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機動六課解散から約半年。 もともと、対レリック対策として設立された機動六課の解散は想定されていたこととはいえ問題が多々残っていたのも事実。
レリックこそ、JS事件においてすべて接収したとはいえ、スカリエッティが盗んだジュエルシードのいくつかは無くなったまま。 ただ、それも管理局中央捜査局、聖王教会調査部が動き出し、その後の移動調査を始めており発見は時間の問題とされてはいるのだが。
何はともわれ、新暦76年4月。管理局世界は基本的には平和だった。 そう、基本的には、だが。
時空管理局・ミッドチルダ連邦直轄区 無限書庫
無限といってもない書物もある、けど数は無限に近い、というジレンマに近い問題 (なんせ、数ありゃ何でも探せると思った当時の管理局が見境なく書物を入れたため、ミッドチルダの魔法技術体系の隣にベルカ風ポテトサラダの作り方の書物がある) が発生していた当時の無限書庫からいくらか整理されているが、それでもまだまだ書物は整理し切れているとは言いがたかった。 しかも、古代ベルカ時代の書物が、当たり前だがミッドチルダが設立した書庫なので、相対的に少ない。 これは管理局にとっても、古代ベルカ関係のロストロギアデータの少なさ、更には行動の追手追手も含めて 無限書庫にベルカ系の書物を多く入れることが決定されており、書物自体の量が多くなることはほぼ間違えない。
ただし、それらベルカ系書物は最初から整理された形で、ベルカ自治区の聖王教会から送られ、すぐに整理済みデータなので整理区画行き。 別にそれで大変になるか、といえばむしろ楽になる部分もあった。
というのも、これにあわせて書庫への人員増強および、5年ほど前より変更された司書試験により司書全体数と想定司書増員数の増加が決まったことも大きい。 実は今まで、この手の仕事、司書官を志す人は決して少なくなかった。 ただ、司書になるために司書試験が難しい試験であること、例え合格してもミッドや管理局が要求する司書数が少ないこともあって 無限書庫に就職する司書たちはだいぶ少なかった。
まあ、ミッドチルダでは司書があまり重く見られていなかったこともあったのだが 近年の「闇の書事件」以降の無限書庫の活用性の発見。 そして、そこに属する司書の活躍がミッド政府・管理局内部でも知られると、司書の重要性からまず司書試験のレベルを落とし(といっても質は落ちないように努力し) なおかつ、管理局・ミッド政府とも司書の必要数を増やすことを決めたためだ。
これに伴い、ユーノは無限書庫司書長より、無限書庫館長への昇格が提案されている。 これは司書長、という意味が「司書の上級位職」という形で、司書と束ねる仕事をしていたことに対して 「書庫を統括する」という意味をもつ館長にすることで、人員・書物数の大幅増加する書庫の効率的な管理をできるようにされたためで 同時に数名の「司書長」を新たに増設し、書庫の書物管理に対して大幅な再編ともなっている。 これに伴って館長の権限が、書庫の人員と予算を要求や実戦部隊と同等の権限を目的に上げられている。 ただ、明確な権限は出されてなく、曖昧な部署ではあるが。
そして、すでに4月。それらのうち、ユーノが無限書庫館長になること以外の再編ははぼ完成されている。 それも、ユーノがそれだけの権限を自分に与えられるのを嫌ってであり といいつつその地位(館長)における義務は果たしているのだから、ユーノの根からの真面目さはとてもわかるもの。
以上の経緯から今まで150人体制で書庫管理をしていた無限書庫も今は、新たに230人の司書を迎え入れて合計350人強の新生無限書庫。 実は旧機動六課の支援スタッフも多数移動先として書庫司書のサポートにされていることもあり、それらサポート部隊を含めれば人員はおおよそ800人を超える。 これも第一陣で、最終的には司書数500~550、サポートを含めた人員1500~2000人という巨大再編計画があるのだから恐ろしい。 もっとも人材不足と予算不足に悩まされている現在の管理局では、予定している5年後の再編終了をできるか怪しいところではあったが。 そういう理由からユーノも既に実質的な館長として上位職としての書類決済と部下の指導をしている身。 この時点ですでに人数だけなら、小規模だった旧機動六課を余裕で上回るレベルだ。
そんな、仕事がある程度落ち着きつつある一日。
「おーい、ユーノ~~ほら、今日来た手紙を持ってきたぞ~」
無限書庫館長室。 ある程度、無限書庫の人員大幅増強に伴う改装を終えて、館長ユーノ・スクライアは昔の書庫からは考えられないほどゆったりとした時を過ごしていた。 もっとも、そうはいっても過去との比較であってコーヒーを飲みつつちゃんと書類の見て決済しているのはゆったりしているか決めづらいところかもしれない。
司書長はあくまでも司書の上位職。だが、館長は司書長の上位職でありかつ無限書庫の統括官。 司書長時代も館長のようなことはしていたが、組織としての再編で前よりは司書のような仕事は減っている。 なんだか、寂しい感じのユーノではあったが、それでも「現場主義な館長」として後々も言われるほどアットホームな部門なのだが。
と、彼のほぼ秘書的なことをしていアルフがほらよ、と十数枚の手紙をユーノの机の上に置く。 どれもこれも、ちゃんと「無限書庫館長 ユーノ・スクライア様」と礼儀よくまだなってもいない職の名前で送ってきている。
「まったく、またいろんな大学院からの専門授業をしていただけないか、先生の話をしてくれないか、って言われてもなぁ……」
見ていた書類を置き、変わりに手紙を一通一通開けて見るが予想通りにそういう系統の手紙ばかりだった。 ユーノがそれなりに余裕が出来た(週一の休みと定時どおりの仕事終了。ただし、忙しいときは除く)からといっても 実はユーノ自身はまだまだ残業が多く、また無くても、いや無い時だからこそ、そのほかのことに時間を回したいのだ。
ましてや、ヴィヴィオが魔法学院に入ったこととなのはが定時不定期、いやいない時もある戦技教導官になっているために なのはの変わりにヴィヴィオと合うことも比較的増えている。 そんな状態でそんな仕事ができるか! というのが本音だったり。
「まあ、ユーノは今や知識分野では有名だからね~仕方ないだろ?」
「好きで有名人になった覚えも無いんだけどね」
好きで有名人になった知り合いなど、ユーノの知り合いにはそもそもいないが。 とりあえず、それでも手紙を一通一通見ていくユーノは無駄に丁寧だった。今までも来た手紙すべてに拒否の返事をしていたほどに。
と、見ていた手紙の一つに目が留まる。
「あ、これは………ミリアさんじゃないか、これは。」
「はい?ミリアさん?」
ユーノが見つけた手紙を見つけてつぶやいた名前。はて、一応、アルフも数年間ユーノの手伝いをしたがそんな名前の人など知らなかった。 ――うーん、誰だ? 私が知らないとなると…? 困るアルフだったが、それを見てユーノはちょっと苦笑すると説明を始めた。
「ああ、ミリアさんっていうのは、僕が魔法学院にいた時の学院長でね。当時28歳で学院長で凄いと思ったよ」
「いや、今のヴィヴィオぐらいの年齢で魔法学院卒業したユーノがいうことじゃないと思うけど?」
うーん。とアルフの確かに的確な追求に言葉が詰まる。 ユーノはミッドチルダ中央魔法学院を確かに7、8歳の時点で卒業していて、当時としては珍しい方だったのは確かだった。 ただ、ミッドの就職年齢が低いところからもわかるように決して「天才少年!」というレベルではない。珍しい特異的な秀才ではあるが。
「まあ、否定はしないけどね。僕が珍しくその歳で卒業したのは確かだよ。 まあ、あらゆる意味で包括的な包み込んでくれる感じの人でね、あの頃は中々人となじめなかった僕に優しくしてくれた人だったよ」
「なるほどねぇ……そんな人がいたとは初耳だけどね?」
「それは、僕の魔法学院時代を誰も聞かなかっただけだと思うよ。実際に、クロノと飲んでる時には何度かあがった話だからね」
「そうなのか~?まあ、いいや。私としては別にユーノに変な虫をつかせるな言われてるからな~」
「な、なにそれ…?」
微少な笑みをきっとそれを言ったであろう某執務官、あるいは某戦技教導官を思い浮かべる。 なぜ浮かべてしまったのかはよくわからないユーノだったが、なぜかそんな気がした。
「それで、その恩師さんはなんていう手紙を送ってきたんだい?」
「ああ、とりあえず久しぶりに話したいってさ。出来れば非常勤で~ってあたりはやっぱり僕を過大評価してる気がするけどね」
「(いや、それはユーノが自分を過小評価しすぎなだけだよ、まったく……)」
一応、総合Aランクなユーノは、管理局でも武装局員の隊長クラスの能力はある。 更に司書としては他を寄せ付けない能力を持ち、考古学会からは期待の新人として、さらに文献学会からも学会員にならないか誘われるほど。 そんな自分を過大評価、といってるユーノを見れば、確かにアルフでなくてもそう言いたくなる。
…器用貧乏と言う言葉があるが、もしユーノに使うなら器用裕福とでもしないといけないぐらいには多方面に万能なのは間違えない。 だいたい、総合Aはデバイスを一切使わないで、でありもしデバイスの補佐が加わればAAランク以上だとアルフはにらんでいる。
「で、どうするんだい?いつでも良いって書いてあるだろ?」
「ああ、その通りだけどね。どこに……!?!?」
手紙の先まで読んだユーノは、そこで大目玉を開けるかのように驚く。書いてあった場所に主に驚いて。
「……どういうことかと思ったら……ミッドチルダ中央聖王教会魔法学院、だってさ」
「ああ、なるほど……って、そこはヴィヴィオがいる魔法学院だろ!?!?」
ああ、なるほど……と納得している雰囲気を出したアルフも意味を理解した瞬間に目を点にさせるほど。 隣では実は愉快で知人には驚かす癖のある学院長だったっけ、とユーノはいまさらながら記憶を呼び戻すことに成功していた。
そもそも、魔法学院はそれほど多くない。一応「学院」の名を冠している以上は宗教系の影響力が大きいのは事実だ。 ユーノがいたのはミッド系の学院なので、それほど強い宗教色はないが、専門系を強く色を残している以上 それなりに凄い学校であり、数はやはり少ない。だから被っていてもおかしくは無いのだが……無いのだが!
「まあ、今はとてもじゃないけど、忙しくてそんな暇は無いけ 『ユーノ館長代理!ユリス第二区司書長です!至急、こちらに来ていただきたいのですが』 ……ほら、また来た。前より人数多い分、緊急の用事は実質増えた気がするよ……まだ、司書たちがなれてないのもあるんだろうけどね」
まったく、大変だよ。 自身、最初書庫に来た時は、ユーノも含めて誰でも一つ探すのも苦労するのだ。慣れが必要なのは間違えない。 それを、いきなり直接で人員3倍強。実質人員では5倍を超える増員をかけたともなれば、新人だらけみたいなものだ。 よって、それを統括する司書長、そして司書長たちを統括する館長、つまりは一応ユーノなわけだ。苦労はだいぶ多い。
「そ、そうだったっけ……ユ、ユーノ。ま、まあ今までよりはずいぶん楽になったわけだからそう気にするなって!」
「それはそうなんだけど……苦労ものだよ、館長やりたくない理由でもあり、でもやっぱりやらないといけないんなぁ…というかな? とりあえず、第二区の方にいかないといけないから。アルフ、こっちの方の書類処理を頼むね?」
「ああ、書類処理って苦手なんだよなぁ……でもちゃんとここにある書類は決済しておくから安心しておけ!」
とにかく、無限書庫で、ユーノとアルフの連携プレイはある種の有名話なほど。 これまた一つの信頼関係というやつで、ユーノは真っ直ぐ向いた視線でアルフに頼んだよ、という意味を込めた視線を送るとさっさと館長室を後にした。
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さて、JS事件(ジェイル・スカリエッティ事件)以降、管理局は地上本部と本局を直接回線の転送装置を用意し 管理局関係の職員や人員の移動を容易にした。
理由は簡単で、JS事件時に管理局の本局部隊の投入に管理局地上本部が拒否したために本局部隊の転送ができなくなる事態が発生したためで 直接回線の新しい転送ポートは許可申請を必要なく誰でも転送そのものは可能になっている。 とはいっても、その専用回線の転送装置に入るためには、管理局の転送管理部を通るので、管理局関係者じゃないと中々転送装置なんていうものは使えない。
そんななか、一人の少女が……実際にどこをどう見ても少女な子、髪を可愛く青い髪留めで縛った彼女… 名前はヴィヴィオという。
と、なぜ彼女がこんなところのいるのか、とりあえず視点を彼女に向けてみると…
「今日はなのはママがお仕事で、フェイトママもお船に乗ってお仕事で~~♪」
実際、今日なのはは、戦技教導隊の関係で遅くまでお仕事であった。 実は三等空佐でも戦闘技術教導隊では十分現場担当なのだが、なのははなぜか一等空尉のままだったりする。 理由として、彼女が昇進を辞退したこともあるのだが、とにかく今日も彼女は戦技教導を行っている。 (教導隊はただでさえエリートな空戦魔道師隊のさらにエリート部隊ですので、実質他の一般部隊より高位に存在し、教導隊隊長で一等空佐という場合が多い) また、あいにく彼女の保護責任者だったフェイトも、次元潜行部隊という特色上、本局にはいない場合が非常に多い。
そういう場合、なのはとフェイトの関係者のところ行くのがヴィヴィオの日常になりつつある。 聖王教会系の魔法学院に行っているとはいえ、終わるのは3時程度。でも、なのはの仕事は定時に終わっても6時。実際には遅れることも多々ある。
「だから~ヴィヴィオは~ユーノパパの所に行くの~~♪」
相当ノっている様子のヴィヴィオ。 結果として、ヴィヴィオが帰る先は本局のなのはの部屋なはずだったが、実質上、無限書庫を託児所代わりにされている。 転送装置を利用して本局に来たヴィヴィオはそのまま一直線で無限書庫へと向かう。 その間で何人かの職員に会い、丁寧に挨拶をして職員から笑顔の返事を受け取り、更にテンションは絶好調のヴィヴィオ。
「パパはいつもお仕事が好き~♪」
管理局・情報管理部の重鎮にして、管理局でも有数の事務才能を持つ事務屋の異名で知られるウェリストン・ワシレンコフ准将にして 「私より若いのに情報部の誰よりも優秀で、管理局中央の誰よりも現場を心配し、管理局上層部の誰よりも話がわかり、管理局の誰よりも忙しい」 と言わしめたユーノ。
なお、その准将が無限書庫の再編計画の立案者でもある……
今でこそ、忙しさはそれほどではないが、それでも忙しいユーノを見ればヴィヴィオでなくても「お仕事好きのユーノパパ(さん)」 なんて思うのは仕方ない。というか、そう思われているユーノ、哀れである。
そうするうちにヴィヴィオは、無限書庫に到着。 すると一目散に館長室に入る。
「ユーノパパ~ただいま~♪」
「うん。おかえり、ヴィヴィオ」
あの後、第二、第四、第七と書庫管理区画を移動し、それぞれで指導をして、その後管理局上層部からの要請に返事をして 今は管理局・情報管理部に提出したロストロギア資料に関する追加情報を送っていたユーノだが それでもヴィヴィオが入ってくれば返事をして言葉をかけて、微笑む。
「ユーノパパはまだお仕事?」
「まあ、そうなるかな。後は来ているメールの処理だけですぐ終わるからそこで待っていてくれるかな、ヴィヴィオ?」
「うん!待つ~♪」
きっとそれは、穏やかに流れる幸せ、とでも言うのだろう。 イスに座ってユーノの仕事が終わるまでちゃんと待っている微笑ましいヴィヴィオと そんなヴィヴィオに見られながらも、ちゃんと数百もの書類を区分し分別し、それぞれに返信を書いて送る。 ときどき、管理局上層部へ直接通信回線を開いて直接何かしらを訴えていたりしているがそれでも館長室は至って平凡に時を刻んでいった。
そして、最後のメールに対する返信と、書庫館長としての仕事が一通り終わって……
「これで終わりかな?アルフ、今日、追加で何か僕が処理しないといけない案件はある?」
「別にないぞーちょっと追加で資料請求来たけど、新人の司書たちにはちょうど良い練習にもなると思うし」
とりあえず追加請求の量を見て、これぐらいならできるかな、と考えるユーノ。 現実的に言えばこれぐらいはできないと無限書庫司書としてはやっていけないだろう。人数が増えたもののそれでもなお厳しい書庫。 実際に規定上は休みが毎週あるとはいえ、ユーノでさえそれを予定通りに消化した試しがない。
とはいえだ。ここにいてきっとユーノと遊べることを楽しみに待ってるヴィヴィオに悲しい顔をさせたくは無い。 がんばってね、司書の皆さん、と半分ぐらいは親バカなユーノはその試練を司書たちに科すのであった。 なお、司書たちは『スクライア館長の親バカ、さっさと高町教導官と結婚しちゃえ!こんちくしょー!!』と思ったとか思わなかったとか。
だが、この天然の無限書庫最高責任者を知っている知人の多くはきっと結婚なんてするかすら怪しいと踏んでいる。 最悪、一生結婚無しで同棲生活でもするのか、とかそういうことすら言われているユーノなのだから分からないではないが。
「そうだといいけど。後はカナリア副館長に交代するまで基本的にフリーかぁ……」
机の近くに残っている書類を適当に集めながら、ユーノはあの厳しい新任の副館長を思い浮かべた。 机に乗り切らない書類をヴィヴィオとアルフが二人で同時に片付けていたが、それはそれで別の……なんでも「論文用の資料」らしい。 さすが、考古学者というところか。
さて、カナリア・ブレティスキー無限書庫副館長。ユーノが厳しいという彼女は元ミッドチルダ中央特殊書庫館長。 ミッドチルダの主要書庫のうち、議会図書館以外はすべて無限書庫に合併予定であり、結果としてここに転勤になった不憫といえば不憫な人。 もっとも、その司書・館長としての才能はユーノに勝らずとも劣らず。 ユーノ自身、自分は副でよいから彼女を正館長に、という推薦状を出しているのだが、その彼女が拒否している状態なのだ。
『私は無限書庫での経験が無く、その意味においてスクライア元司書長の方が上だと思われます。よって謹んで辞退させてもらいます』 とは、ユーノが直接館長にならないか聞いてみた時の返事だったらしい。
それ以降、特に無理強いはしてないが、副の名の通り、ユーノの館長としての仕事の半分は実質彼女がやっている。 まあ、だからこそヴィヴィオの面倒を見つつこんなハードな書庫勤務ができるわけであって、ユーノも感謝はしていた。 ただ……
「毎回毎回『娘さんは良いですけど、一応書庫なんですから、そういう意味でちょっとはですね…』とまるで母親のように愚痴を言われてもなぁ…」
カナリア副館長の年齢は45歳。見た目はそれより15歳ちょっとは若く見えるが、とはいえ20歳のユーノからすれば歳は母親に近い。 それはいわゆる歳を重ねないと生まれない独特の雰囲気という奴なのだろう。 でも、よく考えてみればユーノが会った時の高町桃子さんには既にそういう風格があったから、母親になって生まれる類のものなのかもしれない。
と、うわさをすればなんとやら。その女性はまるでユーノのうわさを妖怪アンテナでキャッチしたかのような タッチの差で館長室に入ってきた。 館長室で中央のイスに座っていたユーノのところまで来る。 ブランブラン、とブラをしているのにゆれる大きな胸のせいでユーノの目の行き場がなくて困ったことは些細なことだろう
「ユーノ・スクライア館長。交代のお時間です」
「あ、うん。でもさ、まだ僕、館長には一応なってな……」
「後任者がおりませんこと、また今回の人事および書庫の追加書物を決定した過程でベルカ自治区政府が管理体制の強化を訴えてきている と、ワシレンコフ准将が言ってきております。 また、JS事件以降、ベルカ自治区はミッドチルダ連邦政府との関係が悪化しており、管理局は無闇に干渉することをよしとしておりません」
「えっと……つまりは純政治的に面倒なことを管理局は起こしたくないからさっさと館長決めろ、というかもう暫定館長をそのまま 書庫最高責任者にしちゃうことにしたぞ、的な感じですか?」
「ええ、ワシレンコフ准将が最後までそっくりそう言っておりました。 というか、私やもう一人1ヶ月後に入る副館長は元ミッドチルダ政府系だったり元聖王教会系だったりしまして、中立性に欠けるのですよ」
「もってつけた言い訳ですね、それ」
「ええ、その通りですが何か?」
いや、それ返されると困るんですけど……とユーノは思ったが、なんせ自分の二倍は生きている女性だ。 口で勝てるとは思えないし、そもそも管理局の内部事情だけならともかく、ここにミッドチルダとベルカの問題まで入ると自分ではどうしようもない。 というか、だからワシレンコフ准将が相当気前よく人員やら色々と送ってきたのか…… とユーノは館長職に付かないといけないことをため息混じりに納得していた。いや、納得したくはなかったが。
「まあ、とにかく私が着きましたのでユーノ館長はどうぞお休みになって娘さんと仲良くですね まあ、スキンシップでも取ってきてください、というかここにいると邪魔なので」
「ユーノパパだっこ~♪」
この頃、自分の居場所がいったいどこなんだろう、と思ってしまうときがあるユーノ・スクライアだった。どこまでも。
副館長疑惑「邪魔」らしいユーノだったがそれはあくまでも無限書庫の話。 とりあえず、地上に降りようかなとヴィヴィオと二人で歩いているだけでも、近くの局員から見られる見られる。 ユーノの人気を示すものでもあったが、某教導官の指導を受けた武装局員はなぜか敬意を持って敬礼していた。 なぜ敬礼されるか理由がさっぱりなユーノだったのはいうまでもない。
「ユーノパパ、皆から人気だね♪」
だっこ~といいつつ、さすがに悪いと持ったヴィヴィオがユーノと手を繋いで歩いているときにそう言い出した。 人気というより「切望と嫉妬と畏怖に同情」が混ざっているような目線が多かった気がするが。
「あれは人気っていうのはかなぁ……?」
「だって、皆笑顔だったよ~?」
確かに笑顔だった。それはもう、殺されるような気がする笑顔もあったほどに。 さすがにヴィヴィオと歩いていてそれは無いんじゃないだろうか、と心から思うユーノだったが そのヴィヴィオがなのはとフェイトの子供で、そのヴィヴィオにして「パパ」呼ばれているのだから……まあ幸の無い局員の心を察してあげて欲しい。
「そういえば……数日前になのはママがね!」
そうして、歩きながらここ数日であったことを話し始めるヴィヴィオ。 それは間違えなく平和の1ページで、それを楽しく笑みを浮かべているユーノもこれがつづけばよ……
「『ユーノ君は私のものなの!』ってフェイトママとケンカしてたの!フェイトママも『10年以上もたってそれはなしだよ!』って言ってたの!」
「……ヴィ、ヴィヴィオ。とりあえず、それを他の人には言わないようにね……」
「うん!ユーノパパがそういうと思って誰にも言ってないよ♪でも……パパは私だけのパパでいてね?」
「……えっ?」
数日後、聖王化したヴィヴィオとユーノが某所で目撃された挙句に、某執務官と某教導官ダブルブレイカーが確認されたらしいが無害です。 ただ、これを期にユーノが名実共に「ヴィヴィオの父」となるために決断をしたとかしなかったとか。