 「じゃあ、行くよ!いつでも全力全開!ラウンドシールド・アタックブレイク!」 と金色の髪の少女……ヴィヴィオ・T・スクライアは一発、気持ちよくぶっ放した。 防御魔法であるラウンドシールドを物理攻撃系に応用した技で、シールドを敵に向かって発射し、命中と同時に爆発すら起こす、という彼女の父親が生み出した補助攻撃系応用魔法だったりする。 うん、彼女疑惑「実に朝の清清しい一撃」だったらしい。 母親の性格にだいぶ影響を受けているようだ。激しく。 ……少女の保護責任者であるフェイト・T・ハラオウンが見たら卒倒しかねないぐらいに。 ――――――――――――――― ―2― 朝から金色の髪の少女、ヴィヴィオにシールドを当てられて同時に爆発まで起こされた母親こと なのは・T・スクライアは、夫であるユーノ・T・スクライアを咄嗟に盾にして難を逃れた。 いや、難はその後だったりするが。 「にゃははぁ……ごめんなさい、ユーノ君」 「そりゃ、僕は君の盾になりたい、とは言ったけど朝からあれはさすがにないと思うんだ」 100%正論だった。一厘たりともユーノの言葉に間違い、などと言うものはなかった。 それだけになのははさらに頭をペコペコと下げる。もっとも、その列にヴィヴィオも含まれているのは納得といえば納得である。 「ヴィヴィオも朝から魔法を使って起こすのはダメだよ?」 「だって、それ以外になのはお母さん、起こせないよ?ずっとお父さんに抱きついて、ちょっとやそっとじゃ起きないんだもん。今日はヴィヴィオ、お弁当欲しいって言ってたのに」 まだ寝ていたのはなのは。それだけにヴィヴィオの横にいたなのはもそれには頭がまったく上がらない。 「それはそうかも。なのはもちゃんと起きないと。娘のお弁当のためなんだから」 「うん。ごめんね、ヴィヴィオ。変わりに今日のお弁当にはお砂糖一杯の卵焼きを…… って、時間があんまりないから、ユーノ君、そろそろこの説教タイムを……」 未だにパジャマのなのはとヴィヴィオはベッドに正座で座っていて、立って痛そうに当たったところを なでているユーノに完全に顔が上がらなかったが、さすがに娘のことは別らしい。 「まったく……レイジングハートがいないと途端にこれとは……」 『私のお姉さまは図らずも、皆さんのお姉さんのようですね』 「エルザスもそう思うなら、もうちょっとヴィヴィオを止めてよ」 『いえ、私はあのなのは教導官のデバイスが姉ですから』 困ったところだけは本当にモデルになったレイジングハート似のデバイスだ、とユーノは作り間違えたかな、と若干の頭痛を伴って溜息をついた。 こういう朝は穏やかとは言い難いが、この家では珍しいことじゃないのだ。 ある意味、一番まともなユーノが一番迷惑を被るわけで、レイジングハートがいないときは特に悪夢だったりする。昔から今まで、ユーノにとっての姉でもあるレイジングハート。 とにかく、今日、ここに彼女はいないわけで。 「ほら、いつまで正座しているのさ、ヴィヴィオのお弁当と僕とヴィヴィオのなのはの分の朝ご飯を作らないと」 「ほ、ほへぇ?! あっ、うん!」 若干気の抜ける返事ではあったが急いで着替え始めるなのは。 ユーノとヴィヴィオは先にダイニングルームに移動。ユーノの方が着替えるのが早いし、何より…… 「なのはって、夫婦だからって着替えるときも何も気にせず着替えるからなぁ……」 何度も肌を重ねても、そういう分別はしっかりするユーノ。 夫婦の間にも節度が必要だと思うところでもあり、またヴィヴィオがいる中でその親友一同から言われる「万年新婚夫婦でバカップル」の自分では、そこでまた理性と知性と本能の三つ巴の争いをしそうであり、それだけでさらに時間を食べてしまう、と判断したらしい。 「なのはお母さん、とっても天然?だもん」 「……ヴィヴィオ、その言葉、どこのはやてから聞いたの?」 「お父さん、なんではやてお姉ちゃんだって毎回分かっちゃうの?」 「まあ……なんとなくだよなんとなく」 本心は、それ以外にヴィヴィオにそんなことを言う知り合いなんていないから、なのだが さすがにはやてに悪い、とはやてのこの手の性格には欠片ほどしか残っていない彼の良心がユーノに訴えかけたようだ。まあ、どっちにしても後ではやてに問わないわけにはいかないけど、とユーノは午前中にでも彼女のオフィスに入ろう、と今日の日程をちょっと変更。 「そういえば、ヴィヴィオ。なんであんな方法で起こしたの? 別に他の方法でもいいと思うんだけど……?フローターフィールド・アタックブレイクでも起こせたでしょ?」 ラウンドシールドの数倍は柔らかいフローターフィールド。 ユーノがヴィヴィオに最初に教えた補助攻撃魔法はこっちの方なのだが……ヴィヴィオはラウンドシールドの方がお気に入りなのが事実。魔力を入れればいれるほど硬く爆発も大きいラウンドシールドは確かに強いが…… 「だって……なのはお母さん。ユーノお父さんを独り占めするんだもん」 「……あはは……あれはねぇ……」 なのはの愛情表現だから、と分かってはいても娘のありがちな訴えにどうするべきか言葉に詰まる。 もともとなのはの愛情表現が直線過ぎることもあって、ヴィヴィオがなのはにやきもちを焼いたり(父親を独占する母親に対して)、逆にヴィヴィオになのはがやきもちを焼いたり、と。 人気で、両方に好かれるのは嬉しいが、これはこれでユーノも困っていた。 どうするべきか、ヴィヴィオが自分に言ってくる、ということは彼の経験上相当不満らしい。 早々に手を打たないと、なのはとヴィヴィオが地上最大の親子喧嘩を起こしかねない。 うーん、仕方ないかぁ……と今日の夕方に予定していた管理局の社交音楽会への参加を心の中で×にする。 これも、娘のため。これに誘ってきた某子狸で噂好きな元部隊長には後でちゃんと言っておく事にしよう。 あっちが一人だと退屈だから、といって無理やりいれてきた都合でもあるし……と案外適当だった。 「なら、今日は学院の方が終わってから、僕と一緒に二人でお出かけしようか?」 「……ほ、本当?ユーノお父さん、お休みとれるの!?」 「とるって言うか、まあなんとかするよ。なのはがお仕事で遅くなるらしいからね」 「うん!ヴィヴィオちゃんと待ってる!お父さん!ヴィヴィオ、楽しみにしてる!」 滅多にユーノと二人で遊べないためか、本当に嬉しさがにじみ出るほどの笑顔で絶対だよ、と念を押すヴィヴィオ。その笑顔を見れただけでもユーノは嬉しくて。 ああ、自分って親バカだなって思うわけであった。 ――――――――――――――― ―3― フライパンを巧みに動かす。 火加減の絶妙さ、さらには料理器具の使いこなしから、材料の的確な投入、使用。 まるで亜麻色の髪の女性、なのはとキッチンが一体化したかのように華麗に料理が出来上がる。 さすが喫茶店の娘、といいたいところだが、実は数年前、ちょうどユーノと一緒に過ごし始めたときはさっぱりダメだったのだ。 なのは自身、驚くほどダメだった。料理は得意だったのだが、さすがに管理局で物騒なことばかりしていたことが祟ったのか、それともほとんど料理を数年間しなかったことが影響していたのか、一応自炊を多くしていた程度のユーノにすら負けるほど、全然ダメだったのだ。 ヴィヴィオのために、自分のために、何よりけ、結婚した彼のために。 そう思って数年間。実は教導隊の仕事をだいぶ減らして(体のこともあって、ユーノとヴィヴィオの二人に無理を無理やり止められた)その分を料理などの費やしたこともあって、十二分に主婦さんとしてやっていけるようになったのだ。 それで嬉しそうに料理を食べてくれる二人を見るのが、今のなのはの楽しみの一つ。 「はい!ヴィヴィオ、ユーノ君!朝ご飯できたよ♪ それと、こっちは……ヴィヴィオのお弁当ね。タコさんウインナーもいれておいたから」 「うん!ありがとう、なのはお母さん!タコさん~♪」 「そうやって喜んでくれると、私も時間がない中作った甲斐があったよ~ さてと、私も朝ご飯っと」 ダイニングルームに三人揃うとヴィヴィオのいただきまーす!の声で朝食を始める。 今日は時間がなかったが、それでもごはんと味噌汁にスクランブルエッグとポテトサラダにウインナー、としっかりとした手堅いメニューだ。なのはがいくつか事前に作っておいたものものある。 いつの間にか、自分で料理ばっかりはちゃんとしないと気がすまなくなっていたらしい。 なのはは、それも二人の笑顔が見たいからかな、と笑みを浮かべながら自分が作った料理を口に運ぶ。 ――うん、味はいつもどおり! 急いだのでちょっと分量を間違えたかも、と思った箇所もあったのだが味もちゃんと出ていた。 ……それでも、やっぱり心配で。 なのはの横でスクランブルエッグを口に運んだユーノの表情が気になって横を向くなのは。 もっとも、それは心配しすぎだったらしい。 「うん。いつもどおり、なのはの料理は美味しいね?」 「あ、ありがと……ユーノ君(真っ赤)」 不意のユーノの笑顔と褒め言葉にユーノの方を真剣に見ていたなのはは……とっても恥ずかしかった。 完全に不意をつかれた褒め言葉はとっても顔を真っ赤にさせて。 もう数年は夫婦をやっているのに、これには今でもなれないなぁ……とうっとりとしてしまう。 彼がいけないんだよ、とちょっと酷いことを思い浮かべつつ、残りの料理を食べて行く。 自分も今日は早めにお仕事がある。教導隊というのはこれで忙しいのだ。 西に東に、教導を求める部隊は山ほどあり、またその合間を使って自分の練習や新しい戦術を考えないといけない。なのはのような砲撃・後方支援タイプはその戦術をいくら持てるかがそのまま戦力の有無になるので余計重要だ。 「……なのはお母さん、なんだか考え事してるー?」 「あっ…ううん、ヴィヴィオ。ちょっと今日のお仕事を考えていてね……」 ヴィヴィオが心配そうな声で問いかけてきて、やっぱり分かっちゃうのかな、と娘のちょっとしたことに対する反応の良さにこれは、絶対にユーノ君似だよね、と自分の事をいつも心配する夫に似たヴィヴィオに嬉しいやら苦笑するやら。 そのユーノはというと……深刻な顔もしないで、だけど楽観した表情もせず、ただ安心できるような 彼の凛とした表情で自分に言葉を投げかけてくれた。 「なのはが仕事のことを考えるとドンドン深みにはまるんだから、リラックスして行ってきなよ」 「……ユーノ君……ありがと」 単純な言葉でも、それを言ってくれる人の思いが分かるから。 それだけでなのはは嬉しかった。 朝食を食べ終えて、全員揃って服装も……ユーノは司書長としてあうような服装で、ヴィヴィオは学校の制服で、なのはは教導隊の服に各々がしっかりとそれを着こなす。 「あ、ほら。ユーノ君、ネクタイ曲がってるよ?」 「えっ?まが……あ、ありがとう」 「うん。私の大切な旦那さんだもん。これぐらいは当然だよ?」 ネクタイが微妙に曲がっていたユーノ。 それを見れ、ごくごく自然にそれを正す。これが私の日常。 お仕事も大切だけど、彼もヴィヴィオも。すべてを求めているような気がしないでもないけど。 ……それでも、大切な、毎日の一ページ。 自分が一番急がないといけない。教導隊のオフィスではなく、今日はミッド南部の部隊の教導だ。 ユーノとヴィヴィオが見送りにそのそれなりに大きな家の玄関まで来る。 二人もあまり時間の余裕はないけど、これはいつも欠かさずしていること。 「いってらっしゃい、なのは」 「いってらっしゃいなのーなのはお母さん!」 「……うん!行ってくるね、ユーノ!ヴィヴィオ!」 朝の、それが私の日常だから。 と、とあることを思い出したなのはは…… 「それじゃあ、今日はがんばって早く帰ってユーノ君たちが勝手に出かけるのを一緒について行くからね!」 「ああー!なのはお母さん、盗み聞きしてたのー!」 「ふふふっ、ヴィヴィオだけで出かけるのは無しだよー!」 「……これじゃあ、クロノにいつまでも新婚夫婦め、と言われてもお前もだろ、以外と返し言葉がない、かな……」 と、とにかく、それは平和なスクライア家の朝の出来事。 平和でごく自然な一人の夫婦と娘の一日だから。永久に続いて欲しい、道の一ページの。 後書き いろいろとこれ書いてる時間が大変なので、コメント返信は明日の20万ヒット関係の日記の時に~。 とりあえず、復帰一作目はベーシックになのユノです。 しかも、StSからもさらに最低5年近くはたった未来。なのはのユーノがすでに夫婦ですよ、夫婦w ちなみに10歳近くのヴィヴィオがママやパパ言うのはおかしいかな、と思ってお父さん、とお母さんにしてあります。もっとも、なのはお母さんといったり、単にお母さんと言ったり、ユーノお父さんと行ったら、お父さんと言ったり。 まあ、お父さんとお母さん、という呼び方はキャロが一番自然だと自分には感じました(ぁ 実は、キャロとヴィヴィオの関係もそれなりにいれたかったですが、時間の都合で無しにw 変わりにエルザスという形で形だけは出しました。 エルザスはドイツの地名だったところのドイツ読み。エルザス・ロートリンゲン。 フランスが現在持っており、フランス読みはアルザス・ロレーヌ。 ちなみにキャロの出身地はアルザス地方。これって、ここからじゃね?と思った次第w ヴィヴィオはドイツベースのベルカの聖王の血なので、ドイツ読みのエルザスを使ったり。だから、マイスターとインテリジェントデバイスなのに呼んでいます。 とにかく、普通の朝の話にしたつもりです。 ちょっとした夫婦のちょっとした朝。ヴィヴィオがファザコン!?とかそーゆーことはありませんのでご了承を(ぁ 単にユーノの休暇が少ないのと母親が父親を独占するので飢えているだけです(ぁ まあ、あまり言っても何なので、後は読者の妄想でよろしくw ちなみにWeb拍手をしてくれると、この復帰初めで書けない症候群に陥っている私の励みになりますw カリムさんのSSがすすまねぇー!(ぇ それではーw