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すべてを思えた、その日から。 自分は変わった。そして、自分は忘れた。 ――過去の自分が目の前の親友に代わっていたことを ユノなのSS「魔法なんてなくてもいいから」 それは、些細な理由からだった。 ヴィヴィオと二人でどこに出かけようか、と聞いたときに ヴィヴィオが「ユーノさんのところー」といったから、ユーノのいる無限書庫に行ったのだ。 ユーノのことは、JS事件が終わってから紹介して、そう考えれば六課解散からもう半年なので、ヴィヴィオがユーノに会ってから1年ぐらいだった。 書庫でいつもどおりに書物を整理したり探したりするユーノを見て、それで心配になりつつもそれは普通の一日だったはずだ。 ユーノとヴィヴィオと自分と、仕事中に入ってきてすまないと思いつつも、それはそれでいつものことだったから。 ただ、それは一日も終わりに近づき無限書庫から出てヴィヴィオと話しながら家に戻っているときだった。 「でも、ユーノさんって可哀想だよね、なのはママ?」 「え、なんで?」 仕事も充実。彼の趣味である発掘も時々やっているらしいし、何より知識欲のある彼にとって無限書庫は最高の場所だ。仕事がきついかもしれないが、それは彼が何より理解して、そして選んだ道だ。 それでも、ヴィヴィオは可哀想といって、その理由が分からなかった。 自分の母の意外な反応にヴィヴィオは残念そうな顔をする。 「なのはママ、気づかなかったんだ。ユーノさん、ずっと一人ぼっちだよ? 誰かいる、知り合いだってお友達だっているかもしれないけど。 あそこで仕事をして、ユーノさんの家に帰って。そうしたら一人ぼっちなんだよ?」 「……そ、それは……」 「一人ぼっち、私嫌いで、悲しいよ? ユーノさんも寂しいと思うし、私、ユーノさん可哀想に見えたよ、笑顔の中に…… ずっと我慢しているようなそんな顔だったもん。甘えちゃいけない、心配させちゃいけないって顔。 前、なのはママが言ってたよね、昔なのはママも家族が別れ離れで寂しかったからって。 でも、今のユーノさんって……」 『昔のなのはママみたい』 そうヴィヴィオは言った。 昔、なのはの父が仕事で大怪我をして、それでみんながいない家をなのはは過ごして。 何より、今のユーノにはそのときのなのはのように、見た目だけの笑顔、ができていた。思い返せば、最後に彼が心から笑顔を自分に見せてくれたのはいつだったか。 酷く昔のような気がした。 そのまま、なのはは何もいえなくなって、親子の会話もなく家に帰り夕食をして。 それでもなのははずっと考え事をしていた。 自分は、酷く大人びた考え方を昔からしていた、と姉に言われたことがある。 人の顔色ばかり気にして、その割には感情的になりやすくて。 誰かの重荷になっているだけじゃないか、とずっと後ろめたい気持ちがあった。 家族の中で浮いているような気がする、と思ったのもその延長からだ。 士郎に桃子、恭也に美由希、そしてなのは。自分だけ、すぐそばにいてくれるような人がいないと思ったことも少なくない。その思いは非常に幼稚だったなぁ、と今思い返すと強く感じるけど。 そんなときだった。フェレットを、ユーノを見つけて、お友達になったのは。 最初はフェレットと思っていた。でも、彼は自分と同じ年の少年だった。 それから、いやそれ以前にフェレットだと思っていたときから 自分の心の空いていたところに彼は入っていたと思えた。 自分を必要としてくれる人がほしい、自分の存在意義を、何より自分を理解してくれる人を。 そんなときにユーノはとても、自己意識が強くて そしていつもなのはのそばにいてくれるような存在だったから。 「私……それなのに……」 そして、PT事件の解決。 自分の思いがフェイトに届いて、新しい友達ができて。何より自分は彼女のためになれたと実感があって。 最後にフェイトと一緒に戦ったとき、横にいる彼女をとても嬉しく思えて。 いつの間にか、彼が、背中を支えてくれた彼がいなくても良いかのように感じて。 闇の書事件、そしてその後の管理局への就職と。自分は自分ひとりで立てるように錯覚していた。 大切な人を、そこに、あのときのあの時間に、自分はおいてきてしまったのかもしれない。 「……最後にユーノ君と一緒に一日中いたの、もう10年も前のことなのに、今でも思い出せるや……」 なのはが彼を必要としないと錯覚して、数年後、自分は落ちた。空から。 自分があまりにも無理したからだ、と思ってた。だけど、本当は、天からの罰だったのかも、と。 自分だけが前に進んで、彼を置いてきてしまったことに対する、罰。 置いていかれた彼は、今無限書庫で、一人でいる。 それが日の当たらず、自分の存在意義を限りなく薄くして、何より自分は間違っていたのかもしれない。 父は、高町士郎は家族を思って、それ以降危ない仕事をやめた。家族のために。 でも、自分は怪我をしても、前を進み続けた。 「お父さんは知ってたのかな、後ろでただ立つことしかできない人のことを」 知っていたのだと、今ではなのはは強く思う。 自分もそのとき、ただ待つことしかできない人だったから。だからやめたのだ、家族のために。 それなのに自分は進んだ。自分が進むきっかけになった彼を置いて。 そして今、自分と彼との関係は変わっていないはずなのに、凄く遠い存在のような気がして。 「昔の私……かぁ……」 表面だけは大丈夫そうな気をして、周りには心配させたくないと意地を張る。 言われて見れば、ユーノの、自分が好きだったユーノの笑顔はもう見てない。 なぜ、こんなことになってしまったのだろう。自分は周りの人を悲しいことに合わせたくない、自分が少しだけど体験した悲しいことを味あわせたくないと思って始めた魔法が、今では彼をその自分が味わった悲しみに陥れてしまっている。 何より、それをヴィヴィオに言われるまで気づかなかった、その自分が恥ずかしくて悲しかった。 「ユーノ君のこと、私は……好き」 最初から嫌いではない、むしろ好意を持っていた。 もしかしたら、ユーノを同じ年の少年だと知ったときから、彼のことは好きだったのかもしれない。 自分は鈍感だから、自分の思いにも気づいていなかったかもしれない。 でも、あのときから今まで、自分の横を預ける人はいても、後ろを預けた人は彼以外にいない。 彼が自分の肩と背中を合わせるにふさわしいと思っていたから。 そこまで考えて、やっぱり、と思う。 彼の顔、彼の笑顔、彼の思い、彼への思い。彼への思いのすべてが風化せず残っている。 自分は…… 「ユーノ君が好き、彼の笑顔が好き……苦しんでいる顔なんて見たくないのに、私……ずっと忘れてた」 彼の悲しい顔を、苦しい思いをさせたくない。 その思いが間違いでなければ、自分は彼のことが好き。そういえる自信がなのはにはあった。 恥ずかしいけど、それは紛れもなく。 でも、今まで彼が苦しむことを見たくなかったのに、それにすら気づかず。 魔法を使ったのも、最初は彼のためだったのに。 魔法をいくら上手になっても、彼を笑顔にできたのか、むしろ苦しませてしまったのではないか。 そう思えてしまう。 魔法を使えても、自分はいや、使えたからユーノとの仲は変わってしまったのだろう。 自分は進んで、彼は止まって。 魔法がなければ、自分も彼もずっと同じ場所にいたかもしれない。 「変な言い方だけど……もし魔法も関係なくて普通の出会いをしていれば、どうなっていたんだろ…… 私、もっと早く好きっていえたかな……」 魔法がなければ、なんて思ったことはなかったけど。 今、魔法を使って人を救っていることに疑問は持たないけど。 それでも、魔法を使って助けていたことで、自分は彼と一緒いることができなくなった。 彼を助けることも、一緒に笑うことも。 ――あの笑顔を取り戻したい。 自分が好きな彼を。なのはが最も好きなユーノ君を。 今、進んだ道をちょっと後戻りして彼を引っ張ってきてもいいような気がしたから。 彼が自分のことを好きだったら嬉しいけど。 もう、あのときの言葉が今も彼の中に生きてくれていれば。 「……決めた! ヴィヴィオ、今すぐ無限書庫に戻るよ!」 「なのはママどうしたの……?」 「忘れてきたものを、取り戻しに行くの!」 忘れたものなんてあったかなぁ……とヴィヴィオは今日持っていったものを頭に浮かべるが思い浮かばない。 そんなことをするうちに、なのはは用意してしまって。 「ああ、なのはママ、ヴィヴィオも用意する~」 ――――――――――――――― 「どうしたの、なのはとヴィヴィオ? 一応、もう夜の9時だよ?」 無限書庫の奥で一人、書物の整理をしていたユーノに窓口からなのはが来たことを知らされて 司書長室で聞いた言葉の第一声はそれだった。 一人で過ごしていると書庫というのも悲しくて、なのはとヴィヴィオが来た今日は、実はとても嬉しかった。 だから、調子もいつもよりよかったのだが。 ……今でも変わらない初恋の相手かぁ…… 初恋の相手は、もう手の届かない遠くに行ってしまった。 それなのに、いまだに執念がましい行為だな、とユーノは自傷する。 彼女は、前に進むことを選んで、自分は彼女を支えるために止まった。ところが、今では差が大きすぎて……彼女を支えることができなくなっていた。彼女は遠くに行き過ぎた。 だから、ユーノはそれを執念がましい、と思えた。 ユーノにとって、なのはは星。自分を照らすことも、またほとんど照らせないこともある、星。 一番近い星である太陽になることも、遠く1万光年以上離れた星にも、彼女はなれる。 「なのはママね、忘れ物したの~」 「忘れ物?特にそんなものはないと思うけど、何か忘れたものあった?」 なのはが持ってきてたのはお弁当ぐらいで、それ以外に忘れたものなんてあったかな、と不思議そうに周りを見るユーノだったが、なのははそんなユーノの行動を見ながらも真剣な目をはずさなかった。 「ユーノ君、私……ユーノ君と最初にジュエルシードを集めて……ずっと忘れてたの」 「忘れてた……?」 真剣そうな顔、真剣そうな空気、真剣そうな内容。 「忘れ物」が今日、忘れたものでないことは確かだとユーノは確信した。 「私、ユーノ君に言ったよねユーノ君がいると『背中が温かい』って」 「あ、うん。PT事件のときのあれだね。今思うと……なんか恥ずかしいかな、あれ」 「そうかも……でも、それ、今も変わらないよ」 ――えっ……? あれじゃ、まるで告白みたい……と続けようとしたユーノに反して、なのはは確かに変わらないと言った。 どういうこと、と聞く前になのはは続けた。 「ごめんなさい。気づかなかったの、ヴィヴィオに言われるまで」 「ごめんなさい?」 「だって……一緒にいようと思ってたのに、ずっとユーノ君、一人ぼっちだったんでしょう?」 「それは……」 無限書庫というところは不思議だ。 人とのかかわりが限りなくないので、逆に人とのつながりを求めてしまう。でも、彼にとって離れてしまった星を追いかけることができないことも知っていた。あまりにも彼女は大きく、早い。届かないことは最初から分かっていた。 寂しい、と思ったことがないわけでもないし、いつも思う。だから、なのはの言葉に何もいえなかった。 「私、魔法を使って幸せにできると思ってた。魔法を使って話を聞いて、そうすれば最後はちゃんと分かり合えるって。 でも……そうしていたから、私はユーノ君に寂しい思いをさせちゃって……」 「それは……違うよ。なのはは正しいんだよ。僕が……僕が弱いだけで」 「違うよ!私は……私は……ユーノ君とあったときの私は……今のユーノ君みたいだったから」 見た目だけは気が強くて。自分が思ったことにはどこまでもそうだと思うと誰からの忠告も聞かないで。 もし、なのはやユーノが人の忠告を素直に聞く人だったら、今のような関係にもなってなかった。 「私、ユーノ君がそんなに寂しいぐらいなら。魔法なんか……無くてもいいから なのははね……ユーノ君のことが、一番だから!」 一番だから、何よりも。 自分は魔法が好きで、ユーノと一緒にいたのではない。 ユーノが好きだから、彼との関係を保てる魔法を好きになったのだから。 「私、だからユーノ君と……もう一度、背中を預けられるパートナーでいたい……かな? だから、一人ぼっちでいるユーノ君なんて、見捨てられない。ユーノ君のこと、大好きだから」 「なのは……」 突然の言葉は彼の心に次々と刺さり、そして彼の心を変えていく。 ――なのはが僕のことを好き? なら、僕は?なのはのパートナーだったユーノ・スクライアは……? 幼き頃も今も変わらないあの思いは。 「ありがとう、なのは……」 「えっ……?」 言葉をつぶやきながら、なのはの前に来てユーノはなのはを抱きかかえる。 ヴィヴィオが横でじっくりと二人を見ているなかで。 「今まで、ずっとここにいて……君の手助けができれば、と思ってた。 横にも背中にもいられなくなった僕が、君にできることなんてそれだけで…… 君の事を、好きに思うのもダメだと思ってたから……」 「そ、それじゃあ……!?」 「僕も、君のことが。高町なのはのことが大好きだよ。親友としてではなく、女性として、ね」 「……ユーノ君!」 その瞬間、なのはの手もユーノに抱きつく形になって。 二人は、抱き合って気持ちを確かめ合った。互いの体は10年前とは比べ物にならないぐらいに大きくなって。 だけど、気持ちだけは、今一度9歳の頃に戻ったつもりで。 二人が対等にいられたときのように、抱きついた。 「なのはママもユーノさんも、ヴィヴィオがいること忘れてる……でも、なのはママもユーノさんも嬉しそう♪ だって……なのはママの……あんな笑顔、始めた見たもん」 ヴィヴィオがそう言ったその二人の笑顔は10年前の笑顔。 そして、今も変わらず二人の心からの嬉しさを象徴した笑顔。 「魔法が……あってよかったぁ……」 「なのは、どうして?」 抱き合って、一度離れたときになのはは嬉しそうな声で言って。 魔法がなくてもいい、と言ったなのはなのに。笑顔のままなのはは…… 「魔法があったから、私は私でいられて、それでユーノ君にも会えたから……」 魔法は、別に特別なものでも、また平和やそんな大きな理由のためにあるわけじゃない。 人が魔法を使う理由はさまざまで。 ただ、この二人を結んだ魔法は―― 魔法は、幸せのための魔法。誰かを幸せにするための魔法。 何より、それは多くに人に、そして自分たちにも幸せを運んでくれたから。 この日から、再び二人は対等の関係になった。恋人として。 二人の新しい一歩が、ここから。 あとがき 月間スランプ大賞受賞!(ぉぃ っと、冗談はさておいて。今回のSSはテーマを題名とは別に設けました。 「魔法の意味は」というテーマのつもりです。題名はその意味を端的に、だけど最後は……的な感じにしました。 リリカルなのはストライカーズでは特にそうですが、魔法を重視し、それが平和解決の手段として存在し、さらには戦わないといけない、という情勢が大きかったです。 そうじゃない、魔法は人を幸せにするものだ、という魔法少女的なお約束の原点。 そして、魔法によって分かれてしまった二人の関係。 それを対比として存在させてみたわけですが、スランプ状態なので上手く言ったか微妙なところです。 なのはは進み、ユーノは止まり。そして、はやては高笑い なのが自分が書いてるユノはやを端的に述べたものですが(ぉぃ) ユノなのでも当てはまるかな、はやて以外(笑 なのはは、結局パートナーを置いてきてしまった形となり、ユーノは置いていかれた形です。 なのはは気づいてなく、ユーノは気づいてもそれを止めるつもりはない、ユーノはなのはを魔法の世界につれてきた負い目がありますからね。結果が、A’sからStSへと続く、親友以上恋人未満な関係かなと? ヴィヴィオが、言った言葉『昔のなのはママみたい』……某巨大掲示板のユーノスレの電波を元に変えました。 読んでいた人がいればごめんなさい(ペコリ ついで言えば、このヴィヴィオ。モデルを9歳のなのはさんのつもりで書きました。もっとユーノスレの電波の書いていた方、ごめんなさい(ペコリその2 でも、実際にヴィヴィオという存在は昔のなのはを写している、特にストライカーズのENDで出てたときの魔法学院に通うようになったヴィヴィオは、近くあの9歳のなのはちゃんのような考えを持っていそうです。 なにより、小さいころのなのはちゃんは、他人が何を思っているかにとても機敏に反応するような子ですから。フェイトの思いを理解したうえで、彼女はずっと動いていたわけですし。なのはって、寂しい幼年期から他人の思いに過敏なんだと思います。 でも、モラトリアムはいつか抜け出してしまう。 『なのはちゃん』は『なのはさん』に変わって、今の彼女にはそれほど他人の思いに機敏ではないと思います。大人ですから、疑う心も、本心は、などと邪なことを知っているでしょう。だから『なのはさん』には今のユーノのことを気づいていなかった、だけど昔の『なのはちゃん』のようなヴィヴィオにはユーノのことが分かった。 もちろん、今も昔も自分の思い、自分への好きという思いには鈍感ななのはなわけですがw そういうわけで、これからユノなのを書くときはヴィヴィオが昔のなのはを代弁するような感じになるかも。親バカの元で幸せにすごしている少女、って本当になのはさんそのものですからw まあ現になのはは、祖母に訴えたぐらいに幼年期は一人ぼっちだったわけで。 今のユーノもまた、一人ぼっちです。アルフとは結局、書庫での関係であって、実際関係ではそれほど太くないと推測。もちろん、並みの……この世界の(笑)はやてやフェイトよりは十分上でしょうけどね。 魔法が作った変な関係。 なのはとユーノの物語。短編で書いたのでユノはやのようにこれから続く物語でも書こうかな? ちなみに上のとおりにユノはやはなっております(はやてさん策士w では、感想返答ー