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「暑いね……うん、暑いよ~ユーノ君~」 「だ、大丈夫、なのは?」 夏、しかも7月末。 朝のテレビでは最高気温が35度を越す陽気、と言っているような、猛暑の予感を感じさせる初夏。 学校も夏休み、暑いときはクーラーだよ~、と朝の訓練を終えてそのまま部屋のエアコンをいつもどおりに動かしたはずのなのはだったが、ボタンを押してもエアコンは動かず。 もう一度リモコンのスイッチを押しても動かず、リモコンの電池を入れ替えても動かない。 冷や汗でここまで涼しくなるなんて初めてだよ、本当に冷や汗がなのはから出ているのだから、現実はやっぱりというかなんというか絶望的だった。 「こ、壊れたのかな……?」 そういえばここ数日、フル稼働だったことを思い出すなのは。 もしかしたら、エアコンだって精密機器、動かしすぎて何かが故障したのかもしれない。 AV機器に関しては、高町家では目立って使いこなしている方のなのは、というかそもそもなのは以外が機械音痴というのもあるのだが、その手の知識から言えば、ここでエアコンを弄ると修理費がさらに取られるケース、なんて考えるあたり、なのはの意外な一面。 そのまま、ユーノを肩に載せて一回に降りて、士郎と桃子に話して、修理の人にきてもらったものの。 「ああ、ちょっとエアコンの一部部品が劣化してますね。でも、これなら明日までには直せますよ」 と、そのままエアコンを持っていってしまい、今日はエアコンもなく、また暑い一日となってしまった。 一階に行けば十分に涼しい世界が待っているが、勉強は机で、が高町家のモットウ、というかなのははとしてはそうしたかったので、今まで暑い中机で今日の分の勉強をしていたのだ。 もちろん、夏休みの課題。なのはは別に頭が悪い子ではない。むしろ上位と言えるだけの実力を相応の学力を要求されるあの学校にあって、中より上ぐらいだ。 ただ……ただ、だ。 「こ、ここやってないよぉ……」 「あの時、だいぶ休んじゃったからね」 フェイトとジュエルシードを集めようとしたとき、行動可能時間の差が大きな問題だった。 そのため、なのはとユーノはリンディさんへの協力でアースラに乗り込んでお手伝いをしていたのだが、その間小学校はお休みするしかなかった。その間、約一ヶ月。それだけあれば勉強は大きく進んていて、つまりはそういうこと。 その後、なのはは勉強をがんばってその間の差を埋めようと必死になったのだが、結局出来ることにも限界がある。もともと不得意な分野は中々埋められず、今はこういう風に暑さにも勉強にも負けそうな状態になっていた。 その苦手な分野、主には文系なのだが、中には理系でも苦手なところは多かった。 もともと、算数・数学はともかく、物理分野は苦手。 まあ、小学校でやる理科で物理なんてそんな難しいものじゃない、なのでそれはよい。 しかし、国語系の文系や、一部の理系は思いっきりできなかったこともまた事実。 一ヶ月というのは意外と響くものなのだ。 今日はアリサもすずかも別用で会えないので一人でこの難関を攻略しないといけない。だが。 「しかも、熱いし~あーあーユーノ君、暑いよ、暑い。勉強できないよー」 「……のは、それならこの国の公共機関に行ってもいいんじゃないかな? 図書館みたいなところなら、クーラーも効いていると思うんだけど?」 フェレットモードのユーノがクッキーを手に持ちながら提案する。 地球・ミッドチルダ間の航路が安定しないため、まだ帰れないユーノはなのはの家にフェレットとして引き続きいることになったわけで、迷惑をかけないようにちゃんとできる限りフェレットでいるように心がけている。 フェレットらしくクッキーをフェレットの歯で砕いて食べる。これがなかなかいけるらしい。 なのはにはさっぱりだった。とにかく暑いのだ。暑い。 「うーん。それもいいかなぁ?」 最低でも、ここの暑さよりはいいだろう。 でも、そこに行くためだけでも相当暑い、ああ暑い。この暑さの中で歩いていくのは大変そうだ。 中央図書館より家に近い地域図書館にしようかな?そっちの方が近いし、と思案を広げる。 とりあえず、行くことは決定らしい。どっちにしても、暑いならまだ勉強ができたほうが良いかな、と。 結局、なのはは小さめのカバンに勉強道具を入れ始めて、下の方に横にユーノを置いたまま降りる。 一階のリビングではクーラーを利かせて偶々家にいた美由希がテレビを見ていた。 ――お姉ちゃん、勉強はいいのかな? テレビを見て楽しんでいる美由希を見て変に心配な考えが駆け巡ってしまったなのはだった。 「お姉ちゃん、ちょっと近くの図書館に勉強に行ってくるね、ユーノ君と一緒に」 「うん、わかったよ。いってらっしゃいなのは。ああ、外には気をつけるんだよ~」 「それぐらいわかってるってば、お姉ちゃん」 それでも気をつけてねーと言って玄関まで来る姉。 手を振ってまでして送る姉に少しながら、ほかにやることないのかな、とこの年にして姉の先行きが不安ななのはだった。 手を振って送り、いざ家に戻ろうとした美由希はとあることに気づいた。 「あれ、でも確か図書館って動物禁止じゃなかったっけなぁ……?」 読書が趣味なだけに、微妙なところで気づく高町美由希だった。 ――――――――――――――― 夏の日差し、照り輝く太陽からのその日差しがアスファルトの道路に反射して、熱を発生させる。 家の中も暑かったが、その比なんかじゃない。 わざわざ、外に出るために薄着のワンピースにして正解だったかな、となのははこの暑さでヘニョヘニョになりながらも歩く。でも、ワンピースは涼しく見える分、逆に熱を直に受けやすいので、どっちもどっちか。 そんななのはを最初は、その服装に見とれながらも何とか立ち直って肩に居座るユーノ。 だが、さすがにユーノもここに来るにいたって気づいた。動物が図書館に入れるわけ無いよね、と。 「あっ!・・・…そういえばそうだね、ユーノ君。どうしよう?」 話してみると予想通りというか、なのはも気づいていなかった。 それが、ユーノを動物と見ないで一人の男の子と見てくれていたのかは、なのはの表情を見てもわからない。 ユーノとしてはそうであって欲しいと願いたいところだ。単に忘れてただけなのだろうが。 「僕が普通に人間になれば良いだけじゃないのかな?」 「あっ、そ、そうだよね、ってなるの!?」 「なるのって……だ、ダメなの?」 実のところ、ここ一ヶ月まともに人間形態でいたことが無い。 別にそれでもかまわないのだが、ユーノとしては本来人間なのだから、こんなフェレットしているよりは、よかったりする。もっとも、人間形態だとこの世界では魔力を無駄に消費してしまうこともあり、どっちもどっちなのだ。 だから、なろうと思えばなることに問題は無い。今フェレットなのも、理由は主に高町家の人に迷惑をかけないというところの比重が大きいだけなのだ。 と、ユーノが人間に戻るといってむしろ慌てたのはなのはの方。 なのはも女の子なのだ、世間体で二人で歩いている光景を知り合いに見られたら、なんて思ってしまう。 ――でも、ユーノ君は優しいし思いやりもあるし、だからって違う!? ……しかし、彼女、予想以上に混乱していた。 いつもなフェレットのユーノをお風呂に入れようとするぐらい、疎い子なのだが、同時に乙女でもある。 自分で何を思っているのか、その思いが何なのか。 なのはにはわからず、それがむしろ心配事になりそうなほどで。でも、それでも自分とユーノ君の関係は、とリセットしてしまう。そんな感じ。 「そ、そんなことないよ!うん!大丈夫、ユーノ君なら!」 「?? よくわからないけど、なら戻るね」 ゆっくりとなのはの肩から降りるユーノ。 降りた後、適度になのはから離れて、周りに誰もいないことを確認しつつ、同時に超小規模の結界を作って隔離。そのまま、緑色の魔力光がフェレットのユーノの周りを包み込んで。 次の瞬間にはなのはとそう背も変わらない少年がそこにいた。 「あ、ユーノ君。私服のほうなんだ」 緑色のパーカーに半ズボン、いや短パンか。どっちにしても、上のパーカーは夏にはちょっとあわないようなぁ……となのはが思っていると、その部分だけまた緑色の光が出て、次の瞬間にはさっきより薄生地になった。 「まあ、これくらいなら……いいかな?」 「ふにゃぁ……そんなことも魔法ってできるんだ!」 「っていうか、なのははバリアジャケットを何度も生成してるでしょ。それと同じ要領だよ」 とは言われても、なのはが作り出せたのはレイジングハートが細かい生成を処理しているからなので やっぱり、なのはから見てデバイス無しでそんなことでできるユーノを凄いと思うな、というほうが無理だろう。 凄い凄い!とユーノの周りをじぃーと見直すなのはに、むしろユーノが照れてしまう。 ――その、なんていうか自分をそんなにじっくり見られるのは始めてだから、なのはに見られるのは…… 「ふーん。それじゃあ、図書館い……行こ!ユーノ君!」 そう言ってなのははユーノの手を強引に掴む。 ええ??と疑問詞ばかりが出て、今、なんで手を取られているのかわからないユーノを他所になのはは歩き出す。ちょ、ちょっとという声をユーノも出しつつ……ちゃんと、二人で並んで歩いていくのはなぜだろう。 二人とも、そのときはまだ気づいていなかった、その思いを。確かに。 それが何なのかさえ、このとき気づいていたら、その後の歴史がまた違ったものになったのかもしれない。 海鳴市の地方図書館は3つほどある。 というのも、海鳴市がいくつかの町を合併した市になったとき、各町が今まで持っていた図書館をそのまま続けて、データベース上と統合することにしたため、となのはは昔総合科の時間で海鳴の町を調べたときに聞いたことを思い出す。 そのひとつ、海鳴第二図書館。第一は中央図書館であり、こっちはすずかちゃんがよく行くんだよね、と時々見かけるすずかの読んでいる本を頭の中に浮かべる。自分もAV機器関係は比較的好きだけど、すずかちゃんほどじゃないから、あまりこういうところはいかないけど、と。 「面白そうな本があるんだ、意外と」 「そ、そうかな?っていうか、なんでいきなり百科事典のコーナー……」 ユーノがここに入ってから、最初に来たのはなぜか百科事典のコーナー。 なのはも、国語で調べたい語があるので、ここのコーナーで国語辞典を探していたのだが、その間にユーノはたいそう厚い本を取り出していた。そういえば、ユーノ君の一族って発掘っていうぐらいだから、そういうのには目が無いのかな?と思わせるほど、ユーノの、特に本を読むスピードが異常だった。ページをめくっているだけで読んでいるように見えない、が確かに読んでいるようだった。 「わ、私も勉強しないと……えっと、この意味は……」 「その字、愛別離苦の意味は親愛な者と別れるつらさ、だよ」 「あ、そうなんだ。えっと、親愛な……って、なんでユーノ君知ってるの? 日本人以前の問題だと思うんだけど……?」 地球人でもない以上、知っていたら普通は超能力者だろう。 と、ユーノは手元にある辞書をなのはに見えるように出した。 「えっと【新○解四字熟語辞典】?」 「いま、読み終えたから」 「よ、読み終えたって……ユ、ユーノ君凄すぎだよ!」 思わず大声を上げてしまって、周りからどうしたのか、と目線がなのはとユーノの集まる。 ここにいるのは夏休みもあって同年代の子もいる、やっちゃったよ……と恥ずかしくて、そのまましぼむ、がそれとこれは完全に別だ。というか、凄すぎだ。 「ほら、遺跡の発掘とかが家業って言ったでしょ?だから解読とか読む全般は好きだから。 それにこの世界の文学って奥が深いね。うん、とっても興味深いよ 日本語の文系と主な漢字はここで過ごしていて大体わかったし、でもここまで昔からの歴史を残しているのはミッドチルダが浅い歴史しかないから余計に目立つよ。2000年以上前の資料もあるなんて凄いや!」 そういって目を光らせるユーノ。 今まで知らない、知識欲を見せているユーノを見て、なのははと言うと もうそれなりに一緒にいるのに知らなかったユーノの意外な一面を見た気分だった。 ただ、今はそれよりも…… 「なんだか、文系でもすでにユーノ君に負けているような気がするよ……トホホ……」 「な、なのは。その……勉強、手伝うからさ、教えるのも!」 「うん、ありがとう。ユーノ君、嬉しいのに悲しいよぉ……」 そう言って、二人は勉強の為に椅子に座って勉強を始めたのだった。 「だから、この文は……」 「あ、うん。そうなんだ」 顔が近い。すぐ横にはユーノ君の顔があった。 なのはにとって、今までフェレットのユーノをしっかり見たことはあっても、人間のユーノをここまで近くで見たことはなかった。距離はどれくらいかななんて勉強中なのに考えてしまう。 ――ユーノ君の顔ってこんなに……ほへぇ?な、なに考えているんだろ、私。 いけないいけない、と仕切りなおし。 勉強のノートに集中しなおしてみるが……やっぱり、気になる。 いつも、フェレットのユーノしか見ていないだけに新鮮だったのもある、だけど。 あの事件の時には気づかなかった、ユーノの一面に今、気づいて。あの時はユーノのことをあまり見てなくて、ただ前ばかり進んでいた、でも今もう一度見ると。 ――ユーノ君ってこんな顔だったんだぁ……なんなんだろ、この変な気持ち? とにかく、勉強。その後から考えよう、とノートの国語を再び書き始めるなのはだった。 その日、図書館で勉強をしていた二人組が、その年の夏休みよく来るようになり、図書館の職員の間で「珍しいカップル」として言われるようになったとかならなかったとかは完全に予断だろう。 とりあえず、勉強自体は1時間半もあれば終わった。なのはの飲み込みも凄いのだが、ユーノの先生ぶりも存分に発揮されたからだ。 何が悲しくて、自分はユーノ君に国語を教えてもらったんだろう、と少々気分は重めのなのはだが。 「な、なのは。勉強できたんだから、そう落ち込まないで、さ?」 「うん。わかってるよ、ユーノ君、その年でもう大学卒だもんね。凄いよね……それに引き換え私は……」 勉強をしている最中に聞いた話だった。 ユーノ君が大学と言える魔法学院の高等専攻科を卒業しているってことで、なのはには思いっきりショックだった。 「ユーノ君、自分は凄くないといいつつ凄すぎだよ?」 「そうかな?でも、なのはも凄いと思うよ。魔法をいきなり使ったり、本当に」 ところ変わって二人が話しているところは図書館前の公園。 さすがに図書館の中で魔法だなんだ、というのはまずいと思ったからだが、むしろ暑い。 そういえば、暑いから図書館に来たんだった、と完全に予想違いだったなのは。 そして、ベンチに座って、二人きり。 (ふ、二人きり……!?) 今日の自分は変だった。特にユーノ君と勉強をしていたときから。 なんでかわからないけど、背中が暖かいというよりも、全身が熱い。夏だから、日差しが照りつけるから、そんな理由じゃなくて、熱い。 なんで、こんなに自分はユーノを気にしているのか。さっき、勉強中も思ったことなのに、今でも理由がわからない。なんで、なぜ?どうして?理由を自分に問うてもその答えは出ない。 いっそう答えが出てくれればいいのに、答えは自分では出せなかった。 「私は、私はあれしかできなかったから」 「なのは。人間、完璧なんて無いと思うよ。 魔法だって、僕はなのはみたいな才能は無い。知識はあるけどね。 人間、何かこれだけは、みたいなものがあれば良いんだと思う。 それは日常の中で変化していくものだろうけど」 「うーん。難しいよユーノ君の言ってること」 今、こうしてなんでユーノを気にしているかもわからないのに そんなことを言われても困惑するだけしかなかった。何かひとつの大切なもの。 そういわれても、やっぱりまだ9歳の自分にはわからない。 「うーん。僕も実はわからないけどね」 「ああ、それ酷いよユーノ君?」 「ごめんごめん。でも、こうやって僕がいれるのもどれくらいかなーって思っちゃって」 ユーノ君はいつか、帰っちゃうんだよね…… それはあまりにも認めなくない事実。だからこそ、今を大切にしたい。なのはの心の奥にあるのはそれだけだ。 単純な、ただ一緒にいたいと感じる思い。それが何か知らないが、それだけは。 「ねえ、ユーノ君。もし、もしだよ? 私がユーノ君と一緒にいたい、って言ったら……ごめんね、迷惑だよね」 「迷惑じゃないけど、困っちゃうかな……? 一族のほうにも顔を出さないといけないし、ここだと僕は前回の魔力を出せないから長く人間の状態でい続けるのは厳しいんだ。ああ、でも2週間とかそれぐらい連続でいても何も問題ないんだけどね」 フェレットなら良いんだけどね、と返すユーノはどこか寂しそうだった。 まさか、一生をフェレットのまま過ごす予定はユーノには無い。そういわれて初めて、ユーノ君は人間で、決してフェレットのままでいるわけにはいかないことに気づいて。 そう、だよね。 「そうだよね、ユーノ君は発掘とかしなくちゃだもんね」 「それもあるけど、でもやっぱりなのはに色々と今回は迷惑をかけちゃったし、レイジングハートのこともあるし。 これからどうなるか、わからないけど、できるだけ入れるように努力するよ?」 なのはとフェイトのこともあるし、と話を続けるユーノ。 あの事件で友達となったフェイトと一緒に会うためには定期的に地球とミッドチルダの両方を移動する必要がある、そのときユーノの転送魔法は役に立つのだろう。そこまでしてくれるユーノにそんなことまでしてくれて悪いと思いつつも、同時に嬉しい、なのは。 ――だから、私はユーノ君の手を思わず強く握り締めちゃった。 なぜかわからないけど、後から考えてみれば、思いっきり恥ずかしいのに。 「な、なのは!?そ、その手が!?」 「そのね、ありがとうユーノ君。今日のこともそうだけど、いつもお世話になっちゃって」 「え、そんな。僕のほうがいつも高町家にお世話になってるし」 「でも、本当ならユーノ君、人間としているべきなのに、フェレットさんにならないといけないし」 「それは仕方ないし、この世界にいるならフェレットのほうが楽だから。なのはは何も気にしなくていいよ」 そこまで言われると、いいかえすことも出来なくなる。 でも、そこで納得しちゃうとだめな気がして、なのはは突然ベンチから立ち上がる。 ユーノ君のために今出来ることは……そう思った矢先、目の前にアイス屋さんがあることに気づく。 ……これだ。 「それはダメなの! 私はユーノ君のこと気にするの!そうだ、あそこのアイスを奢るよ!」 「えっ? で、でもさ」 「でもも何も無いの!さあ、早く!」 元から押しに弱いユーノ。ま、まあいいかな?と思ってしまうのは…… ユーノにも、なんとなくなのはと一緒にいたい、という思いがあるからか。 ユーノ自身、自分がなのはに抱いている思いは恋心に近いものだとわかっていても、それは禁句。 そうだと、そう思っているから、言えない。事件に巻き込んだ彼女に、それをいえる権利なんてない、 そう思い込んでいるから。 ――――――――――――――― アイスクリーム店にはさまざまなアイスがある。 その店先で、ユーノは何にするのか本当に悩んでいた。 カウンターで待つそこそこの歳のおじさん店員も、この二人を見てなにやら笑みを浮かべていた。 意味が深そうなその人の笑みの裏が何なのかはこの際良いだろう。 さて、当たり前といえばそうなのだがユーノはこの手のお店は初めてだ。ミッドにも同じようなものはあっても、ユーノはスクライア一族の人間。大半が遺跡とかそういうところで集落暮らし。 「うーん、ほ、本当に良いの、なのは?」 「うん。いつもユーノ君に助けてもらってばかりだから」 いや、それはなのはに僕が助けてもらっているだけで、といいたかったがなのはは絶対に違うというだろう。 彼女はそういう人間だ、と長くいてわかっていたから。 なのはは優しいけど、自分の意見を曲げない。それが長所でもあり、短所でもある。 だけど、そこまでまっすぐな思いは、むしろ妥協という大人の社会を知っているユーノにとって、輝く星のように見えた。そう、同じ歳なのに、あそこまで純粋な彼女の近くにいて、自分まで純粋になりそうな。 「そ、それじゃあ、なのはが決めてくれるかな、こういうの僕はあまり……だから」 「うん。それじゃあ、おじさん!このチョコとストロベリーのダブルを二つください!」 ところが、そんな会話をしている二人を見ていた店員は何を勘違いしたか あるいは、わざとなのか少し微笑むと。 「はいよ。そこのお二人さんはカップルか何かかい?それならまけとくよ?」 なんとも大変な爆弾を投下してくれた。 えっと、なんだって……かっぷ、る? 英語だよね、ミッドと言葉の同じ。 となるとカップルって、と頭を超低速で回転させるユーノ、それでも悲しいかな意味はすぐに出てきた。 「わ、私たちは幼馴染で!?というか、ええ!?ユ、ユーノ君はその!?」 「僕たちはその幼馴染なだけで、それ以上の関係はないですよ!友達ですけど!?」 「いや、そう慌てられてもなぁ……まあ、間違えたお詫びにタダでいいわ、お前ら見てるだけでこっちのお腹が膨れるわ。ほらよ、ストロベリーとチョコのダブル、二つおまちどうさんっと」 渡されたアイスをユーノもそしてなのはも、慌てつつも何とか受け取った。 でもタダで良いのか、両方とも困惑気味だ。 いいのかな、という思いはユーノもなのはも一緒だが、再びおじさんがかまわない、というとさすがにこのまま、また良いのか聞くのも失礼だった。 「ありがとうございます!おじさん!」 「いいってことよ、また来いよなー、ああでもそのときはちゃんと払ってくれよー」 結局、お礼を多く言ってなのはとユーノはその場を後にした。 アイスを食べながら、二人は歩いて。ユーノがちょっとだけ、今度は先行して。 横でおいしそうにアイスを食べるなのは、そのちょっとした動作に心を引かれる。 やっぱり、自分はなのはのことが好きなんだ、とそれは自覚させられて。 それを気にしないようにアイスを一口食べる。 「うん。おいしい、甘くて」 「でしょ?アイスって冷たくておいしいから、夏にはよく食べるんだ~」 嬉しそうにそう語るなのは。それは自分に向けられた笑顔であって、それが何より嬉しい。 そこに自分と同じ思いを彼女が抱いていて欲しいと思いはあっても、それでも。 でも、時間はもう4時になろうとしていて、そろそろ帰っておいたほうが良い時間帯。 アイスをゆっくりと、だけどあまり時間をかけずに食べる。 二人とも急いでいるのになんとなく、楽しんでいた。そんな午後の一幕。 食べ終われば、もう時間で。 「さて、そろそろ時間だね、僕も戻らないと」 「そっかぁ……人間のユーノ君というの楽しいんだけどなぁ……」 「僕も楽しかったよ、でもやっぱり、ね」 自分はここではフェレットなのだ。その招待を明かせるのはいつになるか、わからないけど。 ユーノはそれがそんなに遠くないことを願いたい、ああでも話すときにはお風呂のことが……なんて邪なこともあるけど。 「私ね、今日、ユーノ君と一緒にいて、何だかいつもと違ってとっても嬉しかったんだ」 「僕といて?」 いつもいるんだけど、それでもなのはは嬉しかったんだよ、と続けて。 なんでなのか、さっぱりなユーノになのはは満面の笑みのままぼんやりと口を動かす。 「あのね、なんていうのかな……私、今まで男の子と一緒に遊んだこと無かったから。 それにユーノ君が人間になって一緒に勉強したり遊んだの、始めてだったし」 「うーん。そういえばそうかも。」 アースラにいたときはそんな余裕は無かったし、思い起こせばこんなことは初めてだ。 なのはにとって、初めてはとっても大切なことなのだ。 そんな風に言ってくれるなのはに、ユーノはとっても嬉しくて。 そう、自分だって同年代の子と普通に遊んだの初めてだったから。 しかも、その相手が自分の好きな子で。 「だからね、一緒にいて思ったんだー」 「思ったって何を?」 なのはも、またユーノと一緒にいて、ずっと思っていた。 この思いが何かはわからないけど、でもこの思いだけは事実、真実ではないにしても。 「一緒に、ずっとパートナーでいようね? 今日、一緒にいてやっぱりユーノ君って暖かいなぁーて思ったから。ずっと……」 「……うん。出来る限り、なのはとはパートナーでいるよ、僕も」 ――この思いはわからないけど。ユーノ君は大切って思えるから ――この恋が実らなくても……でも、なのはのためになれるなら それは、二人の幼いときの約束として、未来へと運ばれる、大事な一ページの話。 後書き メモ帳で20kバイトほどの文章。自分が書く文章では長い方。もともと15kぐらいが目安ですから、私の。 うちのSSサイト初の、9歳のころのお話。空白の半年って実は大切なんじゃね?という発足から生まれたひとつの話。パートナーって言葉をこのごろ多用している自分は何がしたいんだろう(ぁ ユノなのSSシリーズの土台的な話。なのはさんは恋だと思ってなく、ユーノは自覚している。 まあ、これが19歳だと逆転しかかるわけで、まあそれはそれで面白いんですけどねー なのはとユーノって9歳のころは本当に可愛いコンビだったと思いますよ。今で言えばエリキャロぐらいに。 その手の感じで書き込んでいったんですが、ユーノ君が思いっきり引っ込み思案というか、なんと言うか。 二人って、やってることだけいえば今も昔も変わらないんじゃないか、と思えるぐらいにw っと、さて、コメント返答ー >新年が明けての初のSS。 >今回はヴィヴィオですか・・・。仄々して良かったですね。しかし、ヴィヴィオは大人すぎ! >もっと子供ぽくって良いのにと思いました。さあ、この先どうなって行くのか?それでは。PSユーはや待っています!!! セブンウィンズさんありがとーです。ちなみに実は最初はユノフェイ、でも構想が無くてユノはやで書いていたら、PCがこのPC初のブルースクリーンオブデスで吹き飛びまして、喪失感でユノはやが書けなくなりました(汗 でそのまま、長編設定とユノなのと。ごめんなさい(ペコリ ヴィヴィオが大人すぎなのは中の人(遺伝子レベル的な意味で)が聖王だったからかもしれないよ(ぁ まあ、ヴィヴィオとしては、特殊環境で育っているので。というか、あの世界親がいない子供多すぎやねん!w