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はい、そもそもリリなのじゃないSSです。こんばんわ、始めましての方は始めまして。 更新がこのところ無かったのは年度末の忙しさ&ネトゲを始めてしまったことがあります。 まあ、その間色々とリリなの考えても書けない、というか今も書けないという状態です。話が詰まってくれません。困ったなぁ…… で、なぜかつい最近始めてしまったPCゲームD.C.Ⅱ いや、だいぶ前からあったのに、小恋エンドやって終わってしまった。理由は時間がもったいない(ぁ まあ、春休みで始めたらこれがこれが(汗 というわけで、書いたのがこのSS。まあ、ギャグですよギャグ。 リリなのでギャグって難しいんですよねー、キャラクターイメージを崩さないで書くと特に。 とりあえず、リリなのでギャグをどうかくか、を考えるために書いて見た試験的な一作です。 D.C.ⅡのSSですが、リリなのを読んでくれていた人も読んでくれると嬉しい限りです。ええw まあ、 D.C.ⅡSS目当ての方もどうぞw
鍋。 江戸時代までは基本的に一人一膳の食文化が日本の基本だったために 鍋も小物の小さな一人用から大きくても二人用サイズが主流だったらしく、現在のように 大型で、多人数で食べる鍋料理は明治時代に入ってから日本料理の基本となったらしい。
なぜこんなことを俺が考えているかと言うか、非常に面倒かつ単純な理由がある。
「というわけで、さくr」
「じゃ、帰るわ。俺」
ある日のホームルーム終了後。猪突に目の前に現れた男を華麗に無視した俺。 こういうテクニックがないと、世の中生きていけないよな。特にこの教室では。 杉並・杏の二人を筆頭に人の濃さだけなら風見学園史上類を見ないと断言できるぞ、ああ。
「うむ。ではちゃんと所定の用意をしておいてくれたまえ。 後でお前の家にちゃんと迎えに行くからな、はははは!!」
「こらまて、まずお前が何を考えているか、いやお前が何なのかから含めて謎が多すぎる」
こいつの話がまず分からん。 というか杉並、勝手に始まってもいない話を終わらせるな。いや、始まってもほしくないが。
「だいたい、杉並。お前が話を持ってきて俺に有益なことがあったか?」
「何を言うかマイ同志桜内。俺たちの仲はそんな利益だけで語るような寂しいなかではあるまい」
「いや、そういう関係含めて、お前と親密な仲なのは御免なんだが」
「あら、じゃあ二人の仲は友情を超える……のかしら?」
始まっても欲しくない話に首を突っ込んできたの雪村杏。 とりあえず杏、それはありえない。ああ、ダメ、ゼッタイのレベルを超えて、いかなるルートを進もうともだ。
「うむ。それもいいな……次の生徒会会議では俺と桜内の関係一斉報告とでも行こうではないか」
「いいわけないだろ。お前とそんな関係になるぐらいなら俺はこのまま消えた方がマシだ。 ……だいたい、いきなり首を突っ込んでくるな杏」
「だって、面白そうだったんだもの。首を突っ込むのは常というものでしょ?」
筆頭二人が俺を無視して言いたい放題言い始める。というか、それに俺を変に巻き込まないで欲しい。 今日は適当に生徒会室に入って音姉のところで手伝いでもするか、さくらさんのところにでも行くかと思っていたんだが……
「……っというわけで、桜内には重要な任務があるわけだ」
「だから、俺を無視して話をするな。無視するぐらいならそもそも俺を巻き込むな杉並」
「何を言うか。お前がいなければ面白さ半減。飲み物の入っていないコップだぞ?」
当然だろ、と言いたげな笑みを浮かべて言う杉並。 横の杏もまったくね、と呟いている辺り。こいつら、今ので話を纏めやがったな。
……わが愚妹ではないが、二人を同時に相手するのはかったるいぞ、本当に。
「……で、なにやるんだよ?まずそれからゆっくり話してくれ」
「うむ。のんびりで鈍感でマイペースな桜内のために順を追って説明してやるのも一つだな」
まあ、俺様が少し説明してやろう、とホワイトボードを取り出す杉並。勝手に言ってろ。 というか、ドコからそのホワイトボードは出てきたんだ?
「あら、茜に頼んで持ってきてもらったのよ」
「そうだよぉ~?義之君、私が手間暇かけて持ってきたんだよぉ?ちょっとは私をねぎらってよぉ?」
疲れたー、という表情がくっきり浮かんでいる茜。 ただし、その横では小恋が「もう!私が殆ど持ってきたのに!」と訴えているので言うのはやめておこう。 そんなことより大切なのは、ここで余裕の笑みを浮かべている杏だ。
「……なあ、杏。俺の心の声を分かったかのようになんで答えられるんだ?」
「だって、義之の思考パターンなんて単純だもの。7割近くの確率でホワイトボードがここにあることを 不自然に思う、と過去の統計からはじき出していたわ」
そりゃご苦労なことで。 となると統計ができるほど俺の行動ってワンパターンなのか?いやこれ以上考えるはやめておこう。 また統計学から、と言われそうだ。
というか、まだホームルームが終わったばかりなのにいきなりホワイトボードが出てきた上に いきなり杉並がなにやら不可解な絵を書き始めたというのにまったく動じていない このクラスもクラスだ。
『慣れ』という奴は怖いな。まあ、俺も慣れてしまった一人なのが悲しい。
と、勢いも強く書き終えた杉並が大きく息を吸って一言。
「……というわけで、わが風見学園には屋上で鍋をする生徒がいた、という噂があるわけだが。 それで思いついたのだよ、桜内!今日、スペシャル・NABE・パーティーを慣行するぅ!」
……こいつは天性のバカな何かのようだ。間違いなく。 あるいはアホか、狂った確信犯か。いや、確信犯は基本的に狂っていると思うが。
――――――――――
「とりあえず、そのスペシャルなんとやらをするかはどうかは置いておいて、だ」
「スペシャル!NABE!パーティー!だ!桜内ィ!」
何を一々感嘆符を入れているんだ、杉並。 結局、俺、杉並、雪月花の三人に渉まで残ってこいつの話を最初から最後まで一通り聞いてしまった。 もっとも、渉は杉並に小声で何か言われて途中で飛び出していきやがったが。
何を言われたか知らないが「ふっ、哀れな子羊ねぇ……使われていることも知らずに」という杏の声を聞いてしまったので考える事はやめておくことにしよう。渉、お前の事は忘れない。多分。20%ぐらいの確率で。
結局聞いて分かった事は、杉並はやっぱりバカ、だということだけだったが。
「あら、面白そうね私も参加させてもらうわ」
「うむ、さすが雪村。この偉大なる行事の意味を理解したか」
「ええ、ばっちりね」
嘘つけ、またお前は主に俺をからかうとか、そういう意味でいるだろうとツッコミをいれたくなるぐらい 杏の表情は何かたくらんでいる、と訴えていた。
こいつらが共犯して何かたくらんで平和に終わった試しはない。 あえて言えば、料理で元が何だったか分かるどころか味まで成功させた由夢、あるいは胸が大きくなった音姉ぐらいにありえない。
……一瞬、殺気をドコからか感じたが気にしないことにしよう。
「杏が理解しても俺が分からん。だいたい、いきなり鍋と叫びだした理由が」
「うむ。実は先日、非公式新聞部の過去データを閲覧していると50年ちょっと前にとある姉妹が 屋上で毎日鍋をしていた、という話がある。噂は本当だったらしい」
「そりゃまた……って、本当にやってたのかよ」
今は秋。寒くないと言えば嘘だが、別に外で何か食事をしていても問題ないかもしれない。 しかし、ってことは、その姉妹は冬も外で鍋してたり、夏も鍋なのか?
「まあ季節以前に屋上の鍋がいかなるものか、非公式新聞部の過去のデータにも詳細な記録はない。 そこでだ!今日の夜、学園の屋上で鍋パーティーを執り行い、屋上の鍋というものの情報を収集する! 安心しろ、すでに芳乃学園長から『面白そうだね~ボクも混ぜて混ぜて~!』と夜間学校の使用許可は取った」
それを許可と言うのかは、この際考えない方がよさそうだ。 ……にしても、さくらさん。もうちょっとこいつを止めてください。お願いしますから。
横の茜と小恋も「面白そう」と統一した意見らしい。 まあ、あの杉並と杏が共謀している割にはまともな話だ。珍しく許可も得ているわけだし。
「で、なんで俺を呼びとめたんだ?」
「ふっ、話が早いな。今回は鍋なのだよ、同志桜内。そして鍋と言えば……そう!食材だ!」
バシッ!、と教師机を叩きつける杉並。また過激な演出だな、おい。
「無論、食材の優越は大事だ。食材に関してはわが非公式新聞部がすでに日本各地の名産品を集めている……だがしかし!調理をするべき人間、これこそがここで最も重要な案件とは言えないだろうか!」
「うーん。確かに私たちも美味しいお鍋の方がいいわよねぇ~小恋ちゃん?」
「えっ?そ、そうだね。茜。でも別にそこまで言うことなのかな?」
茜に話題を振られて困る小恋だったが、確かに小恋の言うことはもっともだろう。 普通に料理を作る、いやこの際料理が苦手でも普通、鍋物というのは苦手得意関係無く作れる類のものだ。 もっとも、この世界にはそんなものを無視するであろう悪魔的な才能を持つものもいる。
そう、わが愚妹のそれはすでにcookとかmakeとかそういう優しいものじゃない。 create、造る・創造する、といった方がいい前衛芸術の類に等しい……
「ま、まさか……す、杉並!それは、危険すぎる!! まだ、まずいとか味が良くないとか、料理を作るレベルのミスならいい! だが、間違いなくあれは造るの類、クリエイトだぞ! 美味しい・まずいじゃないんだ!食べれる・食べられないでもない!
毒か、毒じゃないかのレベルなんだ!?」
「……あいつ、死んだな」
「ええ、間違いなく、死んだわね」
俺の魂の叫びに杉並と杏が呆れたような、それとも死者を冥福するような奇怪な表情を浮かべる。 うん?な、なんだ?一体どうしたっていうんだ? そんな俺の後ろから、猪突に声が掛けられる。あれ、これってどこかで聞いたようなパターンだ……? この声、神の啓示かあるいは悪魔の微笑みか……
「……それはどういうことなんでしょうか、兄さん?」
礼儀正しい、あくまでも優等生な素振りと声。 だがしかし……それは神の啓示、なわけなかった。 むしろ、悪魔の微笑を越して、死神の最終尋問。しかも答えをすでに言ってしまったような。
「まあ生きていれば、夜に鍋でも食べよう、マイ同志桜内。生きていれば、な」
「ええ、死んでいても屍ぐらいは引き取ってダシにでもしてあげるから安心しなさい」
そういう二人はとっても爽快な笑みだった。 ああ、これが最後の瞬間の健やかな雰囲気って奴らしい…… と、俺は後ろへゆっくりと振り返ると。
「そ、その……できるだけ暴力は……いえなんでもありません」
なんとも、情けない兄だった、と自分でも思えた。残念な事に。
「生きてるって、本当にいい事だ……なんだか、凄く今それを実感してる……」
「なに、悟ったようなこと言っているんですか、兄さん」
空は真っ暗な夜。 あの後、最終処分場に捨てないといけない粗大ゴミのように 階段を由夢に押されて一気に墜落し、次に校庭を均しのような扱いで引っ張られ 挙句の果てには箒のように桜並木を地面とキスして縦断する事になるぐらいの扱いを由夢に受けた俺だったが 何とか立ち直って風見学園にまで来ていた。何だかんだで結局来ているのは、なんというか。
俺もあいつらと変わらず、そういうのが大好きな性格らしい。
「あれで悟らずに何で悟れというか、この愚妹は……いえ、なんでもないです」
「私をもう一度怒らせたいのか知りませんが、あまり私を怒らせるといいことないですよ、兄さん?」
私服で歩いている俺たちだったが、さくらさんに事前にちゃんと許可のは本当のようで 風見学園の正門は空いていた。
「この時代、学園の警備とかそういうのは無くてもいいのだろうか…… 警備用ロボットとか言わないが、せめて警備員ぐらいはいるべきだろうに。無用心すぎる」
「なに独り言を言っているんですか兄さんは。早く行きますよ?」
ちなみに音姉たちにこのことを連絡したら 『さっきさくらさんから聞いたよ~♪弟君も行くの?じゃあじゃあ、私も行ってるね!』と一方的に言われて そのまま電話は切れた。というか、俺が行くとも言って無いのに勝手に行く事にされて。
いや、実際に来ているから否定できないか。
と、夜の誰もいない玄関を入り、階段を上って屋上に向かう。 本当に警備員の一人ぐらい……と、もうさすがにいいか。
で。
「で、怪談話は怖くないのに、なんで俺の手を離さないんだ、由夢?」
「い、いえ。別に何かでそうと言うよりも 先ほど下の方で足音というかなんというか、別に怖いわけじゃないんですよ? でも、やっぱり兄さんが怖がると行けないかなと妹としても思うわけでこうして手を」
まったく素直じゃない奴。 つまり足音を聞いて怯えていると。まったくというかお決まりというか。
「足音なんて聞こえないし、そもそも騒いでいる連中は上にいr「何してるのかしら?」って……」
突然響いた声。 俺と由夢以外いないはずの階段。ゆっくりと後ろを見ようとするが…… それよりも前に。俺の手を持っている愚妹が動き出した。
「ぎ、ぎゃぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?」
「ちょっ!?由夢おちつけぇぇぇ!?!?」
握られた手を強く引かれ……もちろん、ここは階段。殆どあがっていないとはいえ 下までは5段ぐらいはあるわけで、それを無理やりやられると倒れるわけで。
―――って、やべぇ、またこれかよ?!
つくづく、ついてないらしい。俺。
「ご、ごめんなさい!兄さん!」
「いや、いいよ。妹のためだと思えば安い怪我さ、あはは……」
もっとも、原因もすべて妹だが。 結局、またもや階段を落ちた俺と……もちろん手を繋いでいたので一緒に倒れた由夢。 俺が下敷きになったので由夢は怪我どころか痛いところもなく元気なようだ。まあ、良かったというべきだろう。
「まあ、いきなり声を掛けた私も間違っていたのかもしれないわね」
落ちた先で応急手当をしてくれたのは、声の主こと水越(舞佳)先生。 夜の見周りでもしていたのか、と思うと実は違うようだ。主に目が食材を探すハイエナのような目をしていた。
「(……おい、由夢。水越先生のあの目は何なんだ?保健委員だろお前)」
「(私に聞かれても困りますよ、兄さん。だいたい、保健委員だからって分かるわけないでしょ)」
そんな中、見事に目線だけで語りあう俺と由夢。 兄妹だからこそできる芸当というべきか。ふっ、無駄なところで兄妹だと思う瞬間だった。
「いやね、屋上から鍋の匂いがして、どうしてもねぇ?」
「あはは……そんな理由で俺は本日二度目のダイブをしたのか」
「に、兄さん!それは言わないでよ!は、恥ずかしいんだから」
だったら、一回目のあれもするなよ、と言いたいところだ。 一応、学園では優等生で通っている由夢。にしても、今日の階段落としは……
まあ、どうせ杉並と杏辺りが工作しているんだろうな。楽しみのためには労力を惜しまない奴だ。あいつらは。
応急手当だけで大丈夫だったのは殆ど奇跡だろう。 さすが一年中咲く桜の木のある島だけはある、ということにしておこう。というかしておきたい。
とにかく、やっとのことで屋上へ続く階段のドアを空けると……
そこは天国と地獄の世界だった。
「ああはははははh!!!まゆきぃぃ!もう一杯!あははあは!!!」
屋上。それはいつもの殺風景な屋上ではなく、いくつかのちょうちんすら上げられており ビアガーデンかよ、と突っ込みたい衝動に駆られるぐらいの雰囲気をかもし出していた。
……の割にはその下にはなぜかコタツに鍋、という歪な空間。にしても、なぜコタツ。 というか、さっきから生徒会長さんの笑い声が絶えないわけですが。
「あら、鍋じゃない。しかも伝統の屋上鍋」
「水越先生、知っているんですか?」
「……まあ色々とね。さてと、それじゃあ鍋でも一つ食べようかしら」
むしろ最初から食べる気満々だったでしょ、と言わんばかりにコタツに入って早速近くにある鍋を突付き始める。 そのスピーディーで計算されつくしたような動くに俺と由夢が呆然としていると。
元凶が現れた、この状態を作った元凶が。
「おお、生きていたか同志桜内」
「……さすがにここで消えたら、早過ぎるっていう神からの達しか何かのせいでな。半死状態だったよ」
ちなみに半死状態で出会ったその神疑惑消えるのは来年の2月ごろらしい。 なんの話だよ、とその神にツッコミを入れておきたかったが、それをする前に現実世界に戻された。
そこで、由夢の料理が待っていたらもう神と語り合い尽くせたかもしれないが。
「あら、それじゃあ義之のダシは無理ね。せっかく用意していたのに」
いかにも残念そうな笑みを浮かべる杏。本当に用意していたのかよ。 二人とも各々に怪しい笑みを浮かべていたが、まあこの際それは無視しよう。
ああ、無視するともさ。問題はこんなことじゃない。 すべてを悟ったかのような感じすらした俺はちゃっかり杉並と杏がいたコタツへにと足を入れる。 由夢もその横に入ってくる。さすがに狭いんだが、こいつはそんなことお構い無しに入ってくるな。
「……で、あれは何なんだ、あれは」
「うむ……ちょっとした誤差だ」
「ええ、誤差よ。まあ気にしなければなんてことはないわ。観測しなければ無いのと同じなのよ」
俺の質問に一様に答える二人。お前ら、もう少し何か言葉は無いのか言葉は。 俺がさした先、それは別に遠くでもなんでもなく。 ましてや特別なものをさしたわけでもなく。
「あはは!!そこぉ!お箸は入れちゃダメ!うふふ、勝手にやっちゃうと、私も怒っちゃうよー?」
鍋奉行で錯乱状態の音姉がいた。
「まあ、最初は桜内に鍋の番人を頼もうと思ったわけだが」
だんまりしていても始まらない、と杉並がぽつぽつと話し始めた。 しかし、深刻な顔は一切してないところがこいつららしい。絶対に楽しんでいるぞ、この状態を。 杏も同様か。唯一困っているのはさくらさんぐらい。さっきその横に入った水越先生は……黙々と食べているし。
「桜内は朝倉妹にお持ち帰りされたので、変わりに月島が鍋料理をしていたわけだが そこに朝倉姉が現れてな。まあ料理の腕は聞いていたので鍋を任したら……あれだ」
「わ、私は兄さんをお持ち帰りしたというか、制裁を加えたと言うか……」
由夢、いくら弁論して、恥ずかしそうに恥じらいを含めて言っても、制裁の文字がすべてをぶち壊してるぞー。 どっちにしても制裁された俺にはまったく意味がないが。
「まあ、この際桜内がどうなっていたか、などは問題ではない。 つまりは……朝倉家の鍋奉行が誕生したわけだな。めでたいことだ」
「まったくめでたく無いわ。このバカ」
この状態でどこがめでたく見えるんだよ、こいつは。 と鍋のある方をちらっと見直すと。
「あら、これはちょうどいいわよね?」
「はいぃ~水越せんせー、よく分かってますねー!それはOkですー! ああ!板橋君それは何度ダメと言ったらぁ!」
バシンッ! 一瞬の『何か』の後に、なぜか渉は崩れ落ちた。というか、倒れた。 な、何なんだ?
「おい、今何が起きたんだ?」
「超高速で投げた調理器具のおたまが板橋にクリティカルヒット。ふっ、あっけない最後だった」
「板橋 渉。夢半ばにておたまにより死亡。彼らしい最後だったわ」
何気に渉に対しては問答無用で酷いな杉並と杏。 ……もっとも、とはいっても俺も毛筋ほども庇うつもりはないし(キッパリ)確かにあいつらしい最後だ。
―――――
「お、お前らぁ……っていうか、これで俺の出番終わりかよぉ……」
「で、問題はこれをどうにかしないと私たちはまともに料理にありつけないことにあるわ。 あの近くにいる小恋と茜、高坂さんに学園長と……完全に動けそうも無いでしょ?」
「た、助けてよ……義之」
「音姫さん怖いぃ……義之君に杏助けてよぉー」
「これは予想外だわ……どうにかしなさいよ弟君」
「にゃはは……まあ、ボクはこれも楽しんだけどね、義之君」
音姉の厳しい目線の中、必死で訴えてくる皆。 小恋と茜は音姉の隣にいるために困り顔。同じく逆横にいるまゆき先輩も予想外の事態に完全にお手上げ状態らしい。 音姉の前にいたさくらさんは横にいる二人とはまた違った意味で鬼気迫るものがあるのか 訴えてくる目の色が違った。いや、なんとなくだけど。
ちなみに野郎はすでに伸びているので無視。
……っていうか、なんで皆揃って俺!?なぜ!?どうして!?What?!
「それはお前が弟君だからだろう、桜内」
「そうね。身内の問題なんだから身内で処理するのが基本よ」
お前らが事の発端だろうに、それは棚に上げて二人とも完全に俺に転嫁していやがる。 というか、身内なら由夢だって……と横にいる由夢を見ると。
「お兄さん、ここはやっぱり兄さんががんばってくださいね?」
「……おい」
「や、ひ弱な私より男性の兄さんの方が力もありますしやっぱりできるじゃないですか」
なら、さっきの階段で落としたり、校庭や桜並木を引きずったのは何なんだよ。 と言いたかったが、それを言うと音姉だけじゃなく、由夢まで面倒なので止めておく。
第一にひ弱なのは、お前のおばあさんの音夢さんの方でお前は俺を引きずるほどに至って健康体だろうが。
「それにかったるいですし」
「それが本心か……はあぁ。結局、俺がするしかないのか」
身内の問題は身内で。 誰だよ、そんなこと決めたのは一体。
―――――――――
……準備万全、いざ突入。 いや、いくら準備が出来ても本当は行きたくないのだが、行かなきゃさすがにまずいだろう。
「おーい。音姉~」
「ああ!アクは悪なんです!とら……あぁ~!弟君発見!」
ゆっくりと、思い足取りでコタツから出て 杏と杉並の無駄に盛大な応援(『桜内!お前は学園の屋上鍋歴史に刻まれるぞ!』やら『これで小恋の交換度は間違いなくアップね』といったむしろ野次) を受けながら何とか音姉の横まで来たわけだが。
わけだが! ここで、やはり人は思うわけだ……この人、やっぱり酔ってると。
「(おい、杉並。音姉に何を渡したんだよ)」
「(うむ。ノンアルコール飲料だが何か?)」
「(ちなみにノンアルコールだからってアルコールがないわけじゃないの。 正確には法廷基準を満たさないレベルのアルコールが入っているわ。まあ、普通は酔わない程度のアルコールってことよ)」
「(って、ことはそんな少量のアルコールであれってことか?)」
「(まあ、そういうことみたいね……将来、尻に敷かれないように気をつける事ね)」
俺と杉並と杏は目線で何を語り合っているんだろうか。 家族とは違う意味で、こいつらとは息あうものがあるってことか……なんかイヤだな、おい。
杉並風に言えば「サブジェクトにコンタクト」というべきか、あるいは「対象者に接触」か? とにかく、音姉の近くまで到着して、音姉も気づいたようだ。にしても、本当にノンアルコールでも酔うのか、音姉(汗
「弟く~ん♪お鍋だよ~うふふ~っ!」
「……そ、そうなんだ。と、とにかくそのおたまをまずは置いて」
「えぇぇ~?なんでぇー?お姉ちゃん、弟君のためにがんばって作っていたのに~♪」
むふふ~と言って俺の手に抱きついてくる音姉。ああ、だからそういうのはやめてと!? ……でも、それでもおたまはしっかり持っているのはなぜ? 遠くで杉並辺りは「なるほど、つまりはあの鍋奉行は桜内のためにやってたわけか。恐ろしいまでの甘やかしお姉ちゃんだな」 と評価しているが、そんなことはこの際後でいい。とりあえず助ける方策を考えろよ、と言ってやりたい。
「ほら、ちゃんと落ち着いて、ねぇ?」
「ええ~お姉ちゃんはいつも落ち着いているぞー♪ぐふふ~ふにゃー」
いいえ、まったく落ち着いていません。あなたは。 明らかに錯乱状態の音姉をとりあえずゆっくりと……となんてできなかった。
「あぅー!!私は酔ってないのぉー!!ぶぶぅ~!弟君と一緒に食べたいのにぃー!」
だから、どうみても酔ってますって! 何か、何か抑える方法は…と、探している最中。
「どれどれ……うん、確かに美味しいですね、このお鍋。お姉ちゃんが作っただけはあります」
「まあ、小恋も音姫さんも料理は抜群だから、当然の帰結よ」
「確かにこのダシは薄味だが利いているな」
音姉の作っていた鍋を突付いている三人……ああ、美味しそうだ。 ……って、俺は囮かよ!?
「むふふ~弟く~ん♪大好きぃ~あはは~!」
って、だから抱きつくのはやめて、と言っても酔っ払っている音姉にはまったく効果無し。 他の連中は俺を囮に食べ始めやがって……!?
「ええい!お前らの薄情ものぉ!!!!!」
「大丈夫だよぉ~♪お姉ちゃんはいつも弟君の味方だもん~♪」
本当にイヤだ……鍋なんて……トホホ………
「……で、屋上鍋の問題は解決したのかよ……まったく調査している様子無いが?」
音姉の騒動から……つまりは食べ始めてから2時間後。 さすがに全員揃って騒ぎながら食べるのもお開きの時間になり、意味の無い噂話に花を咲かせていた。 まあ、何人かは眠くて寝ていたが、それは偶々今日は暖かい日だっただけだろう。 唯一、水越先生だけはロボットにいかに鍋料理をうまく作らせるかを熱く語っていたが……まあ気にしないことにする。
俺もあの後なんとか落ち着かせた音姉を寝かせると何とか食べることには成功して、一息ついたころだった。
「ああ、それなら実はな……50年前の情報を先ほど芳乃学園長から拝借した。 さすが学園長、50年前の名簿から写真から性格まで網羅しているのは驚きですなぁ」
「いやいやぁ、それほどでもないよぉー杉並君。 むしろ、ボクは君の正体の方にひじょーに興味があるんだけど?」
「もちろん、それは極秘ですよ、ははは!!」
ひたすらに高笑いではははの文字を連発する杉並。どうやら杉並監視できたらしいまゆき先輩も 呆れているようで。まあ、俺だって聞いて無いんので、俺にその目線を向けないでください、まゆき先輩。
「……で、義之は両手に桜花、ね」
片方には眠っている音姉。もう片方には疲れたのか寝てしまった由夢。 ……杏の言っていることがあながち間違いではないことに何も言えない。実際に二人とも学園では人気らしいし。 しかし、なぜ花じゃなくて、桜の花?
まあどっちでもいいけど、あえて言っておこう。
「杏、お前がソレを言うなよ……というか普通、コタツから顔出すか?」
「あら、義之はこの構図はお好きではない?」
ちょうど左右に音姉と由夢が寄り添っている中央にコタツから顔を出してきた杏。 ……こいつは何がしたいんだ、と激しく問い詰めたい。ああ、問い詰めたい。
「ちょっと!杏なにやってるの!」
「あら、小恋に見つかっちゃったわ。それじゃあさようなら」
と言ってコタツの中に消える杏。小さいって便利、ということを感じさせる一場面だ。 さくらさんもさくらさんで楽しそうな表情を浮かべて騒ぎを見ているし………
「ふふっ♪義之君、楽しい?」
「えっ?それはまあ、楽しいですけど、どうしたんですか、さくらさん?」
「ううん。なんでもないんだ。ただ、楽しいのかなって?」
「はあぁ?それにしても、50年以上前の話ですか、その屋上の鍋って……本当の話なんですか?」
どれだけ好意的に考えても夏や冬に屋上で鍋、というのは納得が行かない。 というか、夏は熱さで死ぬだろうに。鍋なんて。
「うーん。本当だよぉ~?ここには鍋好きの姉妹がいて、ここでお鍋をお昼に毎日食べていたんだぁ。 でも、もう屋上で鍋、なんて思ってなかったから、今日杉並君に許可を求められた時は驚いたよー」
「そりゃそうでしょうね」
いきなり「屋上で鍋」と言われて、しかもはるか昔にそれを実際にやっていた人がいる、となれば その話を知っている人も驚くだろう。知らない人はもっと驚くだろうけど。
「でも、これも今日だけ……だから、今日はバシっと楽しもうぉ~!」
「あはは……まあ、それもいいですけどね」
俺の両脇で寝ている二人の姉妹を見ながら……鍋を突付く。 まあ、二人に今後はお酒を飲ませるのは出来る限りしないようにしよう。うん。 そう心に誓った俺だった。
追伸 数ヵ月後、結局飲ませてしまった。俺の誓いってあっけないなぁ(汗 後書き まあ、つまるところは本編を知っている人風に言えば「D.C.Ⅱ本編前の秋の話の一つ」です。 D.C.Ⅱ本編は冬から春にかけてなので、その前の話ですね。まあ、あまり深く関係ないですけど。 リリなの書かずにD.C.Ⅱ(D.C.Ⅱ目当ての方、ここはリリカルなのはを主にしているんです)なのは仕方ない。私がD.C.好きなんだもん(ぁ なので、実はリリなのを最初に見たときのなのはの声でどうしてもさくらんぼの顔が浮かんだり。 今じゃ逆で、D.C.を見るとなのはの顔が浮かぶ。これは大変(ぁ さて、D.C.は純一、D.C.Ⅱは義之君が主人公なのですが、この義之という男が特に自分は好き(普通は女性キャラクターだろうがというツッコミは大いに歓迎)設定も深いし、本当に義之君って純一と違って、本当に理想の男の子、といえるぐらいにしっかりしているんですよね。 なのに、こういう不幸を毎回毎回受ける。 私が好きなキャラクターでは、機動戦艦ナデシコのハーリー君(二次創作界では不幸のハーリー君とまで言わしめた)みたいな不幸さと、それ以上の純粋さがありますし。 ただ、今回はあえてD.C.の方の水越姉妹の鍋を話しにちょびっと出して見ました。 姉妹のどちらかを母にしているであろう水越舞香女史も鍋好きらしいですし、まあ鍋って面白いw なお、実際には鍋奉行に音姉はならないのでそこは演出効果ですw とりあえず、リリなのでギャグを書く布陣と、これからはD.C.Ⅱ系もたびたび書くかも、という警鐘を鳴らしつつ、やべー、カリムさんSS以下、問題山積なので、ネトゲやっちゃう、これがネトゲも魔力なのか、と驚いているグリフォンでした。 ちなみに、書いていて何ですが、どこかのSSに由夢と義之関係のシーンが似ていたような気がして引っかかっていたり。自分の場合、キャラクターイメージのために時々二次創作を読みながら書くので、もしかしたら類似してしまった可能性があるんですけど、どこのサイトが分からないし、そもそもそんなシーンが類似してしまっているかも分からなかったり。もし心当たりある方がいれば教えてください。最悪、その部分を削除・改定するので。