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魔法少女リリカルなのはストライカーズ サイド・ストーリー ― クロスサイン・メッセージ ―
― Prologue
始まりの鐘は颯爽と鳴り響く。
それはその青く、そしてまた漆黒の世界を。 はるか彼方の銀河の端と端だって結ばれるような世界に次々と、一瞬の先には次元の海を通じて世界中へと。
細やかな世界の動きを。ちょっとした人々の生活への変革を。
それを知らない人は大多数。きっと、歴史の裏で隠れただけのちょっとした事件。
でも、それでさえ次元の海と、そして数多の命ある人々が過ごす青い星々一つ一つからなる、また複数の天の川の道筋を切り開いてゆく。 それらは彼らにとってメイン・ストーリーにしかなく、例え歴史の裏で隠れてしまうだけの存在だとしても。それは大切な一つの物語。
広く広く……膨大な次元で結ばれた世界が。 この広大な銀河に点在する青き星々の一つから始まる、そして終わろうとしている、そのたった一つの物語。
そんな、大したこともない。だけど、確かにある、物語を。
―――――――――― 新暦78年1月 第19指定管理外世界 現地呼称名 レスティア共和国連邦領内 コーリウス星系第4惑星レスティア 魔法学術都市フェール 連邦中央議会 厳格な空気がその場を支配していた。 500人以上に昇る男女入り乱れた議場で、急ぎ足でその議場でも唯一、一人だけが座れる席……連邦中央議会議長席に封をされた書類が運ばれる。 その封を議長がゆっくりと開き、そして中にある書類へと視線を移すと……緊張したままで立つ。 「大統領による各行政大統領補佐官指名及び首相指名。指名予定首相による行政各大臣人事指名は、賛成445、反対55で、賛成多数により可決致します」 その瞬間、議会の静寂は破られ、多数の喝采とごく少数の怒声が議会内に響き渡る。 時空管理局の管理する管理世界の中に存在し、その中にあって永世中立を国是とする国、レスティア共和国連邦における新政府誕生の瞬間である。 管理局設立から80年近く。中立を維持してきた中にあって、経済大国としての地位を維持し続けてきたかの国においての政局はここ数年混沌としたものだった。第一党レスティア共和連合も第二党自由民主同盟も過半数に議会内で届かず、少数派の政党は過激思想が強いものが多いために連立を組むわけにもいかず、当たり障りのない、しかし全く持って政策は空回りしていたのだ。 それは中立という考えそのものに対する変革にも近いものが生まれる土俵となっていた。第二党自由民主同盟から頭角を現すようになったとある女性が表舞台に出るまでは。 議会の議長と同じく一人しか座ることを許されない「大統領」の席に老人が……歳を感じさせないオーラをまとっているかのように……座っている若き女性、に声をかけた。 「エリカ・シュシュニック大統領。ひとまず、同意人事の可決、喜ぶべきことでしょうな」 「そうですね。ヴェルス首相。ですが、これからが始まりです」 この国における国家元首……第二党自由民主同盟エリカ・シュシュニック連邦大統領はそう強い意味を込めて第一党レスティア共和連合代表のアルトゥール・ヴェルス首相に言い返した。無謀とも言われた左右並存政権を作り出した立役者の二人は、表こと笑顔ながらそれぞれに思惑が交差しながら言葉を交わす。 「連邦内の差別の撤廃と対外的には経済的・世界的地位の強化」 中立を維持しつつも、積極的な管理局世界への関与と介入を宣言し、同時にこの国内で問題となっていた魔導師差別に関する撤廃宣言は、大統領選挙において、自由民主同盟が第二党にも関わらずシュシュニック大統領が圧勝する要因となった。結果、第一党のレスティア共和連合は譲歩することで大連立政権を樹立することなったのだが、その連立はこの二人による交渉が土台としてあったことは知る人ぞ知る事実であった。 そもそも、魔導師不足から魔法を中心とした国家システムを設立できないレスティア連邦では、未だに一部では魔導師を魔女扱いする風潮もあったのだが、それでも差別意識を撤廃を公にする大統領の登場に大多数の国民は好意的にとらえていた。 大連立が成功し、圧倒的多数で承認された人事は、これからの政権運営が困難なことを両者も理解しつつもまずは一息つけることに少しばかりの安堵感を漂わせる。 「しかし、課題は多いぞ。大統領。我々とあなたがたは右派と左派で考えが違うことも多い。それはまだ内政問題であって、私が対応する部分だが……対外的には聖王教会問題に管理局問題。中立問題、魔導師関連問題と問題が山積みだ」 「聖王……オリヴィエ・ゼーゲブレヒトが聞いたら、まあ、さぞ嘆くでしょうね。一応、元ベルカ連邦構成区の一つであった我が国の現状を聞いたら」 「私としては、ベルカに矛を向け、その首を切り取った時点で……ベルカを滅亡させた国の一つとして、嘆く以前に避難されると思うがね」 「それは今のミッドチルダや管理局だって同じです。そのくせ、今の聖王教会はそのベルカを滅亡させる要因の一つとなったミッドチルダが設立した時空管理局の中で勢力を持っているんですから、どっちもどっち、喧嘩両成敗というやつです」 「旧暦の話をしても意味はない、か……管理局め、JS事件以降、強力な指導者が不在で統制が鈍くなっている。おかげさまで、中立の我が国も貿易関係でとばっちりだ。まずは海賊や次元犯罪者に対する対応強化から、でいいかね?」 JS事件以降、最高評議会を失い、また地上においてはレジアス中将を失った管理局は三提督と中央理事会による集団指導体制を確立していたが、逆にいえば強大な指導者がいないというわけであり、それは管理局の統制力の鈍さとつながった結果、前にもまして次元間をわたる海賊組織、次元犯罪組織が管理局外延部などで増えていく悪循環を生みだしつつあった。 経済大国として存在するレスティア連邦にとっては当面の問題として、海賊組織によって貿易に支障が出ることであったのだが、管理局オブザーバー程度では意見を言っても寝耳に水というやつらしく、結果に乏しかった。 実際に、何度か交渉をしたのだろう。管理局にあしらわれた老齢な政治家は不満をタラタラと述べるだけにとどめていた。本音を出すと管理局嫌いで知られている彼はあまり好ましくないことなのだろう。 「まあ、おかげさまで軍需関係の……防衛関連の事業で、アルト・オーエングループは利益を上げているようですが。軍需は拡大再生産しませんからね」 レスティア連邦国営企業群の名前を出しながら、皮肉を利かせたのだろう……経済的にはよろしくないという意味を込めてシュシュニックは返す。 レスティア連邦国営企業連合アルト・オーエンは次元世界有数の巨大複合企業だ。 「今日の食事から、明日の国防までをサポートする」民需・軍需を問わない統合企業連合体であり、その規模は世界第二位。名実ともにレスティア連邦というお国柄を見せつけるような企業だが、さすがに「軍需」の拡大だけでは、民需は補えないものだ。なんせ、軍需は儲かるようであまり儲からないので、この手の企業が軍需に手を出しているのは、この企業の場合は国営企業だから、という点が強い。 「ああ、その通りだ。次元犯罪者への対応には管理局との共同での行動が必要になるだろう……中立である以上公に動くわけにもいかない。行動や交渉はどうするつもりかね?宇宙軍の予算増額は認められないぞ」 「財政は黒字ですけど、そちらの前の選挙のマニュフェストは財政の無駄を切り落とす、でしたからね。ご安心を、実動部隊は統合情報軍の独立部隊で済ませますし、交渉は……あの子、に行ってもらう予定です」 あの子、という言葉に妙なニュアンスを含めていい放つエリカに、ヴェルスも「ああ、君のところの不幸な子か」と言い返す。不幸な子はないでしょう、ということなのか、少しばかりエリカがその返答に苦笑してしまう。 しかし、和やかな空気こそ出しているがエリカにせよヴェルスにせよ、並の政治家では決してない。 エリカはそのカリスマ性とともに「強いレスティア」の再建に力を入れようとしている右派保守の政治家であり、まだ35歳という、大統領就任に関して言えば過去に前例がないほどの若さだ。それだけにその歳で大統領になれたこと自体が、彼女の政治家としての手腕を見せているかのようでもある。事実、財政と外務に関しては彼女は強く、ここ数年政局が混とんとしていたにもかかわらず、赤字を出さず、対外的な問題を起こさなかったのは彼女の能力によるところが大きい。 また、ヴェルスも今年で61歳という、一見エリカとは父と娘近くの年の差があるが、こちらは調整派の人間として、同時に現在の政界の重鎮として存在する議会政治の鬼とも言われた男なのだ。その入念な手回しのセンスは、エリカにして「あれを敵にすると数日後には路頭に迷う」と言わしめるものであり、この連立政権の実質的な最高権力者は彼だという人も多い。 ミッドチルダや管理局においては、指導者不在の政治が進み、堕落が進むなか、こちらは逆に強力な指導者同士が権力争いをしながらの連立を組んだため、対称的でもある。 これは一つの新しい光になるのか、あるいはただ、単純にねじれ国会を生むだけに終わるのか。それは今はまだわからないが。 「そうそう、管理局の高町なのは教導官って、ご存じです?」 そんな中でふと、思い出したかのように彼女は、管理局では有名な、だがそれ以外では全く無名でもある少女の名前を出す。JS事件の解決後、管理局世界でもそこそこ名前は広まっているが、管理外世界であるこの国で、しかも老人が知る名前ではないことはもちろん知っていながら。 「いや、知らないが……幻のSSSランク魔導師であったりするのかね?」 「いえ、オーバーSランクらしいですよ。ただ……彼女の、娘、ですわ。問題は」 「むすめ?」 管理局教導官の娘、別に意識しないといけないような人間でもない、所詮は娘じゃないのか。しかし、彼女はそんな表情をする老人ににこやかに……しかし、管理局でも一部の人間にしか知らない事実を。 「どちらに転んでも、結構面倒なことになりそうですわ……だからこそ、楽しみ、なんですけどね」 後にレスティア連邦の歴史上最も優秀な政治家として名が刻まれるようになる、彼女の…… 「エリカ・シュシュニック」の大統領としての始まりは、そんな謎に包まれた笑みから始まった。 管理局と、レスティア連邦と、ベルカの……そして、そこにいる多くの人々にとっての長い長い1年の始まりでも、それはあったのだから。 後書き プロローグって、よく二次創作とかでも、謎すぎる話が多いので、思いっきり謎っぽく初めてみたかった。 というか、リリカルなのはの世界観を借りた仮想戦記なので、多分肌の合わない人にはとことん合わないと思いますのでご了承くださいましw と、オリジナル国家なので、名前もわからないでしょうから、あとがきにまとめた用語集を。まずはw ・「レスティア連邦」 正しくはレスティア共和国連邦。管理局の次元管理世界の中にあって、指定管理外世界とされる中立国。ベルカの流れを汲んだ国であるが旧暦にベルカに反旗を出し、それ以降はミッドチルダ寄りの政策をとった時代もある。大統領と首相による半大統領制。人口に占める魔導師率は稀であり、それゆえに魔法と科学の融合が国の国是。質量兵器の制限をしていない。 ・「エリカ・シュシュニック」 第70代レスティア共和国連邦大統領。御年35歳。歴代最年少の連邦大統領。色々とカリスマ性があるが、プロローグ的には謎っぽく演出してみた(ぇ なお、名前の元ネタはオーストリア第一共和政時の首相クルト・シュシュニックより。 ・「アルトゥール・メートリッツ・ヴェルス」 レスティア連邦第94代連邦首相(連邦上院議会議員)。妖怪政治爺。議会工作が得意な腹黒政治家で、実質的な最高権力者。20歳で被選挙権があるレスティアで、20歳で政治家をしていたというから、どこまで政治家なんだと、実は妖怪だという説があるほど。でも、プロローグ的には謎っぽい演出してみた(ぇ なお、名前の元ネタはドイツ・ワイマール共和国時の政治家 オットー・ヴェルスより。 ・統合複合産業企業連合体「アルト・オーエン」 レスティア連邦の国営企業。国家が持つ企業として世界最大規模。複合産業企業連合体という名前から複数の軍需産業企業を新暦2年にレスティア連邦が統合したものが前身。統合、の名の通りデバイスなどの個人向け魔法技術から、核融合炉・魔導炉を搭載した次元航行艦まで軍需と関連するありとあらゆるものを網羅する巨大企業体。 まあ、こっちで公開しているのは、結構捨てているというか、挑戦的というか、あんまり上手くできていないという奴なので、批評勘弁ww 習作というか、練習作なので、いろいろと言ってくれてかまいませんが、修正されるかは本人の気分です。厨二病的なものがあっても気にしないであげてくださいw