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それは騒がしかった。
12月終わり。世間一般的には年末と呼ばれ、子供たちは冬休みに入るそんな時期。寒さは日に日に強まり、それだけに人々は出歩くときも重装備。コートに何重にも重ねた服を、というように。特に今年は歴史的に稀な大寒波。冬将軍の襲来も重なって例年以上に寒さが強まっていた。ひらりはらりと舞う粉雪よりももっと細かい小さな雪の結晶も落ちゆくほどに。
そんなわけで年末も末。12月31日のミッドチルダはクラナガン近郊の高町家。例年どおりに大掃除のために呼ばれた、なのは曰く「大親友」の無限書庫司書長ユーノ・スクライアとユーノのお伴で一緒に来ていた無限書庫副司書長ソニカ・ミスリレックの二人組。 高町家はその日アイナさんはお休みしていたので、なのはにヴィヴィオ、そしてユーノとソニカの4人で掃除をして、それもお昼頃にはサクッと終わって……実のところ、なのはとソニカの二人はともかく、スクライアの名の通り定住することがないがゆえにこういう大掃除が苦手なユーノやどうやら掃除があんまり好きではないらしいヴィヴィオは色々と騒動を起こしたりしていたのだが……ともわれ何とか終わらせると、4人揃って午後はお買い物。 もっとも、ソニカ副司書長的には「年末年始、久しぶりの連休で休みたいのに、思いっきり笑顔な妻と娘の買い物に巻き込まれて困り顔の、だけど二人が満足してくれるならいいかなぁ、なんて思っている本当に幸せそうな夫みたいな、だけど実際には親友二人組と片方の娘」という感じで。 そんなこんなで、3時過ぎに帰宅した一同はコタツに揃って入ってのんびりとしていた……のだが。
「ユーノ君、なのはママ。ミカンを一つほしいー」
コタツの中で、謎の怪物コタツムリと化したヴィヴィオは、我儘をいう子供のように……いや実際そうなのだが甘い声でユーノを呼ぶととにかくミカンをほしいと駄々をこねる。 今まで炬燵に入って体を温めていたユーノは、なのはとこれからどうするか(年末年始のことで)話していて気付かなかったのだがふと見ると、確かにコタツに用意していたミカンがすべてなくなっていた。一応、人数分は持ってきて、ユーノとなのははついつい話が進んでしまって食べていないのだから、と。 もっとも、当人にとってユーノもなのはも親バカなので結構こういうのには弱かったりする。
「こらこら、ヴィヴィオちゃん。そういうのは自分で取りにいかないと「コタツムリ」っていう魔物になっちゃうわよー。ちなみにランクはAAぐらい?」
「えええっ!?ソニカお姉ちゃん、ヴィヴィオ、魔物になっちゃうのー!?でも、AAはちょっぴり強くなるんだねっ!」
「いや、強くなるとかそういう問題じゃないって、ヴィヴィオ……」
駄目だよ、と注意をするソニカがそのまま手元にあった残りのミカンをヴィヴィオの目の前まで動かして渡す。尤も彼女も「コタツムリ」よろしく、炬燵にジッと入って幸せそうな表情を浮かべていたのでどっちもどっちである。 ただ、ユーノにしてみれば隣で同じように微笑ましい様子で笑みをこぼすなのはのほうが妙に気になってしまい……今年で25歳。そろそろというか、さすがにその関係をどうにかしてほしいと友人たちから期待が要求に変わりつつある今日この頃。
別にユーノだって、もう15年近くなる関係が変わることを願っていないわけではないのだが、彼には今の関係を変革させようと思う積極性に乏しかった。現状でも、ユーノとヴィヴィオが顔を合わせるのは数日に一度は必ずあるし、ヴィヴィオが無限書庫にそうしてきているということは、逆にいえば迎えに来るなのはともそれぐらいの頻度で顔を合わせて話をして、時には食事もしているし、こうやって泊まることも決して少ないわけではない。 言ってしまえば、形式上の関係が変わらずとも、今の状態で十分に満足もまたしていたわけである。これが両者に10年以上の歳月を得て、両方とも別に恋人になりたくないわけでも、ましてや相性が悪いわけでもない……むしろ、10年以上その関係を続けている時点で十分に良いにも関わらず変わらない最大の要因なのだ。
後、もうひとつあえて挙げるなら……
「ふふっ、でも面白いよ、ユーノ君『コタツムリ』だって。ソニカさんも面白いこといいますね」
「どっちかというと冷たいカタツムリと違って、こっちは相当温かいけど。世の中一番近くにいるものが一番大切で温かくしてくれるもの……でも、実のところそれに気付かない人って結構多いのよ。『当代エースオブエース』のなのちゃん?」
「私はでも大丈夫です、ヴィヴィオはとっても大切ですから。ちゃんと気付いていますよっ!それにフェイトちゃんやユーノ君も助けてくれますしっ!『先代エースオブエース』のソニカ“先輩”?」
いや、そっちじゃないんだけどねぇ……と切り返して言葉を濁すソニカ副司書長兼元戦技教導隊教導官(なのでなのはの呼び方は先輩でもよかったりするのだけど、基本的にはさん付け)
――高町なのはには、恋愛感情が絶望的なほどに欠落している――
真しやかに囁かれる言葉は、まあ大方嘘でもなく、本当といえるもので、ユーノや昔ならクロノ・ハラオウン提督との関係に関しても本気で単なる親友・友人と言い切ってしまう。それだけに親友にしては仲の良いフェイト・T・ハラオウン執務官との怪しい関係なんていうゴシップネタが何度も噂として回ってしまうわけで。
見ての通りにこれだけ鈍感なので、周りも既に諦めていたりする。どうせ、恋人になりたくなったら即日になってその日のうちに結婚届けを出していてもおかしくはない関係なのだから後はなのはが気付いて、ユーノがアプローチすれば終わりでしょう?、とはそんな噂をされてしまい周りからの目が痛いことに気付いている執務官談。人のうわさも七十五日というが、逆にいえばその間はしつこく回るものなのだ。
「そもそも、なんでソニカさんがここにいるんですか……そろそろ帰ったらどうです?」
「いやぁー、司書長、もといユー君。家に帰っても誰もいないし、なのちゃんで言うフェイトちゃんやはやてちゃんみたいな親友は結構遠い世界にいて私は一人なんですよ……まどかは結婚するし、エリカは結構出世しやがって……どうせ、私はこの手の仕事にしか生きる道のない女よっ!」
「……色々と苦労しているんですね、ソニカさん。私はよくわかりませんけど……」
「私にはわからないとか言っちゃうなのちゃんが一番あれだと思うわ……」
ついでに言えば、御年35歳で彼氏いない歴も35歳。なのはとユーノの仲を願っているようだが、実は司書長を食べちゃうつもりじゃないかと噂されている女性でもあるソニカ副司書長だった。なんせ、元戦技教導隊教導官で別名がなのはと同じ、というかなのはのエースオブエースの由来にもなった初代の「エースオブエース」でもあったほどで、それほどの人間だったため今も教導隊にいればトップエースの道を歩んでいたであろう彼女がそもそもなぜ無限書庫に就職して今の地位にいるのかわからないといわれるほどでもある。尤も本人は今の地位には納得しているようであるし、ユーノも自分が司書長になるときに自分ではなくてソニカを押したほどで、なのはとユーノを足したような魔法の器用さを持つ人なのだが無限書庫の人材の大半がそうであるように「性格はともかく能力は一流」な人であったりする。
そうはいっても、なら来年には24歳になり、現在のエースオブエースでかつこの頃は不慣れながらもユーノに教えてもらいながらヴィヴィオと一緒に書庫の本探しもやっているなのはも、年齢と彼氏いない歴も同じで、結構似ている人生を歩んでいるのだが、当人の自覚のなさゆえにこっちはなにも焦ってはいないらしい。人生、気の持ちようっていう言葉が妙に当てはまるケースである。
「せっかくだから言っちゃうけど、こういう年末は普通、若い女性って恋人とデートとか新年を過ごそうとか、デートプランなんか立てちゃって結構大切な時期じゃない。なのちゃん的にはヴィヴィオちゃんのために誰かと結婚しようとか思わないのかなー、なんてヴィヴィオちゃんの上司でも一応ある副司書長さんとしては思うわけなんだけど?」
「そうですね……私はまだお仕事のほうとヴィヴィオと一杯一緒にいることでで手いっぱいですから。そういうのは私自身よくわからないのもあるんですけど……」
まるで言葉の間の穴や隙間をすり抜けるように返すなのは。だが、なのはとしてもその言葉にウソなどは決してなかったりする。 なのはにとっての仕事、魔法を使うそれは大切なものだから。自分が見つけて、そして誰かと思いを共にしたいという願いからだから。純粋に仕事というよりはなのはの願いがこもったことだから。 だからこその全力全開なわけであって、仕事というよりも自分の思いを優先にすれば恋人とか、ましては結婚なんて考える余裕がない、ということで。 ただ、だからと言ってなのはも思うところがないわけではなくて……
「まあ、それが一番僕はなのはらしいと思うけどね」
そんな、殆ど自分の愚痴にも近かったなのはの独白を聞いたユーノは何も否定もせずにそれだけを囁くようになのはに告げて。 たったそれだけの囁きだけど、なのはに中にはその言葉に純粋にうれしいのと、何だかそれ以外の理由でもちょっぴり恥ずかしいような気持ちになってしまって、自然と頬が赤くなっていって……
高町なのはにとっての唯一の誤算。ヴィヴィオのおかげで彼と一緒にいる時間が増えてから別の思いも小さいけど、だけど確実に大きくなっていること。
お仕事よりも、ヴィヴィオと、そしてその「彼」と一緒にいたいと思ってしまう時が本当にあること。だから今日も仕事があったのについ休んでしまった。ヴィヴィオと一緒にいたいから、という言葉こそ誤弁で本当は……
「そう言われると私も……うぅぅぅ……どうせ、私はお仕事大好きですよーだっ!ユーノ君の意地悪ーっ!」
「なのはママのほっぺたが膨れて真っ赤ーっ!怒ってるのー?」
「ヴィ、ヴィヴィオ!?私はそういう意味で膨れたわけじゃなくてっ!?」
「なのはも、僕なんか気にしないで普通にのんびりしてくれればいいよ?」
「そ、そういうことでもなくて、私はだから、そのあのね!?」
「……なんだかなぁ……私の居場所がない」
一応、自分は上司の親友の家に来ただけのはずなのに、どう見ても上司の嫁さんと娘のいる家に来たような錯覚がしてしまうソニカ。さっきの言葉も本気で、この光景も現実。思わずため息交じりに言葉を呟くとこたつの中でヌクヌクと温まる。もっとも、目の前のあっちもあっちで温かいのには変わらない様子で。 形式と実際の関係が噛み合っていないとはこういうことを言うのだろう、と自分自身で理解。これでは司書長のおまけなのに居場所がない。
――なるほど、だからあのもう一人のなのちゃんの親友の執務官はここにいないのか。
これだけダダ甘空間じゃあ、あの執務官ことフェイトちゃんだって来ないわけだと今頃になって最初からいなかった彼女が来ない理由に納得。そして同時に自分も脱出したくなるほどのこの目の前のバカップル改め、バカ親友と娘一人。
自分の役としては非常にかったるいのだが……そう思念すると、ゆっくりと動きますかぁ……と、ヴィヴィオのほうへとまなざしを向けつつ、台所まで足をいったん伸ばして探し物……クルッと半回転して元のコタツをヴィヴィオを挟んでその両脇にいるなのはとユーノも見つめて一言。
「……ミカンがないんですけど?」
…
「……その、なのは……」
「な、なにかな。ユーノ君?」
それは静かだった。 部屋にはユーノとなのはの二人だけ。4人でいたところで突然ソニカが「ミカンがないので、ヴィヴィオちゃんと買いに行きますね」と告げると、やっぱりコタツムリにはなりたくなかったのか、それともミカンを食べたかったのかどちらにせよ、ヴィヴィオもソニカと一緒にヴィヴィオ曰く「ユーノ君が買ってくれた真っ白でふわふわなジャケット」にマフラー(フェイトママの手編み)を付けると、返す言葉が出る前に出て行ってしまった。
正直、二人だけというのは双方覚えている限り久しぶりだった。 二人の間にはいつもヴィヴィオがいるので、逆に二人だけという時のほうが少ないのだ。
ユーノがふと隣を見ればなのはが寒いのか頬を赤く染めたまま、コタツに足を入れながらじっとこっちを見つめていることに気づいて目のやり場に困ってしまい…… なのはは、自分がずっとユーノのことを見つめていたことを理解すると、さらに頬が赤くなってしまって、何も考えることができなくなる。
「その、今年の年末は、地球には帰省しないかなぁ……て、思ってね」
「そのことなら、来年……といっても、あとわずかだけど。その4月にお兄ちゃんと忍さんが結婚するらしくて、その時の顔を見せればいいかなぁって思って」
「そ、そうなんだ。でも、そっか、恭也さんと忍さんが……結構結婚まで時間かかっているよね、あの二人も……」
「にゃはは……忍さんに子供もできちゃっているらしくて、私もおばさんと呼ばれるようになるのも時間の問題みたいなんだよね。すずかちゃんとも親戚になっちゃうし」
「ああ、すずかとも親戚になるんだ。なのはは……って、ヴィヴィオっていう娘がいるのに今頃おばさんになっちゃうことを自覚したの?」
静かで、音は二人の会話だけ。そんななかで、二人に共通する会話をたどってついた先が恭也と忍の結婚云々だったり。ただ、そんな会話を始めてしまって、二人とも「結婚」の二文字が頭に入って離れなくなってしまうのは何とも言えない空気を作ってしまっていた。 なのはとヴィヴィオと三人で一緒に一度高町家にお邪魔した時にいきなり士郎と恭也に切られかけたりと、あんまりこのところ良い思い出はなかったりするのだが……それでもユーノにとっては本当の意味でお兄さんみたいな人な恭也や、年齢が近いので妙に話が合うのか合わないのかわからないハラオウン某提督と、周りの人たちは次々と結婚していって。 特にクロノはこの頃は会うたびに妻であるエイミィやら、子供たちの自慢ばかりしているのでちょっぴり呆れも入るのだが、あの堅物クロノでそれだからなぁ、などとも思ってしまう。それを言えば、恭也さんも似たようなものなのかもしれないけど、とも。自分がもしそうなったどうなるのか、とそこまで考えて。
それと、目の前の女性との自分の関係をクロスオーバーさせてしまうと……思わず脳内が沸騰してしまうような感覚をユーノが襲ってしまう。
――ソニカさん、どう見ても狙って二人にしましたよね!?変なところで空気読むんだよね、あの人って!?
それでも、やっぱり一度意識すると離れないのが常なわけで。彼もやっぱり男なのである。好きな人のことを考えればそれだけで頭がいっぱいなのだ。
「ああー。これでも、私だって乙女なんだよっ!ソニカさんのいる手前、あんまり強く言えなかったけど……その、恥ずかしいし」
「ふふっ……そんなことないと思うのに、なのはらしいよ?」
「そう言ってくれるのは、その……ユーノ君だけだよ?皆揃って、やれ“白い悪魔”って呼ぶ人はいるし、火力馬鹿とかもっと酷いと魔王だよ!?……はうぅ……」
悪魔やら魔王やら、はたまた一部では冥王様などと呼ぶものまでいて、なのはの印象というと兎角過激的な色が強い。でも、本人はいつだって自分の思いを知ってほしいだけであって、そんなつもりはほとんどないのだ。いや、悪魔ぐらいなら良いといったことも確かにあるけど。 だから、そう言われると実は結構ヘコむ。この頃は親友であるはやてあたりも時々からかう時に使ってきて余計にヘコむ。一人の魔導師としての高町なのはならともかく、一人の女性としての高町なのはのときはそう言われたくないのだから。
逆にいえば、ユーノ君には私もそういわれたくないってやっぱり思っているのかなぁ、と自分で自分自身に自問自答。おかしな話で自覚しているわけではないこの思い。よくわからないままなのだ。
「他人の評価はともかく、僕はそんな風になのはを見たことはないけど……いつだって君は前ばかり見て進んでいく凄い少女……今は女性かな。そんな感じだから。だからこそ僕は……なのはが好きかな?」
「!?で、でも、前ばかり見て、横や後ろも見ない私でも好きなの?」
「好きじゃなかったら、ここにはいないけどね。フェイトだって、はやてだって、ヴィヴィオだって。皆なのはが好きだから君と一緒にいてくれるんじゃないかな」
“好きかな”、その一言でなのはの胸がギュッと抱きしめられたようにキュンとしてしまう。この感覚がよくわからず、その後の言葉で急に凋んでしまう。 ちょっと残念な気持ちが。そういう意味だったかぁ、という気持ちが。
本当はその「好き」はその「好き」ではなく、別の「好き」であってほしかったという思いが。
そんな気持ちの変化でいつもの凛としたなのはの表情とは違う、それは年相応でユーノからすれば彼女らしいと思える表情を曝け出してしまう。ある人はなのはのことを「憧れる」と言っていた。きっと、間違っていない。いつものなのははユーノでさえ憧れてしまうほど凛々しい女性だから。 でも、今のこの表情は……ユーノにとってむしろ、一番なのはらしい表情だった。
「その表情も含めて、なのはらしいかはその人が決めることで、なのははなのはがやりたいようにすればいいんだよ?」
「……本当に、優しすぎだよ、ユーノ君は」
以前、ユーノ君とPT事件の時に話した自分の弱い自分を隠していた過去からの思い。 以前、一度空から落ちた時に、その怖さから本当の自分を隠したいと思いながらもユーノ君とフェイトちゃんには曝け出してしまった自分の思い。
そして、今も。
なのはの中の思い出がぐるぐると廻り廻る。今年や去年、そのまた前と……今年も今日で終わりで、もう目の前の彼との関係も凄い年月がたっていることを実感させられて。
いつだって、本当の自分を隠したいと願っていた。でも、いま自分はその一部を彼には見せている。フェイトちゃんにも見せたことはある。だけど、それとこれは別で。
「……それは僕もなのはのことが“好き”だからね」
ささやかな声で、その笑みを壊さずに返すユーノ。「も」とつく意味はきっと親友として。それが嫌いなわけじゃない。むしろ、彼と親友でいられる自分がとっても嬉しい。だけどもう、なのはの表情はいつもの表情に戻ってしまう。
――その「好き」じゃダメだから。
無意識で、そのことを理解していて。その思いが本当に何なのか、本人は理解できないままでも。
「なのはも、ユーノ君のことが大好きだよっ!あっ、でも……私としては来年はもっとユーノ君のこと好きになりたい、かな?」
「え、えっと……?あの、なのはそれってどういう!?」
いきなりの言葉に意味もよくわからずに驚きと戸惑いが交差するような表情のユーノ。そんなユーノの表情を見て楽しそうに会話を続けるなのは。 ユーノにとっては思いをまるで見透かされたようで。なのはにとっては、自分の本心だとそれが思えて。 でも、両方とも一歩進む勇気はやっぱりなくて。
「だから……とっても、とっても、私はユーノ君のこと、もっと好きになりたいかなって!」
「どういう意味なのさ、だから……でも、僕も来年もなのはと一緒にもっと過ごしたい……かな?」
「うっ……そ、それじゃあなのはもそれよりももっとだよっ!」
結局、今年もまた二人の関係は変わらず平和に進む。それはきっと、二人とも納得しての関係。でも来年も同じ関係とは限らない。もしかしたら、いつまでも同じように親友のままで過ごすのかもしれない。もしかしたら、もっと強い仲になるのかもしれない。 ただ、言えることは……少しばかり、二人にとっての大みそかは嬉しい日になったこと。一緒にいたいと思える。それだけでも強く確認できたから。 とにもかくにも……そんな空気で年は明けていくのである。
追記 ソニカとヴィヴィオが美味しそうなミカンを買って帰ってきた時、なのはとユーノはコタツの中で抱き合って心地よいのか「大好きだよ……ユーノくぅん……」「なのは……僕も好きだよぉ……」と言って安らかに寝息を立てて寝ていたとかなんとか。 それでまた一つ二人が妙に意識してしまうのも、またコタツの悪魔、コタツムリの陰謀なのかは、後日コタツムリについて真剣に語り合ったヴィヴィオとソニカでも意見は分かれるところである。