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2008 09,01 00:42 |
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実はちゃんと長いユーはや書いていたんですが、これでは8月31日までに完成しないことに気づきまして(ぁ 八神家総動員で前後半のSSなんて書くものじゃないですね、はいw まあ、そんなこともあって中継ぎ用に書いたのがこれです。 とにかくチョコレート・パニックはやて編からちょっと経ったころの話。 うん?SS紹介はどうしたって? いや、しますけどね。 All Right Buddy!! かじりまるさんのサイトですね。あれ、出来て一ヶ月すら立ってない新しいサイトさんだw リリカルなのは系でユーなのですね。内容が緻密に計算された電子時計のような上手さです。 一度ならず何度も読んでしまう魔力付きです。さすが、リリカル・マジカル(ぁ だめだったら、コンマ3秒ぐらいで消しますのでお許しを!(汗 ああ、ちなみにうちはリンクフリー&アンチリンクフリーです(ぁ っと、続きからユーはやSSです。どうぞー! 夢、といってもそれはあの時は確かに夢だった。 足も動かず、たった一人で家に住んで。親戚も頼らずにただ、惰性と意思だけで生き続けてきた少女の。 いくつもの本を読んで、そのたびに思った夢。 恋愛小説ならなおのこと。 人の夢は儚い。でも、彼女の夢はただ、普通の人ならできると思っていた夢だった。 自分が、想像の翼を羽ばたかせて思い描いていた夢。 十数年の時が流れ、夢は現実にできるようになった。でも変わりに彼女は。 夢を夢だと思わなくなり……想像という行為を諦めてしまっていた。 彼女を待ち受けた、硬い硬い……現実という扉の前で。 ―――――――――― 春になりかけの3月上旬。 服装に偽りなし、と白い清楚なワンピースに身を包んだ女性はその服装と雰囲気からは似合わない、と一般の人から見れば思うであろう建物からゆっくりと出てくる。 時空管理局 機動六課。 エントランス・ホールも、その施設がいくら白で潔白感を出していても、そこは軍隊と警察の両方の機能を備えた荒々しく世間一般では思われている組織。 去年には首都区域ですら、戦闘が行われ防衛体制の見直しも強く叫ばれている…… 皮肉なこと、だとその少女は見た目とは裏腹にそんなことを思う。 防衛体制を強く主張した地上の防衛の責任者が起こした失態と事件が結果的に地上の防衛体制強化に繋がる。地上本部は本局の統合参謀本部の直下となってしまい、事実上地上は本局の一部となったものの、名を売って実を取る、という意味では地上は前よりも強力になったとすら言えるのだから。 むしろ、機動六課の試験運用機関中に事件が起きてしまったことを喜ぶべきなのか戸惑うところだ。 それも事件と日常を切り離せば、そこは海から入る風が入る心地よい場所だった。 こうやってのんびり空気をここで吸うこともなかった、と青空とそこにある自然に少しばかり浸って見る。 ただ、自然というものが本質的には人が作り出したものでしか無い以上、そこに感じるのも人の意思なのかもしれない。清々しさもある。その中でたちながら待つ時間がまた、ちょっぴり楽しい。 そんななかで、一人庁舎のエントランスホールを抜けた正面玄関前で待つのは、意外と目立つ。 こないかなぁ、こないんかぁ、と持つ一時も確かに楽しくはあるのけど。 それでも、やっぱり退屈だった。彼女には。 「待ち合わせはここやのに、なかなかこなへん……仕事でも入ったんかなぁ?」 そう思って時計を見て見るとまだ約束した時間の20分前。自分がそうとうノロケだったことに気づいてはあぁ、と顔を赤く染めながら溜息一つ。 初めての一つ。今日は始めてのデートの日なのだから。 そんなこと、といえばそれまでのそれに一週間以上前から楽しみにしてきた彼女としては20分ぐらいどおってことはないが、そうだったとしてもやっぱり不安になる。 時間が余ってちょっぴり庁舎の周りの歩いて見ることにすると、足を動かして回り始める。 麦わら帽子に白いワンピースの今の服装だと、よく見ないと誰か分からないだろうなぁ、と思いながら草と木と花が植えられている周辺の散歩。 一歩一歩歩いてみて、自分ひとりでこうして歩くことは滅多になかったことに気づく。 六課設立とかそういう問題じゃない。自分で歩けるようになるころにはリインがいつもいて、それより前は大切な家族がいた。 そして、それ以前は車椅子で、そもそも歩くことができなかった。 もしかしたら、本当に小さいころ、記憶に残らないような昔なら歩いてお父さんやお母さんと一緒にいたのかもしれない。でも、父と母の記憶すらほとんど曖昧な彼女はそんなことを覚えているわけもなく、ただここで歩いている自分に新鮮な何かを感じていた。 歩けることが今では普通に感じられる。 それは嬉しいことでもあり、同時に歩けなかったころの自分を忘れつつあるということでもあって。 そんななかをこの花綺麗やなぁーっと時々感心しながら歩いていく……と一つの花に目が止まったところで。 「なにしてるのさ、待ち合わせ場所にいないで?」 彼の声が響いた。 後ろを振り返って見ると、確かにそこに彼はいて……時計を見直すとまだ15分前。 「そうやね……ユーチャリスを見ていたんやよ」 「ユーチャリス?」 不思議そうに尋ね返すユーノ。いくら博学でカーネーションを用意していたな彼も地球の花まですべておぼえているわけは無く……つまり、この花はフェイトちゃんかなのはちゃんの花かぁ、となんだか面白いだけに笑みがこぼれる。 でも、今の時期と気候では本来育たない種類なので、魔法で保護しているのかもしれない。 「そやで、ユーチャリス。白くて綺麗な花、やとおもわへん?」 「うーん。ボクにはよく分からないんだけど」 確かに綺麗ではあった。彼女の横にまできて一緒に見つめるユーノ。 二人揃って花を眺めている光景はとっても自然体だった。さすがに彼女は二人で眺めていることに気づくと少し照れてしまう。こうやって異性と二人だけで花を見つめることも……今まで無かったこと。 二人揃って少しの間、そうやって花を眺めていて。それで。 「まあ、ユーチャリスの話はおいおい言ってあげるわー」 「なにさ、それ……それはそうと、今日はドコへ行く?」 自分も初めて、もちろん相手も始めて。手探り状態のデート。 思わず、彼女もユーノも笑みを少しこぼして笑いあう。これも、また初めてかもしれない。 そんな穏やかな恋人同士の……はやてとユーノのお出かけだった。 ―――――――――― デートの行き先は、クラナガン北部の公園だった。しかも、ごくごく普通の。 それがデートなんだか、よく分からないけどはやての希望だった。 今日六課に来て、白いワンピースを着た彼女を見た時にはさすがのユーノも一瞬見間違えたと思ってしまったほど。もちろん……綺麗過ぎて、なんて言えなかった。 そんな彼女と一緒にユーノが持っていた車に乗ってここまで来たはいいものの…… 「ほら、おっきな木やなー!」 はしゃいだように歩くはやて。 公園を恋人と歩く、なんて昔は本で読んで夢のままに終わると思っていただけに感慨深かった。 騎士たち……家族と会う前は、未来を本の中でしか想像できなかった自分が今、こうしている事実はあまりにも猪突かもしれない。まともに動くこともできなかった自分が元気に動けるようになった代償が、逆に想像できなくなったことなら、今の自分は、と考えることを許して欲しい。 今、自分はこうして夢だと思っていたことを現実として生きているのだから。 「まったく……いきなり走るからどうしたのかと思ったら……はやてらしいけど」 「わ、私らしいって……そんな良く走る子に見えるんかぁ?」 「だって、名前が疾風(はやて)でしょ?」 そういわれてみれば、足が動かない不自由な子にしてはやて、の名前は少し願いがあったのかもしれない。 小さいころからゆっくりと侵攻していたその足の麻痺に対して。 あるいは、今こうして歩くことができてこうして彼と一緒にいることを誰かが予想して…… そんなことはもちろんありえるはずがないとしても。 そういえば、あのころの思いだった、と今こうしている彼に付き寄ってみて気づく。 「そーいえば、そうやね……今、初めてそう思った」 「でも、こんなところでよかったの?」 パッとするわけでもなく、恋人のスポットですらない普通の公園。少し大きいだけの何の変哲も無い公園。 もっとまともなところはいくらでもあるのだろうに、なぜかはやてはここで良いと言った。 お金は余りあるほど一応あるんだけど、と思ったユーノも、そこまで言うならと彼自身彼女の願いを聞いていた。 「そういえば、一つ話をしてもいいかな、はやて?」 「問題ない範囲なら……ええけど」 木々を眺めながら並木道を進む二人。春の並木道には桜の木が花を咲かせようとしていた。 「こうやって、桜の木を眺めるとさ。桜って何でこんなにすぐ散っちゃうんだろうって思うんだ」 最初に地球で見た桜はわずか数日で散ってしまうものだった。 ミッドチルダで植えられている桜はこれより日持ちするものではあっても、それでも数日で散ることに変わりは無い。ミッドといっても管理外世界を転々とするスクライア一族では、桜の木を長く見ることは無かった。 地球でそれを見た時といえば。 「はやてやなのはたちと一緒にいたときに最初に見た桜は何の脈絡もなく、ただ騒いだ中で見た桜だったけど。 そんな桜なのに、なぜか目を引くのはなぜかなって思って」 「そーやね……できないもの、っていうのは何かしら本人には失点でも 実際にはそのおかげで得られたものがあるもの。桜の木も同じやない?早く散る変わりに……ほら、色がとっても綺麗」 ちらりはらりと散っていく桜。 日本人でなければ理解できないという儚い散りざま。その一瞬のために人は一年も手のかかる桜の木を日本中に植えた。はやては……ミッドでも珍しい桜の木が植えてある、というだけの理由でこの公園を選んだのだから。春に近づくこの時期、どうしても見ておきたかった。 首からネックレスのようにかけたシュベルトクロイツが光って優しく反射する。 「できないもの……そういえば、前からずっと思ってたんだけど。 なんで、君は今は……あまり本を読まないの?無限書庫に、その恋人になってからもこなかったし」 ふと気づいた一つの疑問。 八神はやては本を読まない、意外な事実は確かにここ数年彼女がほとんど本を読んでいない事実が証明していた。彼女を知ったユーノが最初の思ったことは、よく本を読む子、だったはずなのに。 読む時間が無い、といういいわけをするつもりもなくはやては口を開いて話す。 「そうやね……ユーノ君はなんでだと思う?」 ふと、ユーノの片手に抱きついて……はやては聞き返す。少し震えながら。 抱きつかれて恥ずかしいところのユーノだったが、そのまま正論を言って見る。 「仕事が増えたから、かな?そのせいで僕もあまり考古学の方ができなくなってたし」 「あー。それはあるわな。確かに忙しいよ。でも、本は一瞬でも暇が出来れば普通は読めるものやろ」 「……そうかもしれないね。無限書庫で本と毎日触れてるのにそんな単純なことを忘れていたよ」 図書館五原則、はやても知っているそれは確かにそう言っていた。 ――――― 本は利用するためのものである 本はすべての人のためにある。または、すべての人に本が提供されなくてはならない すべての本をその読者に 読者の時間を節約せよ 図書館は成長する有機体である ――――― 利用するため、すべての人のため、そして時間の節約。 それは、かつて毎日読んでいた本、そして通っていた図書館で聞いた話。 「本はすべての人のためにある、でも……でもなぁ」 「でも?」 「……私は、本を読んで何かを想像する、そんなことが出来なくなってた、いつの間にか」 その言葉でユーノも口を噤む。 はやてにとって、昔からずっと繰り返してきたこと。本を読んで想像して楽しむ。 それがどんな本でも、SFでもミステリーでも、恋愛小説でもファンタジーでも。 特に家族ものが。 想像することがはやてにとっての楽しみだったから。 でも、それはある日突然崩れた。あの子たちがやってきた日からゆっくりと見えないままにでも確実に。 「まだ、9歳のころの私は自分と家族、それだけを考えていればよかったから想像出来たけど…… 今、仕事を始めて管理局の冷たさを知った自分が読んでも、それに想像の翼をつけられなくなっとったんよ。 ユーノ君とその恋人になれたことはとても嬉しかったんやよ? でも、無限書庫にいけなかったのはユーノ君が嫌いやなくて……本が、怖かった」 恋人になってから、はやてはあまり無限書庫に行かなかったし、いってもすぐにユーノと一緒にどこか食堂なり訓練場なり、司書長室に移動した。それはそういうことだったのだと納得しつつも、そんなことになってきたことに気づかなかった自分に少し恥じる。 本の代行者たる司書長の自分が、恋人の本への思いすら知らなかったことに。 「それは、多分自分にとって大切な人が出来たことの代償やと思ってた。 足が動くようになってから、余計にそれは強くなって。本を読んでも何も想像できへんようになっとった。 そんな私が、本を読むことを許されるんやろうか?歩けるようになって家族が出来た代償ならこれぐらい……」 これぐらい、なんともない。 本を読めなくなってから、夜天の書ばかり読んでいた。でも、それを覚えられてもその内容を改良するような想像は出来なかった。夜天の書ですら、自分に取っては敵になっているようで、時々投げたくもなった。 でも、リインフォースの残したもの、と思うそれはどうしても離せなかった。 そう、ただそれだけ……それだけだから。 「本が読めないことに、理由なんてないだろ、はやて?」 「……ユーノ君。でも、想像できへんかったんよ?」 「それは単にはやてにとって、想像に値する物語じゃなかったんじゃないかな? 家族の物語。それって……もう君がかなえた夢だったんだから」 「!?」 現実になった家族との生活。現実となった歩ける生活。 そんなものが無かった中でそんな未来を想像したはやては、それが夢そのものだった。 でも今の夢は、偉く現実的で。 部隊を持つ、ちゃんと管理局を……そんな夢は、あの時の夢とはまったく違った。 単に現実のそれを進めるだけのもの。 かつて、一人で見た夢のような現実とはまったく違うユメ。 ユーノにも似たような思い出があったから、それが何より理解できた。 「僕も似たようなことあったからね」 「ユーノ君にも?」 桜並木をただただ歩き続ける二人。はやてがユーノに抱きつきながら。 そこに何かを求めるというよりも、ただそうしていたかっただけで。 「……僕だって一人だったから」 「あ、ああ……」 はやてが一人だったのと同じように、ユーノも一人だった。 いや、ユーノ君は、ユーノは……とはやてはそれをも理解した。今も、まだ一人だと。 家族もなく、スクライアの一族に育てられたとはいえ、彼もきっと年頃の子供らしくない人生だったのだろうことが安易に想像つく。ユーノ君は何でもできる、そんな第一印象はそんな彼との裏目なのかもしれない。 「一人だったから、そうではない未来を想像したかった。きっとそうなんだ。 でもね、ジュエルシードが散らばってなのはやフェイトや君に……はやてに会って、ちょっとだけ変わったから」 「変わったんかぁ?」 「変わったね。きっと、君達に会わなかったら味気なく遺跡発掘を生涯続けたまま、目標も無く怠惰で生きていたかもしれない。遺跡発掘は楽しいけど……誰かのためにやる仕事じゃ、ない」 遺跡発掘は歴史を覆すことはあっても、それが人にとって有益かどうかは完全に別。 歴史学者は本質的に、歴史を変えることに自分が歴史に名を残すことに生涯をかけている意味で、局地の事故中心主義者だ。そんなまま自分が過ごさずにいられたのは。 きっと、暖かい世界を知ってその中に入れた、と思ったから。ユーノにとっては。 「きっと、はやてたちのおかげ。でも、そのせいで本を読んでも感動しなくなったことはきっとない。 はやてにとって想像する対象じゃなくなっただけで」 「想像の対象?」 「だって、君が想像したかったことは、今現実になってるから」 ファンタジーやSFは、今のミッドチルダそのもの。家族愛は、家族がいる今は創造する必要もなく 歩ける自分は動けないころに思ったことは考える必要が無くなって。 それで……恋愛も、今は。 「そっかぁ……そうかいなぁ?」 「どうだろ、僕もよくは分からないから、ね」 「あー。ユーノ君、それは酷くあらへん?」 「ふふっ、でももう一度読んでみて。だって、図書館は成長する有機体、だけど、それははやてもだろ?」 はやてだって成長するんだから、とそう言いたいらしい。 なんだか、本の話でここまで深刻に考えた自分が馬鹿らしくなる。 本は自分にとって大切なものだから。 「そうやね……夜天の書、私の元へおいで……」 ふっと、一瞬の魔道の光の後に本が一冊現れる。 夜天の魔道書は、今は彼女専用のストレージ。ただ、この本には魔法だけじゃなく他の話も入っているだけ。 「これも、本やからなぁ……。ゆっくりとあけて読んであげるべきかもせーへん」 本である以上、読むためにある。それは事実だろう……それに。 「ユーノ君がそこまで言うんやし、ね?」 「そう言ってくれると話したかいがあったかな、本を読みたくなったら無限書庫に来れば、面白そうな本でも渡すよ?」 「いや、ユーノ君に尋ねると難しそうな専門書を渡されそうな気がするんやけどなぁ?」 「なにさ、それ」 微笑で返すユーノに同じく笑うはやて。 ……実際にユーノが渡す本を想像すると科学書でも渡されそうな気がするのは、はやての勘違いなのか、それとも事実なのかはまた後になってはやて自身が笑みを浮かべながら引きつる笑顔で理解することになる。 ―――――――――― その公園のメインは大きな桜の木だった。 本当に大きい、樹齢はいったいいくつぐらいだろうか、と考えてしまうほど。 桜並木を歩いた先は丘になっていたのか、その大きな桜の木のあるところが頂上だった。 「おおっ、あそこから見るとミッドが一望できそうやなー?」 「どうだろ、確かにここは北部で高いから見えるかもしれないけど……」 見れるとしても、それが綺麗な姿かは怪しいところ……と言おうとしたら、大きな桜の木の先にあったのは…… 「ここ……クラナガンが一望できるんだ……」 「……私もしらへんかったわ……凄い……」 二人がたった先にはクラナガンの町並みが見えた。 巨大なミッドチルダでは、超高層ビルが建ち望む。標高1000m程度の北部の公園の丘の上から見た先には管理局の地上本部ビルが大きくそびえたつ街がうつうつを見えた。 ここからの景色は、クラナガンの発展とともに変わったのだろう。この木々は何も変わらないまま。 そう、変わるものがあればまったく変わらないものがあるように。 「そうや!お弁当用意してきたんやった……ユーノ君も食べてくれるかぁ?」 「もちろん。一応、その……彼女の、お弁当だからね」 恥ずかしそうに、だけどしっかりと言うユーノ。 シートを出して、篭からお弁当を出して。さっそくお弁当を食べる。 その景色と、桜の木の下で食べているだけで二人とも笑みがこぼれる。 「うん、はやてってお料理得意だよね。僕もこの味は出せないし」 「料理を男の子に負けるつもりも、譲る気もあらへんもん。ちゃんといつもユーノ君に食べてもらうでー」 「あはは、それはありがとうって毎回言わないとね」 笑みに笑みがこぼれながらも話し続ける二人。幸せここにあり、である。 桜の木がそんな中で花びらをひらりはらりと散らす。 「そうそう、ユーノ君。桜で思い出したんよ」 「うん?」 食事も終えて、一息入れて、ユーノがはやてに夜天の魔道書をちょっと読ませて、と無茶なことを言ってそれでも仕方ないと思いつつ夜天の書にええかぁ、と聞いてみてから渡す。 ストレージでも、この書物にはきっと何か心があるように今は思えた。少しだけユーノに渡されても良いような表情を本がしたように見えたのは錯覚かもしれないけど。 「日本では、桜が国の花なんよ。たった、数日しか咲かない花がやで」 「へぇー。国の花かぁ……ミッドじゃ考えない概念だね」 「日本では、なぜかそんな数日しか咲かない木を日本中に植えたんよ。 もともと、日本ではあまりない桜の木が一杯あるのは植林したからやからね」 日本では、数日しか咲かない木をそこらじゅうに植えたのだ。 もっと長く咲く木もあるだろうに、わずか数日の木を。 言われてみれば不思議な話である。なぜ、そんな木を植えたのか。 「そんな数日しか咲かない花に儚さを感じて、って話やったと思うけど……ダメやな、本を読まなくなってからそういう知識にはどうしても劣ってしまってるわ」 前ならそんなことも簡単にいえただろうに。 本で得た知識がはやてにとっては人格形成にも影響をした。それは本で得た知識が自分にとって有益に働いていたから。いつだって話す時、その知識量が話を自分でコントロールできる最上の策だったから。 「話を上手く持っていくには知識量は色々便利なんやけどなぁ……フェイトちゃんやなのはちゃんなら勝てても本を読んでない今の私にユーノ君と話すとどうしてもボロが出るわ……恥ずかしいことで」 「そんなことで気にしてたの?」 「き、気にしちゃわるかぁー!?」 話を相手に主導権を奪われるのは、はやてにとっては面白くないのだ。 特に、恋人だったりすると遊ばれているようで。いつも人を挙げ足をとって話し遊ぶ人にとっては余計に。 「いやね、はやてってそんなことを気にする子なんだなーって思って。予想外」 「わ、悪かったなぁ!私はそんなことをユーノ君の前やと気に女性ですよーだ! ……だって、話していて不安になるんやもん。こんなこといっても大丈夫やろかぁ、って」 「そんなの誰だっていつだってそうだと思うよ。だから気にすることもないさ」 そういう自分も色々と心配だけどね、ということはせず。 自分だって心配だけど、それでも言えることは言えばいい。それが何よりの意思表示だから。 「でも、桜ねぇ……まあ、散っていく桜を見ると又来年も見たくなる、って衝動には駆られるかも」 「そうやろ、そうやろ……だから、そのなぁ……?」 「うん?」 ユーノに後ろからいきなり全力で抱きつくはやて。 脅かしと遊びも多分に含みつつ、でも本気でもあって。 どきっ、どきっと、心臓の鼓動がはやてからユーノに伝わって鳴り響く。 「また、一緒にこよなぁ?ユ、ユーノ……」 「……そうだね、はやて。その時はちゃんと本を読んで、ね?」 「ははっ、できるだけ読むために無限書庫で本探さへんといけないなぁ、これは」 そういって二人揃って笑い合う。 とても、楽しいその時間に。 「昔は、足動かなくてこんな光景見ることもできへんかった…… だから、そんなことを大切な人と一緒に見ることができる想像を本の中でしてみた……叶ったってことやね」 「さて、それじゃあこれから僕はどうすればいいのかな?」 意地悪に聞いてくるユーノ。 決まっている、と断言するとはやては矢次に言った。 「こうやよ!」 と。 それが抱きついたままのお熱いキスシーンのは、なんていうか、お約束である。 それでも飽きずにするのは、二人の愛なのか、それとも…… 恋人との最初のデートは、不思議なデート。 麦わら帽子でゆっくりとする二人のデート。でも…… 二人にとっては、それが一番落ち着くデートなのかもしれない。 本とユメと、それと桜の……すべての先の。 ―――――――――― おまけ デートをした日の翌日の話。 無限書庫は巨大データベースである以上に、その古びた作りと古風な雰囲気、あまり足を踏み入れたくない感じからほとんど部外者がこない場所だった。 きても、真っ黒なクロノ・ハラオウン提督だったり、砂糖大好きのリンディ・ハラオウン総務官だったりとさまざまだ。後は本当に時々高町教導官が数年に一度と、本当に誰もこない。 もちろん、仕事で来る人はいるがすぐ帰る。書庫で調べ物をする人はそもそもなく、すべて司書に探すのは任せるのがここの原則だった。 そんなわけで、書庫受付と言っても誰もこないので、ほとんど仕事の無い職の彼女は平日の午前にも関わらずのんびりとお茶をしていたのだが。 「あのー?」 「あー、迷子ですか?」 ここは迷子センターなのだろうか、と管理局地上の服を着た彼女、八神はやては二等陸佐の章をつけながら思った。同時にそれは受付の人も見えたらしく……一瞬で顔色が変わった。 「に、二等陸佐!す、すみませんでした!」 「い、いや別に粗相等はどうでもいいんやけど……」 管理局では闇の書事件もあって、まだまだ小娘扱い、下手をすれば邪魔者扱いの彼女はあまり気にした様子も無かった。どっちでもええわ、というのが実情だったりする。 「えっと、その資料の要求でしたら……」 「いいや、違います。ちょっと本を探したくて」 「ああ、図書の検索なら司書に言ってもらえれば」 「……いや、自分で面白い本ないか、見たかっただけなんやけどなぁ……」 そういわれて、困った様子の受付。そんな用事でかつて無限書庫を利用した職員がいないのだ。 読みたい本を探しに書庫に来た、などという人が。 もちろん、すべての本を網羅しているので、読書できる本も大量にあるのだが…… さすがに保安上の問題がある様子で、仕方ないなぁ、と思って引き下がろうとすると。 「別にいいよ。僕の……恋人だからさ、ねぇ、はやて?」 「な、な、な!?」 後ろから声がかけられ、その犯人がすぐに理解できてしまう。 しかも、受付係がいるのに、そんなことをばらしてしまうとは、何を考えているんや、と言おうとしたら。 突然、手をつかまれた。 「は、はい?」 「いや、本を探すんでしょう?僕が手伝うから、ね?」 あわわ、と後ろの受付係も声が出せなかった様子だった。 まあ、いつもはだんまりな司書長に恋人がいて、しかも二等陸佐で美人!? 彼女が、はやての名前を知らなかったことは良いことなのか、それとも世間から離れすぎているというべきか。 「ああ、受付のリンカさん。このことは内密によろしく」 「へっ?あ、はい。司書長!お幸せにー!」 そういって書庫の虚空に消える二人を尻目に、リンカ受付係はまたサボって、編み物を始めるのだった。 一方の二人はというと。 「うわー、やっぱりすごいなぁ、無限書庫は……」 「でしょう?検索魔法はシュベルトクロイツと夜天の書に……出ておいで、夜天の書」 ユーノの言葉でなぜかはやての夜天の魔道書が実体化して出てくる。そのまま本に検索魔法を書き加えて……ど、どういうことなのかよく分からないままだったはやても冷静さを取り戻す。 「な、なんでユーノ君が私の夜天の書を呼び出せるんや?」 「この前借りた時に意気投合しちゃってさ。この本、意思があるように僕にサブマスター権限をくれて」 「……私に許可なく変なことしてくれるなぁ、夜天の書……まあ、ええけどなぁ」 本を手にして、ゆっくりとなでるはやて。と、それはともかく。 「本、探して読む気になったの、はやて?」 「……読んでみないと、やっぱりわからへんけど、読んで見る価値はあると思ったから」 「そっか……じゃあ、僕が推薦するような本を」 「いやいやいや、だって前も言ったけど、ユーノ君が推薦する本って……」 と、夜天の書を広げてページ045を開く。 同時にユーノの手を強く握ると…… 「専門書ばっかやん? ……スレイプニール、羽ばたいて……だから一緒に探してもらうで!ユーノ♪」 ページの魔法は、スレイプニール。高速移動魔法。 黒き羽を広げて、一つだけ。 ユーノ君の手を捕まえて……無限書庫の逃避行や! 本を再び読む少女。 想像の羽は、スレイプニールのように広げることが出来ることを信じて。 その心は……ユーチャリスの花言葉……「清らかな心」のように。 ―――――――――― 後書き 一応、書き終えたのは8月31日だと言い張っておく。 そうしておかないと目標どおりにならなかったことになるから(ぁ でも、チョコレート・パニックの直系のSSですけど、当初書いていたのとは完全に別。 書いていたのは別途にありますので(ぁ これは絵があったらニヤニヤだなーと思いました。 最後のユーノの後ろからはやてが抱きつきをするシーンとか特に。 両方本来いるべき両親=家族がいなかった、ということなので、それを「本」で表現してみました。 本が彼らにとっては生きる糧。ユーノにとっては今もですか。そんな感じに描いてみました。 本を読む理由がなくなったはやてが本を「読めなくなる」というのは、ある意味現実味あるのかも。 実際のところ、夜天の書は読んでいるんですから、それは無いと思うんですけどね。いや、マジで(ぁ A’sを数話見直してから見て、はやてさんが元病人だったことに気づいた(ぉぃ なので、足を動かなかったことも加味して、色々書いたつもりだったけど、実はだいぶ抑えた内容。 合計してテキストで本編18.5kバイト程度ですから、昔に戻って短い内容にどれだけ詰められるかを試してみました。まあ、おまけは別枠なので合計20kバイト超えた程度かな? StSでは本を一切読まない&病弱の気がなくなって、個性が縮まったせいでキャラクター性が弱まったはやてちゃんです。いや、本当にA’s見直して思った。自分、実のところStSではやて好きになった変な人ですが。 A’sがあまり好きじゃなかった、ともいえるw まあ、そんなわけで、主なSSの方は家族テーマで書いています。 そのため、こっちではリインすら出ないで二人だけです。もう一つ書いているのは八神家全員集合なのでご安心を。 とにかく、ユーはやは書きにくいけど、テーマがはっきりすることがすっきりする話しです。ええw コメント返信 >今回は仄々でしたね。この話は本当にMY FAIMLYの影響がありますね。しかし事故は家フェイトの胸に触れてしまうとは・・・。
>其れは確かに恥ずかしいでしょね。コレがなのはならSLBでしょうね。はやてならふざけてもっと良いでと良いそうですね。でもラグナロクもありかな。 >でもその中でなのはとフェイトのユーの争奪戦。さあどうなるのやら。 >それとはやての花火の火薬は幾ら質量兵器禁止でも大丈夫だとは思いますが・・・。 >次回はユーはやかSTSのアザーストーリーを!それでは。! セブンウィンズさん、こんちわー! いえいえ、花火はネタなので、そこらへん気にせず書いてみました。 で、今回はユーはや。本がテーマです。本を読まないはやてちゃんなんて、はやてちゃんやない!って感じで。足が動かなく、外に出ることすら難しいはやてだったからこそ、本を読んでそこにある世界に浸っていたんだろうなぁ、というのと想像を上手くかけていれば嬉しいかな? 家族問題は、今書いているほうでどうにかする予定。だからMy familyの方は実のところ、もう一つ家族で書いているはやて編で書いていた方がこのフェイトさんの話より影響受ける予定です。はやてさんの出来ている家族のほうが、ファミリーへの問題定義は強い気がする。特にヴィータとかヴィータとかヴィータとか。 この話しではあえてリミットしたのは、そういうことなしの二人を描いてみたかったからだったりして。 この話し以降、はやてさんの無限書庫通い妻が始まります(ぉぃ >ストラーダ持てるのにパラソル持てないエリオ可愛いとか、とっさにプラズマザンバーブレイカーうっちゃうフェイトさんいいねーとか、勝手に隠蔽してしまう・・・管理局恐ろしい子とか今回も色々と思いながら楽しめましたww
>グリさんの知識がユーのを通して十分に生かされてたなぁ・・・と(心理が~とかね)。 >コレだけの字数がかかると起承転結の承と転が難しいんだろうなぁと >起と結まで持ってく間が難しいんだよ、小説は(ぇ >少しエリ×キャロもはいっててだいぶ満足でした(ぁ >次回も期待してます~☆ 白ぅ神さんこーん♪ いえいえ、スイカじゃなくてリンゴなのは、実はアヴァロンという楽園みたいなものをベースにあの世界を描いてみたので、その島の名産はリンゴなんです。だからリンゴ。リンゴは禁断の果実でもありますw 字数は少ないほうが難しいですよ、起承転結。これ、できてるか怪しいですしw エリキャロ?えー、私はエリオ&キャロな人です。ええ(ぁ かんそうありですー! >確かにあの後の続きは難しそうですね。
>結婚してたの知らせてなかったて事でいろいろはやて達に文句いわれそう キッシーさん、感想ありー! しかし、そういわれると書かないといけないような気がして困ったなぁー。できないことないだろうけど。 恐らく「送ったよー?結婚しましたって?」「いや、4月1日やったから、あれエイプリルフールやと」という返事が返ってきそうw 今回は、ちゃんとログ残ってWeb拍手があるのですが、まあWeb拍手は非公開ーと昔言っていたのでやめておきますw そういえば、掲示板ぐらいつけようかなーと思うのですが、どうでしょう? 欲しいかどうか、意見をくれると助かりますw こっちのコメント機能より書きやすいなら作るんですがw PR |
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コメント |
今回のSSですが・・・。良すぎです!!読んでいて想像して微笑ましく感じたり自分も変な笑いが・・・。やはり良いですね。ユーはやは。コレを読んで本当に自分はこの属性者だと感じます。それは兎も角、今回は読書が出来なくなったはやてをユーノが導いていく、成程と言う感じです。そんなシリアスの中でもラブラブな二人。本当に微笑ましいです。次回待っています。
【2008/09/0108:44】||セブンウィンズ#2aa0513733[ 編集する? ]
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